日本では国鳥の「トキ」、オーストラリアでは愛すべき嫌われ者「ビンチキン」?オーストラリアクロトキの真実─ 鳥大国オーストラリアの野鳥めぐり③オーストラリアン・ホワイト・アイビス

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 オーストラリアの街を歩いていると、高確率で出会う大きな白い鳥がいます。日本では見かけないその独特な姿に、最初は「珍しい鳥がいる!」と感動するかもしれません。しかし、現地の人々にその鳥の名前を尋ねると、苦笑い交じりにこう返ってくるはずです。「ああ、あれは『ビンチキン(Bin Chicken:ゴミ箱のチキン)』だよ」と。今回は、オーストラリアの都市部でたくましく生きる、オーストラリアクロトキ(Australian White Ibis)の生態と、彼らがなぜそこまで呼ばれるようになったのか、その秘密に迫ります。
(文・写真:クラークさと子

第3回 オーストラリアン・ホワイト・アイビス

英:Australian White Ibis
日:オーストラリアクロトキ(豪州黒朱鷺)
分布:オーストラリアの東海岸、南部、北部の海岸沿いを中心に広く分布。最近では西オーストラリアでもその姿が見られるようになり、生息域を広げています。

英語は「白」なのに日本語は「黒」?ちょっと不思議なプロフィール

 まずはこの鳥の基本情報からご紹介します。

面白いのがその名前:英語では「ホワイト(白)」アイビスと呼ばれていますが、日本語ではなぜか「クロ(黒)」トキ。実際の姿を見てみると、体の大半は美しい白い羽で覆われていますが、頭部と首、羽の先、そして足だけが真っ黒です。どちらの色に注目するかで名前が変わったのがユニークですね。

※ちなみに、アフリカに生息する「アフリカクロトキ」と非常によく似ていますが、オーストラリアクロトキの方がやや小柄で、繁殖期に首の周りの皮膚が露出して赤くなるなどの細かな違いがあります。

アフリカクロトキ 上野動物園にて

ちょっと怖い?でもよく見ると愛嬌たっぷりな生態:今や都会のどこにでも現れ、単独で行動することもあれば、大集団で行動することもあるオーストラリアクロトキ。彼らと暮らす街の人々からは、その強烈な個性ゆえに様々な声が上がります。

集まるととにかく臭い: 大集団で木に巣を作ることが多く、その周辺は強烈な臭いが漂うことも……。都市部では、大通り沿いのヤシの木の上に巣を作っているのをよく見かけ、下を通ると雛の賑やかな声が聞こえてきます。

ドスのきいた鳴き声: 「美しいさえずり」とは程遠く、時折出す声にはドスがきいていて、初めて聞くと少し恐怖を覚えるほどです。

実は可愛い目: 頭部が真っ黒なので、遠目で見ると目がどこにあるか分からず不気味に見えるかもしれません。しかし、写真を拡大してよく見てみてください。実はつぶらでとっても可愛い目がついているんです。

水を飲むのが大仕事: 下に向かって大きく湾曲した長いクチバシは、ゴミ箱の奥をあさるのには便利ですが、水を飲むのにはちょっと不便。浅い水たまりの水を飲むときは、体ごと地面に平らに伏せ、クチバシを地面と水平にペタッとつけて、必死に水をすすっている姿をよく見かけます。その不器用な姿はなんとも愛嬌があります。

なぜ「ビンチキン(ゴミ箱の鳥)」と呼ばれるの?

ゴミ箱の中の”ビンチキン” シドニーのキリビリにて
ゴミ箱に上の”ビンチキン” シドニー郊外で、ゴミ回収の日の朝に

 もともと彼らは、豊かな沼地や湿地、草原などに生息し、自慢の長いクチバシを使って虫や魚、爬虫類などを捕まえて暮らす鳥でした。しかし現在の彼らの主戦場は、大都会のど真ん中。公園や屋外カフェ、そして何よりも「ゴミが溢れそうなゴミ箱(Bin)の周り」です。

 街中のゴミ箱に長いクチバシを突っ込み、器用に人間の食べ残しを引っ張り出しては何でも食べてしまう姿から、現地では皮肉と親しみを込めて「ビンチキン(Bin Chicken)」という不名誉な(?)ニックネームで呼ばれるようになりました。

都市に現れるようになった可哀想な経緯

 彼らがなぜこれほどまでに都会に執着し、ゴミ箱をあさるようになったのか。それには、少し切ない理由があります。実は、近年の急激な都市開発や内陸部の乾燥化によって、彼らの本来の故郷である湿地帯や自然の生息地が奪われてしまったのです。生き残るために必死で行き着いた先が、水も食料(人間のゴミ)も豊富な人間の暮らす都市部でした。彼らがゴミ箱をあさる姿は、人間の環境破壊に適応した「たくましい生存戦略」の現れでもあるのです。

嫌われ者だけど、実は美しく愛おしいオーストラリアのアイコン

 現地では「ゴミ箱をあさる迷惑な鳥」として嫌われ、時にジョークのネタにされるオーストラリアクロトキ。日本のトキのような鮮やかなピンク色(大鷺色)のような華やかさはありませんが、白と黒のモノトーンで構成されたそのシルエットは、実はとても洗練されています。ひとたび翼を広げて空へ飛び立てば、その姿は驚くほど優雅でエレガント。

 都市開発という人間の都合に振り回されながらも、現代のオーストラリアをたくましく、そしてちゃっかり生き抜いているビンチキン。その背景を知ると、ただの「ゴミ箱の鳥」ではなく、なんだか少し愛おしく、オーストラリアの豊かな自然と都市の共生を考えさせてくれる大切な存在に見えてくるのではないでしょうか。

ムギワラギクの季節にオペラハウスを背景に
サクラソウの季節、シドニー王立植物園にて

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