ひとつではない宇宙、さまざまな世界の見方──「Proximate Cosmologies」/NSW州立美術館ボランティア・日本語ガイド便り

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執筆者=吉澤なほみ 

「宇宙」と聞くと、私たちはまず、星や銀河が果てしなく広がる壮大な空間を思い浮かべるのではないでしょうか。では、もし「宇宙」が、もっと私たちの身近な所に存在するとしたら──。 現在、NSW州立美術館で開催されている「Proximate Cosmologies(プロクシメイト・コスモロジーズ)」は、そんな問いを私たちに投げかける展覧会です。 

 本展のタイトルにある「Proximate」は、「近接する」「隣り合う」という意味を持ち、異なる文化や時代、地域、そしてさまざまな価値観が、互いに寄り添いながら響き合う世界を表しています。この展覧会では、「宇宙」は天文学的な宇宙だけでなく、 人と自然、土地、祖先、記憶、精神性とのつながりの中で、人びとが長い時間をかけて育んできた「世界の見方」そのものが「宇宙」として捉えられています。オーストラリア先住民の豊かな知識体系や伝承をはじめ、現代アーティストたちの視点を通して、私たちと世界との関係を、もう1度見つめ直す機会を提供します。 

Installation view of the ‘Proximate Cosmologies’ exhibition at the Art Gallery of New South Wales, 30 May 2026 – 2027, artworks © the artists, photo © Art Gallery of New South Wales, Jenni Carter

 会場には、絵画、写真、映像、彫刻、インスタレーションなど、多彩な作品が並びます。自然の循環、生命、時間、記憶、目には見えない存在とのつながりをテーマとした作品が、それぞれ異なる文化や背景を持ちながらも、互いに呼応するように展示されています。 

Installation view of the ‘Proximate Cosmologies’ exhibition at the Art Gallery of New South Wales, 30 May 2026 – 2027, featuring Daniel Boyd ‘A Darker Shade of Dark #1-4’ 2012, © Daniel Boyd, photo © Art Gallery of New South Wales, Jenni Carter

 中でも、ダニエル・ボイド(Daniel Boyd)の「A Darker Shade of Dark #1–4」は、本展を象徴する作品の1つです。暗闇の中に浮かぶ無数の小さな光は、目には見えないダーク・マター(暗黒物質)や、私たちの世界と重なり合う別の宇宙の存在を想像させます。作品の前に立つ位置によって、光の見え方や画面の表情が変化する画面は、「見えているものだけが、本当に存在しているのだろうか?」そして、「見えないもの」との境界を静かに問いかけます。

Michael Alan Riley, Untitled (feather) from the series Cloud 2000, printed 2005–2009, Inkjet printed banner paper 125 x 86 cm image; 102.1 x 136.6 x 5.8 cm frame, Art Gallery of New South Wales, Purchased 2022 with funds raised from the 2017 Art Gallery of New South Wales Foundation gala dinner © Michael Riley Foundation/Copyright Agency

 また、マイケル・ライリー(Michael Riley)の写真シリーズ「Cloud」では、澄み渡る青空に白い雲が浮かぶ静謐(せいひつ)なイメージを通して、喪失や祈り、希望を静かに語りかける作品です。空を見上げるという、ごくシンプルな行為が、私たち自身の記憶や感情へとつながっていくのです。一方、アドリアン・ビジャール・ロハス(Adrián Villar Rojas)の「The End of Imagination IV」は、人類や文明の未来を思わせる彫刻作品で、生命や時間、世界の終わりと始まりについて深い思索を促します。 

 それぞれの作品が描き出す多様な「宇宙観」という壮大なテーマを通して、共通の問いや、世界を理解しようとする人びとの想像力に触れることができます。アーティストたちは、「時間や宇宙は何によって成り立っているのか」「宇宙を動かしている見えない力とは何なのか」を探求しています。私たちが見ている世界の向こう側には、まだ知らない世界が広がっているのかもしれません。現代アートが広げる新たな視点を、ぜひ会場で体験してみてください。

「Proximate Cosmologies」展
会期:開催中〜2027年
会場:Naala Badu(北新館)地下2階
入場料:無料
Web: https://www.artgallery.nsw.gov.au/whats-on/exhibitions/proximate-cosmologies/

常設展:無料日本語ハイライト・ツアー
【Naala Nura(南本館)】
毎週金曜日午前11時から。集合場所はインフォメーション・デスク前
【Naala Badu(北新館)】
毎週日曜日午後1時から。集合場所はエントランス・パビリオン

Art Gallery of NSW

ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州立美術館。南本館に加え、日本人建築家ユニットSANAAのデザインによる北新館が2022年12月に新築オープンした。常設展は入場無料。

開館時間:10AM~5PM(水曜日のみ10PMまで)
Webwww.artgallery.nsw.gov.au
日本語サイトwww.artgallery.nsw.gov.au/visit/plan-your-visit/information-in-other-languages/japanese

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