
「錠剤が大きくて飲みにくい」「手が震えて、目薬がうまく差せない」「薬を飲んだか忘れがち」――薬は毎日使うものだからこそ、ちょっとした不便が大きな負担になることがあります。
オーストラリアの薬局では、薬そのものだけでなく、薬を安全に、正しく使うための服薬補助具(Administration Aids)についても相談できます。今回は、日常生活で役立つ代表的なものをご紹介します。
錠剤を切る・つぶすための道具

錠剤を半分にしたいときには、錠剤カッター(Pill Cutter)があります。手で割るよりもきれいに分割しやすく、手の力が弱い方にも便利です。
また、錠剤を飲み込みやすくするための錠剤粉砕器(Pill Crusher)もあります。錠剤を粉末状にして、飲みやすくするための道具です。
ただし、ここがとても大切です。
「飲みにくいから、錠剤を割る・つぶす」は、自己判断で行わないでください。
薬には、ゆっくり成分が放出されるように作られた錠剤(徐放錠)や、胃ではなく腸で溶けるように作られた錠剤(腸溶錠)などがあります。このような薬は、割ったりつぶしたりすることで、本来の作用が変わったり、副作用のリスクが高くなったりすることがあります。
また、薬によっては、液体の薬に変更したり、錠剤からより小さなカプセルなど、別の形状に変更できる場合があります。同じ成分の薬でも、メーカーによって錠剤の大きさや形が異なることもあります。
「この薬は割っても大丈夫?」「つぶして飲んでもいい?」「もっと飲みやすい形の薬はない?」と思ったら、自己判断せず、薬剤師に確認することをおすすめします。
液体の薬にはオーラルシリンジ

子どもの薬など、液体の薬を量って飲むときに便利なのが、経口シリンジ(Oral Syringe)です。
目盛りがついているため、決められた量を正確に量りやすく、特に少量の薬を量る時に便利です。
液体薬を使うときは、付属の計量器具やオーラルシリンジを使いましょう。普通のスプーンは容量が一定ではないため、薬を量るのにはお勧めできません。
目薬がうまく差せないとき

目薬を自分で差すのが苦手な方には、目薬補助具(Auto Squeeze)があります。
「手がうまく動かない」「目薬のボトルを目の上で安定させられない」「狙ったところに落とせない」といった場合に役立ちます。
ただし、目薬は先端を目やまつ毛などに触れさせないことも大切です。容器の先端が目に触れると、薬液が汚染される可能性があります。
補助具を使っても難しい場合は、薬剤師に使い方を相談してみましょう。
吸入薬にはスペーサー

喘息などで使う吸入器(puffer)では、スペーサー(Spacer)がよく使われます。
吸入器から出た薬をいったんスペーサーの中にためてから吸い込むことで、吸入器を押すタイミングと息を吸うタイミングを合わせやすくなります。特に子どもや、吸入器の操作が難しい方に役立つ補助具です。
そして、スペーサーは正しく洗うことも大切です。
一般的には、初めて使う前に洗い、その後も定期的に洗浄します。温かい水と食器用洗剤で洗った後は、布やタオル、ティッシュなどで拭かず、自然乾燥させます。
拭くことで静電気が生じ、薬の粒子が内側に付着して、肺に届く薬の量に影響する可能性があるためです。
ただし、洗浄方法や頻度はスペーサーの種類によって異なる場合があります。製品の説明書を確認し、分からなければ薬局で尋ねてみましょう。
また、ひび割れなどがないか定期的に確認しましょう。
吸入器を押す力が弱い方などには、吸入補助具(Inhaler Aid)が使える場合もあります。ただし、吸入器の種類によって適したスペーサーや補助具が異なります。例えばAutohalerはスペーサーと併用できないため、自分の吸入器に適した補助具かどうかを確認してください。
薬を飲む時間が複雑、もしくは飲み忘れが心配な方にDAA


毎日たくさんの薬を飲んでいて、「朝の薬はどれ?」「これは昼に飲む薬?」と分からなくなってしまう場合や、「今朝の薬、飲んだっけ?」と忘れがちな方には、服薬管理補助(Dose Administration Aid:DAA)を薬局に相談する方法があります。
自分で薬を整理したい場合には、Dosette box(ピルオーガナイザー)という選択肢もあります。曜日や服用時間ごとに分かれたケースに、自分で薬を仕分けて入れておくものです。比較的薬の種類が少なく、服用方法もシンプルな方には便利です。
一方、Webster-pakやBlister Packなどは、薬局で準備してもらう服薬管理補助です。薬局で服用する時間ごとに薬をまとめてパックしてもらうことで、「いつ、どの薬を飲むか」が分かりやすくなり、飲み忘れや飲み間違いの防止にも役立ちます。
Dosette boxとWebster-pakなどの大きな違いは、薬を誰が仕分けるかという点です。Dosette boxは基本的に自分や家族などが薬を仕分けますが、Webster-pakなどは、薬局が処方内容を確認したうえで準備します。薬局によっては、準備した薬を定期的に自宅まで届けてくれるデリバリーサービスを行っているところもあります。こうしたサービスも上手に活用するとよいでしょう。
ただし、どちらが適しているかは、薬の種類や服用回数、本人の管理能力などによって異なります。薬が変更になったときは、Dosette boxの中身を自己判断で変更したり、Webster-pakに薬を追加・変更したりせず、まず薬剤師に確認してから対応しましょう。
「便利そう」だけで選ばないことが大切
服薬補助具は、薬を使いやすくしてくれる便利な道具です。しかし、すべての人に、すべての補助具が適しているわけではありません。
例えば、錠剤を割ったりつぶしたりできるかどうかは、薬の種類によって異なります。吸入器や目薬も、使用する人や薬の種類に合った補助具を選ぶことが大切です。
「薬が飲みにくい」というときには、無理に我慢したり、自己判断で薬の形を変えたりせず、「飲みにくい」「取り出しにくい」「使い方が難しい」と、そのまま薬剤師に伝えてみてください。
オーストラリアの薬局では、薬の選び方だけでなく、その薬を安全に、無理なく使う方法についても相談できます。
毎日の服薬で感じるちょっとした「困った」も、ぜひ薬局で相談してみてください。
メールでのご相談も受け付けています。薬や健康について気になることがあれば、お気軽にご連絡ください。

Profile
鐵池めぐみ(カナイケメグミ)
薬剤師。シドニー大学薬学部卒業後、オーストラリア薬剤師国家資格を取得。シドニー及び南オーストラリア州の大学病院で、がん治療を中心とした臨床薬学に20年以上従事。現在は、がん治療の研究に携わる傍ら、薬局を拠点に英語と日本語で薬の相談や服薬支援を行っている。
Email: megkanaike@gmail.com