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セナタフから王立植物園

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タスマニア再発見

No.140 セナタフから王立植物園
文=千々岩健一郎

新設された橋の上からセナタフを望む

新型コロナが席巻しあちこちを出歩くのが難しい昨今、体調管理の運動を兼ねて歩くのに適したホバート市内の散策コースを取り上げてみよう。

セナタフはタスマン・ブリッジを渡ってホバートに入って来た所で最初に目に付く広い芝生の公園。過去の戦争で亡くなった兵士たちを追悼する慰霊碑があり、例年4月のアンザック・デーには追悼式典が行われる。実は今年の初め、このセナタフとクイーンズ・ドメインをつなぐ橋が完成した。空港から入る3号線の幹線道路をまたぐ巨大な歩道橋だ。今回はこのセナタフを出発点にこの橋を渡り、王立植物園に至る周遊散策コースを歩いてみよう。

Bridge of Remembrance
Bridge of Remembrance

「Bridge of Remembrance」と名付けられた橋は、斬新なデザインのスチール製でタスマニアにある工場で組み立てられ幾つかに分けて運ばれた。設置は幹線道路を遮断する大工事で、いったん計画されたものの天候悪化により何回か延期された。幹線道路をまたぐため6.5メートルの高さが確保されている。

ドメインとセナタフをつなぐという構想は2013年に造られたドメイン・マスター・プランに基づくもので、これによってドメイン側とセナタフを歩いて(あるいは自転車で)移動できることになり一体感が生まれた。私も今回初めて歩いて知ったのだが、ドメイン側に渡った所から総督邸に向けて戦没兵士アベニューがあり、その中を散策路が抜けていく。第1次世界大戦で亡くなった520名の兵士のプレートと記念樹が一定の間隔をもって設置されている。途中にある重厚な倉庫のような建物は、1850年ごろに造られた弾薬庫で、厚い砂岩の壁と頑丈な屋根、落雷防止の避雷針など独特の造りをしている。

この先も広大なドメインの敷地は続くが、今日の所はこの先を右に折れて王立植物園に降りて行こう。途中に1976年米国海軍の空母エンタープライズがホバートに寄港した時の記念碑があり、当時の乗員と市民の間の交流の歴史を読みながら下っていくと、植物園の鉄のゲートはもうすぐそこだ。王立植物園は1816年に設立され、一昨年の200周年を契機にいろいろと新しくなったが、今回は紙面が足りなくなったので次回に取り上げたいと思う。

今回のテーマのセナタフから植物園を周遊するサーキット・ウォークは植物園の下側の出口を抜けて、ダーウエント河岸に沿って設けられたサイクリング道路を歩いて出発点に戻る。途中タスマン・ブリッジをくぐる部分があり、この橋の姿も間近に展望できる。


千々岩 健一郎(ちぢわけんいちろう)プロフィル
1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うと共に、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手掛けている。北海道大学農学部出身。

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