美しい鳴き声とちょっとお騒がせな素顔、子育てシーズン到来「攻撃に気をつけて」 ─ 鳥大国オーストラリアの野鳥めぐり⑤ マグパイ(カササギフエガラス)

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 オーストラリアの街や公園で、黒と白の鮮やかなコントラストが目を引く鳥「マグパイ」を一度は見かけたことがあるのではないでしょうか。身近でよく見かける賢い鳥ですが、時に人間を攻撃し脅威を与えることも。今回は、このオーストラリアを象徴する野鳥の魅力と素顔に迫ります。
(文・写真:クラークさと子
 

第5回 マグパイ

英:Magpie(Australian Magpie)
日:カササギフエガラス
分布:密林や砂漠を除くオーストラリア全土に広く分布
ニューギニア南部にも生息する。都市部にも適応。

マグパイってどんな鳥?(特徴と見分け方)

 山間部から都市部の公園、住宅街の庭まで、どこでもたくましく暮らしているマグパイ。体長はカラスやフエガラス(Currawong)と同じくらいの大きさですが、赤茶色の澄んだ目と白っぽいくちばし、首の後ろや翼に広がる鮮やかな白が特徴です。

日豪プレスのオフィス近くでシティを背景に

 「カラス(Crow)」や、似たような白黒の鳥「マグパイラーク(Magpie-lark)」と混同されがちですが、まったく別の種類です。また、名前が同じヨーロッパのマグパイ(カササギ)とも別の仲間ですが、「非常に知能が高い」という共通点を持っています。

カラス(Crow)
フエガラス(Pied-currawong)
ツチスドリ(Magpie-lark)

 オーストラリア全土には地域ごとに9種類のマグパイの亜種が存在し、白と黒の模様の入り方が少しずつ異なります。

美しい歌声と、高い知能

 マグパイの大きな魅力の一つが、フルートのように美しい鳴き声です。クッカバラ(ワライカワセミ)同様、早朝から響き渡るその声は、朝の散歩を心地よくしてくれます。この鳴き声は、縄張りの主張や仲間とのコミュニケーションとして使われています。

 また、マグパイは非常に目が良く、人間の顔を覚えるほど賢い鳥です。普段から優しく声をかけたり接していると、人間を「友達」と認識し、成長した雛を庭に連れて見せに来てくれることもあります。(※若いマグパイは羽毛が灰色っぽく、くちばしも黒っぽいのが特徴です)

左が幼鳥、右が成鳥

 食性は雑食で、公園の芝生で虫や幼虫を探したり、地面から上手にミミズを掘り出したりしています。時には小さなカエルやトカゲなどを捉えることもあります。

春の風物詩?「スウーピング(攻撃)」と人間との付き合い方

 そんな親しみやすいマグパイですが、春先の子育ての季節(8月下旬〜11月頃)になると一変します。特に9月から10月に活発になります。ヒナを守るため、巣の周囲約100mの「防衛ゾーン」に入ってきた人間や自転車に乗った子供を上空から急降下して攻撃する「スウーピング(Swooping)」を行います。

 攻撃するのは主にヒナを守る父親(オス)で、彼らにとって人間は「大切な子供を脅かす危険人物」に見えているのです。時には頭部だけでなく、目や顔の近くを直接突かれて出血するケースもあるため、絶対に油断は禁物です。

 「いつも声をかけて仲良くしている近所のマグパイ」なら攻撃してこないことも多いですが、出先や遠出した場所など、見知らぬ地域のマグパイとすでにシーズンが始まってから友達になるのは極めて困難です。

 実際、私の身近でも「ノースショアエリアで、プレスクールに向かう途中に子供が目の脇を突かれて出血してしまった」という痛ましい話を聞いたばかりです。

 攻撃は頭部だけでなく、目や顔の近くを直接狙われるケースもあり大変危険です。もし攻撃的なマグパイがいるエリアを通らなければならない時は、以下の方法で身を守りましょう。

【マグパイに攻撃されないための対策】

🐦‍⬛ 顔を覚えてもらう: 繁殖期の前から、家の近くのマグパイに優しく声をかけ、敵ではないと覚えてもらうのが効果的です(一度味方と覚えた人間は攻撃しません)。

【万が一、襲われそうになった・襲われた時の実践ガード策】

🐦‍⬛ 頭と「目・顔」を徹底的に保護する: 最も危険なのは目への攻撃です。外出時はつばの広い帽子、サングラス、広げた傘を着用してください。傘を開いて頭上に掲げるだけでも、上空からの急降下を強力にブロックできます。

🐦‍⬛「視線」を合わせる(マグパイを見つめる): マグパイは基本的に背後から襲いかかってきます。背中を見せて逃げるのではなく、マグパイの位置を確認し、じっと見つめながらゆっくり後退してください。視線を合わせている間は襲いにくくなる習性があります。

🐦‍⬛ 走らない・大声をださない・払いのけない: 攻撃されるとパニックになりがちですが、走ったり腕を振り回して暴れると、マグパイは「敵が攻撃してきた!」と誤認し、より激しく襲ってきます。両腕を頭の上で組んで頭部を守りながら、落ち着いて静かにその場を離れましょう

🐦‍⬛ 自転車からはすぐに降りて押して歩く: ヘルメットを被って自転車に乗っている子供は特に標的になりやすいです。ヘルメットの穴に「結束バンド(Cable ties)」を上向きに立てて取り付ける対策も有名ですが、襲われた際はまず自転車から降り、静かに自転車を押してエリアを抜け出すのが一番安全です。

🐦‍⬛ 情報を共有し、危険なルートを避ける: 巣がある場所(危険ゾーン)は決まっています。オーストラリアには有志によるマグパイの攻撃目撃情報サイト「Magpie Alert」などもあります。一度襲われた場所はシーズンが終わるまで迂回するのが最大の防御です。

 もしどうしても攻撃的すぎる個体がいる場合は、地域のカウンシル(市役所等)に連絡して注意喚起の看板を設置してもらうなどの対応を相談しましょう。

 過去には攻撃的になりすぎたマグパイが駆除されるという悲しい事件(2019年NSW州)もありました。お互いの安全のためにも、子育て中の彼らの習性を理解してそっと見守りたいですね。

SNSで世界中が感動した「Molly the Magpie」

 マグパイの賢さと人間(そして他の動物)との絆を象徴する有名なエピソードがあります。

 クイーンズランド州で保護され、家庭の愛犬(スタッフォードシャー・ブル・テリア)と大親友として育った「モリー(Molly)」というマグパイです。SNSで世界中にファンが出来ましたが、野生動物の無許可飼育ということで当局に一時期押収されてしまいました。

 しかし、多くの人々から復帰を求める声が上がり、特別な許可のもと、無事に大好きな家族と愛犬のもとへ戻ることができました。国中で話題となったこのニュースは、マグパイがいかに人々に愛されているかを物語っています。

 オーストラリアの日常に溶け込み、美しく歌い、家族を深く愛するマグパイ。 少し警戒心が強くなるこれからの季節ですが、彼らの生態を理解し、温かい目で見守っていきたいですね。公園などで見かけた際は、ぜひその美しい目や鳴き声に注目してみてください!

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