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ANAシドニー支店のマーケティング戦略とは? ─女性初の豪州・オセアニア代表・松崎真紀さん

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日豪プレス・インターンシップ・プログラム取材記事②

 日本の航空会社ANA(全日本空輸株式会社)のシドニー支店に訪れ、支店長である松崎真紀さんと、ナショナル・セールス・マネジャーであるマイケル・フレッチャーさんに日豪プレスでインターンを行った学生たちがインタビューを行った。松崎さんは、豪州・オセアニア地区総代表兼シドニー支店長を務め、現職に就任してから今年で3年目。息子さんと一緒に来豪している。松崎さんには現職に就いてからの社員マネジメントや自身のキャリアについて、フレッチャーさんには、マーケティング戦略について話を伺った。
(文=中澤奈々、鈴木日彩、小川樹里)

ANAのグローバル戦略、オーストラリア市場での挑戦

左から松崎さん、取材員・鈴木、小川、中澤、フレッチャーさん

 日本を代表する航空会社ANAがどのように競争の激しいオーストラリア市場で他社との差別化を図っているのか、その辺りを皮切りに、松崎さんとフレッチャーさんに、現在のマーケティング戦略について尋ねると、フレッチャーさんは「特にプロダクトとサービスの質の高さをアピールしています」と答えて下さった。

「例えば、当社の機内は他社と比べ、座席の足元のスペースが広く、提供する食事や飲み物のレベルも非常に高いと言えます。ANAのサービスは一度利用して頂くと、再び利用して頂ける品質の高さを誇ります」

 また、松崎さんは「チェックイン・カウンターに着いた途端に日本の雰囲気を味わえるように心掛けています。特に現在、オーストリアで日本自体がブームなので、我々が日本のキャリアであることをうまく利用して差別化を図っているのも重要なポイントです」と付け加えてくださった。

 また、ローカルの旅行会社や、直接お客様へも積極的にアプローチしているという。

「オーストラリアのお客様を熟知しているオーストラリアの旅行会社を始め、関係各社とは日々のセールス活動を通じて協力体制を築いています。また、シドニーで開催される日本のフェスティバルなどのイベントに積極的に参加しブース出展を行い、その場でお客様と直接接する機会も設けています。お客様の声にふれ、直接会話をすることで、できる限り弊社のサービスをアピールするようにしています」(フレッチャーさん)

 また、フライトの時刻に関しても工夫しているそうだ。

「1日に2本出る便のうち、夜の便は、朝の5~6時に羽田空港に着くため、到着した1日を有効活用して頂くことが可能です。別の便に乗り継ぐ場合も時間に余裕ができるようにスケジュールを組んでいます。昨年から増便した昼の便はお昼頃にシドニーを出発し、夜には日本に到着します。到着後にゆっくりお休み頂けるのでビジネスマンに好評です。2便運航することで選択肢が生まれ、お客様のニーズに合わせて選んで頂けるのは強みです」(松崎さん)

 ANAが直面する課題について尋ねると、松崎さんは、「ブランド認知度の向上が必要」と話す。

「 実は『ALL NIPPON AIRWAYS』という名前がブランド認知を難しくしているという側面があります。『ニッポン』という読み方は、ご存知の通り日本でしか認知されず、他国の方々には、日本の企業ということが分かってもらえないことがあります。大きな課題ではありますが、シドニーだけでなく、他都市でも知名度を上げる努力を引き続きしていきたいと思っています。我々は2023年に『ヴァージン・オーストラリア航空(Virgin Australia)』との提携を拡大し、コードシェア便やマイルを通じて知名度と利用者の両方を獲得する働きかけも行っています。自分たちだけで何かを行うのではなく、他社と連携することに踏み切ったのは大きな変化です」(松崎さん)

異文化の人びとが共に働く職場のマネジメント

親切かつ丁寧にインタビューに応じてくれた松崎さん(左)とフレッチャーさん

 ANAシドニー支店には、さまざまな国籍の社員が在籍している。そのため、松崎さんは支店をマネジメントをする立場として、日本人社員と他国出身の社員が共に働きやすい環境を作るための工夫を行っているそうだ。ただ、「マネジメントをする上で、各社員の国籍を意識することはあまりない」そうだ。

「日本人だから理解できる、日本人じゃないから理解できない、ということではないと思っています。つまり、仕事への姿勢や熱意は人それぞれのため、国籍で判断するのではなく、個々でその人を見て、1人ひとりに合ったマネジメントをすることが重要です。マネジメントのやり方に正解はありません。ただ、互いの話を聞く、傾聴することが何より大切というのは変わりません」

女性初の豪州オセアニア代表になるまでの経験

自らの経験を語る松崎さん

 日本では1980年代に男女雇用均等法が成立し、多くの企業が女性の総合職への募集を開始した。そんな中、松崎さんは同法が成立した数年後に一般職としてANAに入社したという。松崎さんはインタビューに際し、当時のことを振り返りながら、平等な機会を与えられにくい時代の中での苦労、子育てと仕事の両立の難しさについても話して下さった。

「当時は、いわゆる男性優位の社会において自分が掴めるチャンスは何なのか、それすら分からない状態でしたが、常にもっと頑張らなければという思いでやってきました。どのような機会においても、男性以上に頑張るという意識を持って仕事に取り組んでいたと思います」

 松崎さんは、30代前半の時に第1子を出産。当時は現在のような時短勤務や在宅勤務など、社内での子育て支援にからむ制度も充実しておらず、社内で「ノー残業デー」とされている曜日以外はベビーシッターを雇い、残業するなど苦慮したという。ただ、そのような経験も、松崎さんにとってはプラスとなった。

「社内に見本になるような人もいなかったので、相談する相手もおらず、当時は本当に大変でした。今の時代も、子育てをしながらの仕事は大変だと思いますが、そうした苦労を経験し、理解できること自体が私の強みになっていると感じます」

 笑顔でそう語る松崎さんの表情は晴れやかだった。

松崎さんからのメッセージ

 インタビューの最後に、私たち学生と同じ世代の方々に向けたメッセージを僭越ながらお願いする。

「将来のキャリアについて考える際、日本で働くか、あるいは日本国外で働くか、迷う場合があるかもしれません。私は、日本に限定して判断するのはもったいないと思ってしまいます。若者には一度国外に出て、日本を俯瞰して見て頂きたいと考えています。そうすることで日本の違った側面が見えるようになり、人によっては海外、もしくは日本のことがますます好きになったりもするのではないでしょうか。若い世代の方々には、国内だけに留まらず、ぜひ視野を広げて、その上で『やっぱり日本が良いよね』と感じて欲しいです」

 また、まだ社会に出ていない立場として働くことの意義について尋ねると「働くことは生きることであり、生きることは働くことだと考えています」と答えを頂いた。

「働くことが辛いと、生きることもつらくなってしまうので楽しまなければならないと思います。物事は考え方次第で、辛い、楽しいなど、受け取り方が変わってきます。ですから文句を言っている暇があったら、仕事ができる環境に置かれていることに感謝するべきだと思います。その上でよりよい状況を求めていくと良いのではないでしょうか」

取材を終えて

 ANAシドニー支店のお2人に取材し、さまざまな工夫により競合他社との差別化を図っていることや、これからますます成長するための取り組みをしていることが分かった。マネジメントにおける話は、これから多様性の中で働く場面以外でも、海外の人と関わる上で生かすことができる、とても興味深い内容だった。取材をさせて頂く前は、海外の人と働くことも視野に入れている程度だったが、松崎さんとフレッチャーさんの話を聞き、海外の人と働きたいと強く思うことができた。今後のキャリアについて考えるきっかけにもなった。
(中澤奈々)

 初めてのインタビューでとても緊張したが、貴重な話を直接伺うことができ、非常に有意義な経験となった。自分の将来について考える上で多くの刺激を受け、今後のキャリアについて視野が広がったと感じる。また、松崎さんとフレッチャーさんがとても優しくインタビューに応じてくださり、私の憧れの社会人像となった。
(小川樹里)

 今回、松崎さん、フレッチャーさんに話を聞けて、私も見習うべきだと感じた。松崎さんの経験からどんな状況に置かれても、努力することを学んだ。これから人生の中で理不尽を受けた時も、自分が現在置かれている状況に感謝して努力していきたい。
(鈴木日彩)

※同記事は、8月26日から2週間にわたり、日豪プレスのインターンシップ・プログラムに参加した東京経済大学の学生6人が、シドニーの日系企業や店舗を取材しインタビューを行ったもので、下記より他の記事も確認できる。





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