中華系の廟(びょう)を久々に訪れて感じた「コミュニティーの拠り所」って存在の意味/タカ植松のQLD百景 第61回

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三聖宮@アルビオン

Text and photo: Taka Uematsu

 ブリスベン有数の高級住宅地の道路際に「三聖宮」という漢字表記の鄙びた看板を見つけたのは、ブリスベンに居着いてすぐの2000年代初頭のこと。「三聖」と聞いて、少なからず中国の歴史や文学に親しんできた身として、孔子、老子、釈迦、それぞれ儒教、道教、仏教の始祖である3人を祀っているのだと勝手に思い込んでいた。

 次に近隣を訪れた際に三聖宮を初めて訪れ、そこが1885年から86年にかけて、ブリスベン周辺の広東系の住民によって建立された道教の廟だと知った。中を覗いたら、道教寺院らしい色彩と中華系と思しき人びとが長い線香を頭上に掲げて祈りを捧げる姿。一瞬、自分が豪州にいることを忘れさせられる、何とも言えない経験だった。

 で、この廟に祀られる「三聖」は、財神、薬王、文昌。いずれも道教で人びとの信心の支えとなる大事な神様なのだが、詳しい説明に字幅は割けないので、ここでは割愛する。

 先日、約20年の時を経て、三聖宮を思い立って再訪した。隣接する有名なパブ、ブレックファスト・クリーク・ホテルに寄った際、駐車場の視線の先に廟の独特な装飾の門の一部が見えたら自然と足が動いていた。

 20年の時間はある意味残酷で、残念ながら外観の劣化はかなり進んでいた。逆光というのもあったが、外観ではあまりフォトジェニックな構図が見つからなかったのはそのせい。日曜の昼下がりだったが、廟内には参詣者がおり、深々と神々に祈りを捧げていた。あの独特の、1歩踏み入れた時の「異世界転生」感は健在だった。

 彼らの参拝が終わった頃合いを見て、道教の参拝の正しい所作を知らないので、静かに手を合わせて拝んだ。神様を真正面から見据えて写真を撮るのは失礼に当たると思い、斜めから祭壇をパチリ。扁額(へんがく)の裏に仕込まれた蛍光灯が無駄に明るく、どうしても映り込んでしまうが、どうしようもない。

 ヘリテージ・リストに登録されているので、無闇やたらと改修できないのは分かる。でも、広東系コミュニティーの成功者たちがひと肌脱げば、すぐに全体的な修繕はできそうなもんだが、若い世代の信心は薄れてしまっているのだろうか。

 日系住民としては、こうした歴史のある廟が残る広東系が心底うらやましい。だって日系には仏教寺院はあれど、神社はないもんな。そういう場所こそ、コミュニティーの拠り所になるんだろうけど、日本人は宗教ではまとまらないしな……。

 同じような思考回路で、「日系コミュニティーの拠り所を作りたい」と徒手空拳(としゅくうけん)で立ち上げたイベントが、毎年、規模だけを大きくしていく様子を斜め見していた日の夜、そんなことを考えながら、この原稿を書き上げた。

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。ブリスベン在住の日豪プレス特約記者として、フットボールを主とするスポーツ、ブリスベンを主としたQLD州の情報などを長らく発信してきた。2032年のブリスベン五輪に向けて、ブリスベンを更に発信していくことに密かな使命感を抱く在豪歴20年超の福岡人

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