
「SNSを開くと同じような動画や投稿ばかり出てくる」「一度興味を持ったものを見ただけなのに、その後ずっと似た内容が表示される」。そんな経験は皆さんお持ちではないだろうか。SNSでは、表示される投稿の多くが「自分がフォローしている人の投稿を新しい順に並べている」わけではない。AIや機械学習を利用した「アルゴリズム」が、利用者の行動を分析し、「この人はこれに興味を持ちそうだ」と判断したコンテンツを選んで表示しているのだが、オーストラリア政府は今、この仕組みに利用者自身が選択できる余地を設けようとしている。その詳細は?
アルゴリズムとは、ざっくり説明するとAIや機械学習を使って、利用者1人ひとりに合わせて表示するコンテンツを選ぶシステムだ。
「動画を最後まで見た」「何度も再生した」「いいねを押した」「コメントした」などの行動が積み重なると、システムは利用者の興味や関心を推測し、「この人は、この種類の投稿を見る可能性が高い」と判断。その後、似たようなコンテンツ内容を次々と表示する。
目的は、利用者にできるだけ長くプラットフォームを利用してもらうこと。利用時間や閲覧、反応が増えれば、広告などを通じてSNS運営企業の収益にもつながるからである。つまり、アルゴリズムが選ぶのは、必ずしも「利用者が本当に好きなもの」だけではないというわけだ。
「犬の動画」を見ていたはずなのに、なぜ?
あなたが仮に、かわいい犬の動画を数本見ていたとしよう。すると似たような動画が次々と表示されるようになる。さらに別の投稿を見て、そこに関連する内容にも反応すると、今度はそのテーマも増えていく。
そして場合によっては、いつの間にか極端な意見や陰謀論など、まったく違う方向のコンテンツまで表示され始めることもあるが、それらも視聴される可能性が高そうなものが並ぶことになる。専門家は、こうした仕組みによって、自分と似た意見ばかりが目に入る「エコーチェンバー」が生まれる可能性を指摘。結果として「自分の周りでは、みんな同じ意見だ」と思っていたのに、実際にはSNSの仕組みによって、そう見えていただけ、というケースもあり得るわけだ。
こうした状況を背景に、オーストラリア政府は新たな制度を提案している。
アルゴリズムを使わない場合の1つの形として考えられているのが、「新しい投稿から順番に表示する」方式。友人や家族、フォローしているアカウントの投稿が、投稿された時間順に並ぶ。昔のSNSに近い仕組みだ。
この方法なら、「おすすめ動画を次々と見ているうちに、気づいたら1時間経っていた」という無限スクロールを抑える効果も期待されている。
法案が成立すれば、SNSの利用者は、アルゴリズムによって選ばれたおすすめコンテンツを表示するか、それともアルゴリズムによる推薦を使わず、自分がフォローしている人やクリエイターの投稿だけを見るかを選べるようになる見通しだ。
一方で、アルゴリズムを使わないSNSには別の問題もある。
投稿数の多い人のコンテンツばかりが大量に表示されたり、見たい情報を自分で探さなければならなくなったりする可能性がある。
さらに専門家が懸念しているのが、SNS企業側による「プロテスト・デザイン」と呼ばれる対応。
法律上は「アルゴリズムを使わない選択肢」を用意していても、その画面を使いにくくしたり、機能を制限したり、アルゴリズムを使う場合より魅力のないサービスにしたりすれば、利用者は再びアルゴリズムを選ぶようになるかもしれない。
実際、Instagramには現在でもフォローしているアカウントだけを時系列で表示する機能がある。しかし、アプリを閉じて再び開くと、通常の表示に戻ってしまうという制限がある。
専門家からは、二者択一ではなく、利用者が自分でフィードをもっと細かく設定できる「ハイブリッド型」の仕組みを求める声も出ている。
例えば、特定の友人やクリエイターをリストにまとめたり、自分が見たいテーマを選んだりすることで、利用者自身がフィードをある程度「編集」できるようにする方法だ。
重要なのは、SNS企業が一方的に「あなたにはこれがおすすめ」と決めるのではなく、利用者自身が自分の見たい情報を選択できるようにすることである。
私たちはすでに「アルゴリズム」に囲まれている
今回の政府案が興味深いのは、「SNSのアルゴリズム」という、普段は目に見えない仕組みについて、利用者自身が選択できるようにしようとしている点だ。
もちろん、アルゴリズムには便利な面もある。膨大な数の投稿の中から、自分が興味を持ちそうな情報を見つけてくれるからだ。
一方で、「便利だから」という理由だけで使い続けていると、自分が何を見ているのか、そしてなぜそれが表示されているのかを意識しなくなる可能性もある。
現在でもInstagramでは「興味なし」を選択して表示内容を調整したり、推薦コンテンツをリセットしたりすることができる。TikTokやYouTubeにも、視聴履歴をリセットするなど、アルゴリズムに学習された情報を一度リセットする機能が用意されている。
今回の提案が実現すれば、SNSは「何を見るか」だけでなく、「誰に何を見せてもらうのか」を利用者自身が考える時代へと変わるかもしれない。
便利なおすすめ機能をそのまま利用するのか、それとも自分がフォローした人の投稿だけを見るのか。
私たちが毎日何気なく眺めているSNSの画面は、これから少しずつ変わっていく可能性がある。
■ソース
What could your social media feeds look like without the algorithm? (ABC News)