Go! ワラビーズ in Japan「ラグビー・ワールド・カップ2019 新たな一歩を踏み出したワラビーズ」

Go! ワラビーズ in Japan

日本ラグビー界では現在、オーストラリア、ニュージーランドなど世界の強豪チームでの代表経験を持つ選手が多数プレーしており、日本のレベル・アップにひと役買っている。そこで、かつて豪州で活躍し、現在は日本に舞台を移した元ワラビーズの選手たちについて日本からリポートする。 文=山田美千子/写真=山田武

特別編ラグビー・ワールド・カップ2019 新たな一歩を踏み出したワラビーズ

9月20日から11月2日にかけて行われた第9回ラグビー・ワールド・カップ日本大会。今大会では、それぞれの試合でドラマが生まれ、初の開催地となった日本、そしてラグビー熱の高いオーストラリアは共に大いに盛り上がった。本特集では試合を中心に大会でのワラビーズの活躍を振り返りながら、大会期間中の選手たちの様子をお伝えする。

9月20日、待ちに待ったラグビー・ワールド・カップ日本大会(以下、RWC)が開幕した。

ワラビーズの事前キャンプ地になった小田原市は神奈川県西部にあり、都心からも近く人気の観光地である。小田原市を訪ねてみると、市内中心部の至るところに「ワラビーズがやって来る」と書かれた、マイケル・フーパー選手やデビッド・ポーコック選手の写真入りののぼりが掲げられ、ポーコック選手の等身大パネルと一緒に写真を撮れるコーナーもあった。また、小田原とワラビーズを掛け合わせた「オダワラビーズ(ODAWARA+WALLABIES=ODAWALLABIES)」という新しい言葉も生まれ、世界的に有名なキャラクターであるハローキティがラグビーをする小田原オリジナル応援グッズの販売も行われていた。まさに市を挙げてワラビーズを迎えていた。

今大会で代表引退を表明したデビット・ポーコック選手
今大会で代表引退を表明したデビット・ポーコック選手
大雨の中トライを決めたウィル・ゲニア選手(静岡・エコパスタジアム)
大雨の中トライを決めたウィル・ゲニア選手(静岡・エコパスタジアム)

熱い歓迎を受けたワラビーズは、小田原でのびのびと過ごしていたようだ。それは、彼らの会見時の表情を見ると良く分わかる。もともと陽気なワラビーズの面々だが、とにかく表情が明るい。会見場に現れたタニエラ・トゥポウ選手やトル・ラトゥ選手は大会前の時間を楽しんでいるように見えた。バーナード・フォーリー選手も、本紙の以前の取材を覚えていたようで、フレンドリーで輝く笑顔を見せていた。

ワラビーズの今大会の行方を占う重要な初戦は、札幌でのフィジー戦だった。フィジカルが強く、速いラグビーを得意とするフィジーは、決して波に乗せてはいけない相手。お互いに初戦に懸ける意気込みはかなりのもので、非常に白熱したゲームとなった。

パフォーマンス・バイザーのかぶり方が独特なウィル・ゲニア選手
パフォーマンス・バイザーのかぶり方が独特なウィル・ゲニア選手
チームメイトと談笑するアラン・アラアラトア選手
チームメイトと談笑するアラン・アラアラトア選手

しかし、この試合でワラビーズの勢いをそぐ大事件が起きた。試合中にカードが出されること(シンビン)はなかったのだが、フィジーのキーマンだったペゼリ・ヤト選手と何度も激しいコンタクトを繰り広げていたワラビーズのリース・ホッジ選手のタックルが、試合後に「悪質な」ハイタックルと判断され、ホッジ選手はプール戦の残り3試合に出場できなくなってしまったのだ。

今大会では、TMO(テレビ・マッチ・オフィシャル)によるアピールからカード提示や協議の時間が増え、試合が中断することも少なくなかった。中断の間には、映像が会場内に繰り返し流されるのだが、切り取ったシーンだけを何度も何度も繰り返し見ていると、ゲームの流れの中での単なるアクシデントが、そうではないように見えてくることもあった。これはあくまで私感であり、システムを否定するわけでも肯定するわけでもない。しかし、今後どうなっていくのか気になるところである。とはいえ、厳しい初戦でワラビーズは勝利をおさめた。

札幌での戦いを終えたワラビーズ一行は、今度は千葉県内に滞在。ここでも彼らの表情は明るかった。大会期間中、ほぼ毎日行われる記者会見では、選手個々のキャラクターを感じることができた。あくまで私感であるのだが……。トゥポウ選手とラトゥ選手はクラスに1人、2人必ずいる、ムード・メーカー的ないたずらっ子、イシ・ナイサラニ選手やテヴィタ・クリンドラニ選手、ジェームス・スリッパー選手はシャイという印象を受けた。

弊紙の質問に笑顔で答えるジェームズ・スリッパー選手
弊紙の質問に笑顔で答えるジェームズ・スリッパー選手
カメラ目線で笑顔を見せるイシ・ナイサラニ選手
カメラ目線で笑顔を見せるイシ・ナイサラニ選手

そのシャイなスリッパー選手に2009年に日本で開催された「ジュニア・ワールド・チャンピオンシップ」の話をすると、「そうか……10年ですね。あの時は福岡などで試合をしました。10年ね……」と歳月を感じていたようだった。当時のチームメイトには、ロブ・シモンズ選手、ニック・ホワイト選手、マット・トゥームア選手、デイン・ハイレットペティ選手、カートリー・ビール選手がおり、筆者にとって、成長した彼らがワラビーズとして日本開催のワールド・カップで活躍する姿を目にすることができたことは大きな喜びだった。

ジェームス・オコナー選手は、「イケメンランキングに入っているが、将来モデルになってはどうか」と質問が飛ぶと、うれしそうな笑顔を浮かべながらも「いや、ひげも生えてるし、傷だらけだし……」と終始はにかみ、意外と照れ屋さんのようだった。

若手のジョーダン・ウエレセ選手は、ハキハキと記者からの質問に答えるしっかり者。ジョーダン・ペタイア選手は、チーム最年少ということもあるが、末っ子として皆に可愛がられている様子が垣間見えた。キャプテンのマイケル・フーパー選手やデビッド・ポーコック選手からはベテランらしい落ち着いた重厚感が感じられた。

また、会見では強面なイメージを受けたジャック・デンプシー選手だったが、たまたま乗り合わせた機内で、彼がファンの無茶ぶりとも言えるリクエストに神対応する姿を目撃し、イメージが塗り替えられたこともあった。

数年前までのワラビーズに比べると、すっかり「紳士」になった印象を受けた。ティア1のチームの中では、最もファンとの距離が近いチームと感じていたが、今回はその距離が遠くなったように感じた。ワールド・カップだから仕方がないのか。しかし、何があっても根強いファンが日本にも多数いるのがワラビーズなのだ。

フライング・トライを決めるアダム・アシュリークーパー選手
フライング・トライを決めるアダム・アシュリークーパー選手
今大会で初キャップを得たジョーダン・ペタイア選手。新人とは思えない堂々とした風貌
今大会で初キャップを得たジョーダン・ペタイア選手。新人とは思えない堂々とした風貌
以前の取材(2016年3月号)を覚えていてくれたバーナード・フォーリー選手
以前の取材(2016年3月号)を覚えていてくれたバーナード・フォーリー選手
弊紙の「男前質問」に照れるジェームズ・オコナー選手
弊紙の「男前質問」に照れるジェームズ・オコナー選手
ストレッチを入念に行うマイケル・フーパーキャプテン
ストレッチを入念に行うマイケル・フーパーキャプテン
リラックスした表情でトレーニングするセコベ・ケプ選手
リラックスした表情でトレーニングするセコベ・ケプ選手

その後、プールD2位で準々決勝へと駒を進めたワラビーズ。10月19日には大分スポーツ公園総合競技場で準々決勝イングランド戦が行われた。大会復帰したホッジ選手のキックで始まったこの試合では、先制するもすぐに逆転されてしまい主導権はイングランドに。堅守のイングランドから奪えたトライはマリカ・コロイベテ選手の1本のみであった。16-40と完敗し、ワラビーズのワールド・カップは終わった。

マイケル・チェイカHC(左)とマイケル・フーパーキャプテン。会見は和やかな雰囲気で行われる事が多かった
マイケル・チェイカHC(左)とマイケル・フーパーキャプテン。会見は和やかな雰囲気で行われる事が多かった

しかし、オーストラリア・ラグビー界にとっては、ペタイア選手という一筋の光を見出すことができた大会だったのではないだろうか。出場時間こそ少なかったが、彼の運動能力、センス、随所に見せていた独創性は輝きを放っていた。これからのワラビーズを背負っていくのは彼なのかもしれない。

試合が終わり、チェイカHCとフーパー選手の2人はこれまでの長い時間を労わり合うようにハグをしていた。ワラビーズの一つの時代が終わった瞬間だった。このチームのゲームを見ることはもうない。そう思うと感傷的になったが、ワラビーズは新たな一歩を踏み出さなければならない。彼らにとって2019年大会が終わったその瞬間から、2023年フランス大会への戦いは始まったのだから。

ワラビーズのRWC2019大会結果

【プールD】
9月21日 vsフィジー(札幌ドーム) 39-21 〇
9月29日 vsウェールズ(東京スタジアム) 25-29 ✕
10月5日 vsウルグアイ(大分スポーツ公園総合競技場) 45-10 〇
10月11日 vsジョージア(小笠山総合運動公園エコパスタジアム) 27-8 〇
プール戦成績3勝1敗0分 2位通過
【準々決勝】
10月19日 vsイングランド(大分スポーツ公園総合運動競技場) 16-40 ✕
準々決勝敗退

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