オーストラリアのタックス・リターン完全ガイド2026年版! ─申請方法と注意点を公認会計士が徹底解説

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 オーストラリアの会計年度は7月1日から6月30日まで。会計年度が終わると、タックスリターンの時期が始まります。現在は2025年7月から2026年6月までの収入分の2026年タックスリターンの申告が始まっています。

 タックスリターンは、単に「税金を返してもらう手続き」ではありません。1年間の収入や控除を正しく申告し、最終的な税額を確定する収入を申告する手続きです。返金ではなく支払いになる方もいます。

 2026年の申告では、HELP等の返済制度、在宅勤務経費、車両経費など、確認しておきたいポイントがあります。さらに、日本に収入や資産がある方、投資不動産、仮想通貨、副業・ABN収入がある方は、一般的な給与所得者より判断が複雑になる場合があります。

記事協力・文=Ezy Tax Solutions Japan/賀谷祥平さん(登録税理士・公認会計士)

■目次

  1. タックス・リターンとは
  2. 2026年のタックスリターンで確認したいポイント
  3. タックスリターンの申告義務があるケース
  4. 税法上の居住区分とビザは同じではない
  5. Tax Refund(返金)とTax Payable(支払い)の仕組み
  6. 2025–26年度の個人所得税率
  7. 申告しなければならない収入
  8. 日本・海外に収入や資産がある場合
  9. 経費は「仕事で使った」だけでは決まらない
  10. 在宅勤務・車・投資不動産・仮想通貨などの注意点
  11. ABN・Uber・Uber Eats・Airbnbなどの収入
  12. スーパーアニュエーションとタックスリターン
  13. サラリーパッケージとは
  14. タックスリターンでよくある間違い
  15. 申告期限とTax Agent(登録税理士)を利用するメリット
  16. ATOは知っている
  17. まとめ

1. タックスリターンとは

 タックスリターンとは、1年間の収入、税金としてすでに差し引かれた金額、控除できる経費などをATO(Australian Taxation Office)へ申告し、その年度の最終的な税額を確定する手続きです。

 給与からPAYG Withholdingが差し引かれている場合でも、それだけで税務が完了しているとは限りません。反対に、税金が多く差し引かれていれば返金になることもありますが、不足していれば追加で支払うこともあります。

 そのため「タックスリターン=必ず返金」という考え方は正しくありません。重要なのは、収入と控除を正しく申告し、正しい税額を確定することです。

2. 2026年のタックスリターンで確認したいポイント

 2025–26年度の申告では、前年と同じ感覚で処理すると間違いやすい項目があります。特に次のような点は確認しておきたいところです。

・HELP・HECSなどStudy and Training Loanの強制返済制度が2025年7月1日から変更

・在宅勤務のFixed Rateは2025–26年度も1時間あたり70セント

・仕事関連の車両経費でCents per kilometre methodを使う場合、2025–26年度は1kmあたり88セント

・2026年7月1日以降の2026–27年度は車両経費のレートが91セントへ変更

・2026–27年度から個人所得税の一部税率も変更されるため、「2026年タックスリターン」と「2026年7月以降」を混同しないこと

 特にHELP等については、最低返済所得と計算方式が変わっています。給与から差し引かれた金額だけを見て最終的な返済額を判断できないケースもあるため、該当する方は注意が必要です。

2026年の変更点、自分に影響する? 制度変更は「誰にでも同じ影響」が出るわけではありません。所得、ローン残高、給与からの源泉徴収状況などによって結果が変わるため、不明な場合は申告前に確認することをおすすめします。

3. タックスリターンの申告義務があるケース

 申告が必要かどうかは、単純に「収入がいくらだったか」だけでは決まりません。代表的には次のようなケースがあります。

・給与から税金が差し引かれている

・複数の勤務先から収入がある

・ABNを使って事業・フリーランス収入を得ている

・利息、配当、投資、賃貸などの収入がある

・海外に収入がある

・キャピタルゲインが発生する取引がある

・HELP等の返済に関係する所得がある

・ATOから申告を求められている

 一方、タックスリターン自体が不要でも、ATOへNon-lodgment Adviceを提出する必要があるケースがあります。「申告しない=何もしなくてよい」とは限りません。

4. 税法上の居住区分とビザは同じではない

 日本人の方から特に多い誤解の1つが、ビザと税法上の居住区分を同じものとして考えることです。税務上のResident / Non-residentは、ビザの名称だけで自動的に決まるものではありません。

 たとえば学生ビザや一時滞在ビザでも税務上Residentとなる場合がありますし、永住権を持っているからといって、すべての年度で必ず同じ判定になるとは限りません。居住期間、生活拠点、住居、家族、渡航状況などを含めて判断する場合があります。

 この判定は、税率だけでなく、海外所得を申告する必要があるかどうかにも影響します。日本とオーストラリアを行き来している方は特に注意が必要です。

「私はTax Residentですか?」は簡単そうで重要な質問です 税法上の居住区分を誤ると、その後の所得税率、海外所得、キャピタルゲインs Taxなどにも影響する可能性があります。ビザだけで判断せず、自分の状況に合わせた確認が必要です。

5. Tax Refund(返金)とTax Payable(支払い)の仕組み

 Tax Refundは「申告すればもらえるお金」ではありません。1年間に給与などからすでに差し引かれた税金と、最終的に計算された税額との差額です。簡単に考えると、次のような関係になります。

すでに支払った税金が最終税額より多い → Refundの可能性
すでに支払った税金が最終税額より少ない → Tax Payableの可能性

 経費を正しく申告することでTaxable Incomeが下がり、結果としてRefundが増えることはあります。ただし、経費は自由に増やせるものではなく、税務上の要件を満たす必要があります。

6. 2025–26年度の個人所得税率

 Australian resident individualに適用される2025–26年度の基本税率は次のとおりです。Medicare Levy等は別途考慮される場合があります。

課税所得基本税率
$0 – $18,2000%
$18,201 – $45,000$18,200を超える部分に16%
$45,001 – $135,000$4,288 + $45,000を超える部分に30%
$135,001 – $190,000$31,288 + $135,000を超える部分に37%
$190,001以上$51,638 + $190,000を超える部分に45%

 2026年7月1日からは一部税率が変更されますが、それは2026–27年度の話です。2026年6月30日までの所得を申告する2026 タックスリターンとは区別して考える必要があります。

7. 申告しなければならない収入

 申告対象となる収入は給与だけではありません。ATOのPre-fillに表示されていない収入でも、申告が必要な場合があります。

・雇用収入、手当、ボーナス、退職金など

・銀行利息、配当、Managed Fund等の投資収入

・賃貸不動産の収入

・ABN、フリーランス、副業の収入、日本からの委託収入

・Uber、Uber Eats、DoorDashなどPlatformを通じた収入

・Airbnb等の短期宿泊収入

・株式、仮想通貨、不動産等の売却に関係するキャピタルゲインs

・海外から得た収入

「少額だから」「現金でもらったから」「海外の口座に入ったから」「Prefillに出ていないから」という理由だけで申告不要になるわけではありません。

8. 日本・海外に収入や資産がある場合

 オーストラリアに住んでいる日本人の方にとって、最も注意したい分野の一つです。税務上Australian residentに該当する場合、原則としてオーストラリア国内だけでなく、海外から得た所得も申告対象となることがあります。日本に次のようなものがある方は、申告前に確認しておくと安心です。

・日本の給与・事業収入

・日本の銀行預金からの利息

・日本株・投資信託等の配当や分配

・日本の不動産からの賃貸収入

・日本株や不動産などを売却した

・日本で税金をすでに支払っている

 日本ですでに税金を支払っている場合でも、「オーストラリアでは申告不要」とは限りません。二重課税を調整する仕組みが関係することもあり、どこで何を申告するかは個別に確認する必要があります。

日本とオーストラリアの両方に関係する税務 海外所得は、単純な給与所得だけのタックスリターンより判断が複雑になりやすい分野です。日本の収入・資産がある方は、申告前に整理しておくことをおすすめします。

9. 経費は「仕事で使った」だけでは決まらない

 タックスリターンで最も質問が多いのが「これは経費になりますか?」という点です。一般的に、仕事との関連性、本人が実際に負担したか、勤務先からReimburseされていないか、私用部分があるか、記録があるかなどを確認します。

経費になり得るものの例

・仕事に必要な特定の道具・機器

・職業に直接関係する研修・メンバーシップフィー

・条件を満たす仕事関連の車両移動

・条件を満たす在宅勤務経費

・職業上必要な特定の衣服・保護具など

経費にならない、または経費になっても私用との区分が必要なもの

・自宅から通常の勤務先までの通勤

・一般的なスーツや私服

・食事・飲み物

・電話・インターネット

・自宅の家賃・光熱費

・PCやスマートフォンなど仕事と私用の両方で使うもの

 特に携帯電話は仕事での利用割合を証明できる利用記録が必要です。

領収書があることと、税務上Deductionできることは別です。また「$300以下なら何でも経費になる」というルールもありません。

 同じ支出でも、職業、雇用条件、使用目的、私用割合などで結論が変わることがあります。経費を増やすことより、「説明できる正しい申告」をすることが重要です。

10. 在宅勤務・車・投資不動産・仮想通貨などの注意点

在宅勤務(Working From Home)

 2025–26年度のFixed Rateは1時間あたり70セントです。ただし、在宅勤務をした時間の記録が必要で、固定レートに含まれる費用を別の場所でも重複して申告することはできません。高額な機器などは別の取扱いになる場合があります。

車の経費

 2025–26年度のCents per kilometre methodは1kmあたり88セントです。2026年7月1日以降の2026–27年度は91セントになります。自宅から通常の勤務先への通勤は、仕事に関係しているように見えても原則としてPrivate travelとなることがあります。

投資不動産(Rental Property

 賃貸収入がある場合、関連する支出の一部を控除できることがありますが、ローン返済額のすべてが経費になるわけではありません。また、RepairとImprovement、DepreciationとCapital Worksなど、支出の内容によって税務処理が変わります。売却時にはキャピタルゲインs Taxも確認が必要です。

仮想通貨(Crypto

 仮想通貨は「AUDに換金した時だけ税金が関係する」とは限りません。売却、別の通貨との交換、仮想通貨を使った購入などでも申告の対象になる場合があります。取引履歴を残しておくことが重要です。

「自分のケースはどちら?」が残るのが税務です 税務ルールは一般論だけでなく、実際の取引内容や目的に当てはめて判断する必要があります。不動産、仮想通貨、車、在宅勤務など、判断に迷う項目がある場合は申告前に確認しましょう。

11. ABN・Uber・Uber Eats・Airbnbなどの収入

 給与以外の収入が増え、副業やGig Economyのタックスリターンも一般的になりました。ABNを取得している場合、収入と関連経費の記録を自分で管理する必要があります。

 Uber、Uber Eats、DoorDash、Airbnb、オンライン販売、フリーランスなどは、それぞれ税務上の扱いが同じとは限りません。GST登録が必要かどうかも、事業内容や売上によって異なります。

 特に「Platform側が税金を処理してくれていると思っていた」「銀行口座への入金額だけ申告すればよいと思っていた」というケースには注意が必要です。

12. スーパーアニュエーションとタックスリターン

 スーパーアニュエーションへの追加拠出は、長期的な資産形成だけでなく税務にも関係します。ただし、Concessional Contributionの上限、Carry-forwardの利用条件、雇用主の雇用制スーパーアニュエーションであるSuperannuation Guarantee、個人拠出の経費計上など、複数のルールがあります。

「スーパーアニュエーションに入れれば全部節税になる」という単純なものではありません。収入、年齢、既存の拠出額、スーパーアニュエーションの残高などによって確認すべき項目が変わります。

 また、給与所得者の場合でも、Salary SacrificeやPersonal Contributionを行っている場合は、タックスリターンだけを見るのではなく年間の拠出総額を確認することが大切です。

13. サラリーパッケージとは

 サラリーパッケージとは、給与の一部を現金で受け取る代わりに、一定の費用や福利厚生を雇用主から提供してもらう仕組みです。

 代表的なものには、スーパーアニュエーションへの追加拠出、車両費、ノートパソコンなどの仕事関連用品、条件を満たす電気自動車などがあります。

 サラリーパッケージを利用することで、課税対象となる給与を減らし、結果として税金を抑えられる場合があります。

 ただし、すべての支出をサラリーパッケージにすれば税金が安くなるわけではありません。

 サラリーパッケージの内容によってはFringe Benefits Tax(FBT)が関係するほか、雇用主の制度、使用目的、車両の種類、購入時期などによって税務上の扱いが異なります。

 特に注意が必要なのが、車のサラリーパッケージです。

 いわゆるNovated Leaseを利用すると、給与から車両費を支払うことができますが、ガソリン車、ハイブリッド車、電気自動車で税金上の扱いが異なります。

 一定の条件を満たす電気自動車についてはFBT上有利な取扱いとなる場合があり、通常の車両と比較して大きな節税効果が出るケースもあります。

 また、SuperannuationへのSalary Sacrificeも代表的なサラリーパッケージの一つです。

 給与として受け取る代わりにSuperへ追加拠出することで、税務上有利になる場合がありますが、年間のConcessional Contribution Capなどの制限もあるため、すでにEmployer Superが多い方は注意が必要です。

 サラリーパッケージは、うまく利用すれば税負担を抑えながら資産形成や車両購入を行える制度ですが、誰にとっても同じメリットがあるわけではありません。

「自分の給与ならSalary Packagingを使った方がよいのか?」
「EVのNovated Leaseは本当に得なのか?」
「SuperへのSalary Sacrificeはいくらまで行うべきなのか?」

といった判断は、給与額や家族構成、ローン、スーパーアニュエーションの状況などによって変わります。

 ただ、病院、救急サービス、チャリティー団体など、一定の条件を満たす雇用主の元で働く方、給料から電気自動車のNovated Leaseをすることで電気自動車が欲しいという方には大きな節税ツールとなります。

14. タックスリターンでよくある間違い

毎年よく見られる誤解をまとめると、次のようなものがあります。

よくある思い込み注意点
領収書があれば、仕事で使うのなら何でも経費になる仕事との関連性や私用割合などの要件があります。
300ドル以下なら無条件で経費になる金額だけでDeductionの可否は決まりません。
ATO Prefillの数字だけで申告すればよいPrefillに含まれない収入や情報もあります。
日本の収入は日本で申告しているのでオーストラリアでは関係ない税法居住区分によりオーストラリアでの申告が必要となる場合があります。
Cryptoは現金化しなければ関係ない交換等、売却でなくとも申告しなくてはならない場合があります。
Uber Eatsなど少額の副業は申告不要Uber EatsといったABN収入は1ドルから申告する必要があります。
通勤費用は仕事に行くためだから経費通常の自宅と勤務先へ通勤は経費となりません。
二つ以上の仕事をすると税金が高くなるいくつの仕事をしようと総収入が同じなら税金額は同じです。

15. 申告期限とTax Agent(登録税理士)を利用するメリット

 自分でタックスリターンを申告する場合、一般的な期限は10月31日です。Registered Tax Agentを利用する場合は、ATOのTax Agent Lodgment Programにより、状況に応じてそれ以降の期限が適用される場合があります。ほとんどの方の期限は翌年5月15日。

 ただし、過年度のタックスリターンが未申告になっている場合などは、通常の延長期限が使えないことがあります。

 税理士申告のメリットは、ただ申告を依頼することだけではありません。。税法上の居住区分、海外所得、経費、キャピタルゲイン、賃貸不動産収入、ABNなど、自分では判断が難しい項目を確認しながら申告できることにあります。

 オーストラリアでは7割以上の方がTax Agentによる税理士申告です。

 また、代行を名乗る業者や「やっておいてあげる」といった無資格者の申告には注意が必要です。税金のアドバイス、タックスリターンの申告ができるのはTax Agent、登録税理士のみです。

タックスリターンを「入力作業」にしない 申告で重要なのは数字をフォームへ入れることより、その数字をどこに、どのように申告するかを正しく判断することです。複雑な項目がある場合は、Registered Tax Agent=登録税理士へ相談することで申告ミスを減らせます。

16. ATOは知っている

 ATOは、雇用主、銀行、スーパーアニュエーション Fund、投資機関、政府機関、オンラインプラットフォームなど、さまざまな第三者から情報を受け取っています。タックスリターンの内容とATOが保有する情報を照合するData Matchingも行われています。

 ATOが把握している可能性がある情報の例として、次のようなものがあります。

・給与・スーパーアニュエーション

・銀行利息・配当

・株式等の投資情報

・不動産に関する情報

・Uber、Uber Eats、Airbnbなど一部Platformから報告される情報

・仮想通貨に関連する取引情報

・政府機関等から提供される情報

 大切なのは「Prefillに表示されていない=ATOが知らない」と考えないことです。また、ATOが持っている情報が必ず完全・正確とも限りません。最終的に申告内容を確認する責任は納税者側にあります。

 2026年もATOはデータ活用と事前入力・検証を強化しています。収入の申告漏れや、根拠のない経費計上は、以前より見つかりやすい環境になっていると考えた方がよいでしょう。

17. まとめ

タックスリターンは、給与所得だけのシンプルなケースであれば比較的分かりやすい一方、海外所得、投資、Rental Property、Crypto、ABN、副業、スーパーアニュエーションなどが加わると、一気に判断項目が増えます。

2026年はHELP等の制度変更もあり、前年と同じ方法でよいとは限りません。税金を多く返してもらうことだけを目的にするのではなく、「必要な収入を漏れなく申告し、認められる経費を正しく申告する」ことが基本です。

 そして、分からない項目を推測で処理しないこと。税務上の判断に迷う場合は、申告前に登録税理士へ確認しましょう。

Ezy Tax Solutions Japan

Web: https://ezytaxsolutionsjapan.com.au

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