
いけばなを完成させた後、ときどき花が、こちらの想像を飛び越えていくことがあります。今年の夏は、祇園祭の季節に合わせて、いけばな展を開催しました。暑さの厳しい京都だからこそ、訪れてくださる方に、ほんのひととき涼を感じて頂けたら。そんな思いから、展覧会のタイトルを「玲瓏(れいろう)の庭」としました。
「玲瓏」という言葉には、玉が触れ合うような、澄んだ音や光の美しさがあります。どこからか涼やかな鈴の音が聞こえてきそうな、その響きも気に入っていました。会場となった「嶋䑓(しまだい)ギャラリー」で、私はアラスカ檜・レイランディーの枝を磨き、藤ヅルや漆を塗ったシーグレイプスの葉と共に、天井から吊るしてみました。
すると、いつも見慣れている植物が、なんだか違って見えてきました。
「ここは宇宙空間かしら?」
そう思いながら眺めていると、側に掛けられていた日本画の静かな世界の中で、枝がすっと伸びていき、まるで地上の重さを忘れ、重力から解き放たれて、空に遊んでいるようでした。
「いけばななのに、浮いている」
そんな少し不思議な景色に、ご覧頂いた皆さまにも、たいへん興味を持って頂きました。いけばなは、私たちが思っているより自由なのかもしれません。器に入れて美しく整えるだけのものではなく、空間、そしてそこにいる人の感性が重なり合うことで、花は思い掛けない姿を見せてくれます。
日本画といけばな。異なるものが響き合うことで、1つの世界が生まれて、そこに、思いもよらなかった美しさが立ち現れる瞬間に心が動かされました。
新たな出会いの中から、まだ知らなかった世界がふと目の前に開いていくこと。この夏、宇宙空間に漂っているような空に遊ぶ枝たちが、そんなことを教えてくれました。
このコラムの著者
多田玲秋(Tada Reishu)
いけばな作家
Web: https://www.instagram.com/yoshimi_ikebana/