ラグビー・テスト・マッチ・レビュー 日本代表対NZオールブラックス


真っ赤に染まった秩父宮ラグビー場。観衆2万454人

強い絆、確かな手ごたえ

ラグビー・テスト・マッチ・レビュー

日本代表対NZオールブラックス

文=山田美千子、写真=山田武

11月2日、東京・秩父宮ラグビー場は近年まれに見るにぎわいを見せていた。26年ぶりに日本国内で行われる日本代表対オールブラックス(以下ABs)の試合のためだ。チケットは前売りで完売。当日券の発売はなかった。


NZマオリ族の民族舞踊ハカ。ABsは国際試合前に踊る

日本代表を率いるエディ・ジョーンズHC(元豪代表ワラビーズHC)は、この大一番を控えた10月15日に病のため戦列を離れていた。この日のチームの指揮官は、オーストラリア人のスコット・ワイズマンテルHC代行。日本が世界一のABsにどのような戦いを挑むのか、期待と注目が集まった1戦だった。

試合前のスタジアムを歩いてみると、チーム・スポンサーのイベント・コーナー、グッズ販売店や飲食物の販売コーナーなど、どこも長い列ができていた。そして唯一の自由席、北スタンド下の通路には、1枚の大きな横断幕が置かれていた。「エディとともにロンドンへ」。白地に黒い文字で書かれていた。ラグビーでは横断幕の設置が認められないため、スタンドを飾ることはできなかったが、エディHCへのファンの気持ちを形として見ることができた。

また、試合前のメンバー発表では、選手がコールされる度、大きな歓声と拍手が起こっていたが、やはり、リッチー・マコウ選手とダン・カーター選手の時には、ひと際大きな歓声に包まれた。最後に「HC、エディ・ジョーンズ」とコールされるとスタンドはさらに沸いた。日本のファンのエディHCへの想いは、回復への大きな後押しとなったことだろう。

試合においては、前半20分までの日本は素晴らしかった。ファースト・スクラムでは低いスクラムで日本が押し勝ちターン・オーバー。世界最強軍団と互角に渡り合っていた。WTBの福岡堅樹選手がマコウ選手をタックルでタッチ・ラインに押し出すなど、勢いもあった。

前半9分に日本のミスから14番シアレ・ピウタウ選手が先制トライ。五郎丸歩選手がPG2本を立続けに決め、6−7と喰らいつくが、互角の勝負ができたのはここまで。たやすく日本ペースにはならない。

エディ・ジャパンにスコッドされ、この日18キャップとなった伊藤鐘史選手は、身長191センチ・メートル、101キロと、日本人にしては大柄なワールド・サイズの選手だ。彼が当り負けする姿はほとんど記憶にないのだが、今回彼が弾き飛ばされたのは衝撃的だった。

「世界レベルでは当たり前なんで、気になりません」と笑顔で答えてくれたが、世界の壁を目の当りにしたワンシーンだった。


NZハイランダーズ(スーパー・ラグビー)でも活躍している田中史朗選手(JPN)


前半26分にトライを決めたサム・ケイン選手(NZ)

肝心なところでミスが出て攻めきれない日本。地力に勝るABsに8Tを奪われ、6−54。終了間際に大チャンスが訪れた。ゴール際で一進一退の攻撃を続ける日本。41分、日本の福岡選手が左隅にトライを決めたように見えた。スタンドも大喜びだったが、TMO*判定でトライは認められず、幻となってしまった。

この時、福岡選手を押し出したのはマコウ選手。前半の借りを返した。この因縁の対決、第2ラウンドを楽しみにしたい。

試合終了後、キャプテンの廣瀬選手は「自分たちがやっていることは間違いない」と手ごたえを感じていたようだ。そのほかの選手からは「エディのためにも、もっといいゲームをしたかった」「エディのために勝ちたかった」という言葉も聞こえてきた。

選手とエディHC、そして、ファンとエディHC。強い絆はでき上がった。近い将来、新たな歴史が刻まれるだろう。そんな思いを強くさせてくれた1戦だった。

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