9月17日、内務大臣が待望の移民制度改革を発表しました。注目すべきは「新しい数字」ではなく「新しい手法」です。議会での立法が行き詰まったため、政府は規制・大臣指令・行政運用という、議会を経ずに素早く動かせる手段によって、一時移民の制度を組み替えようとしています。
特に今回の対象は「短期(テンポラリー)ビザ保持者の人」です。永住者ではなく、テンポラリー・ビザを保持しながら家族を呼び寄せる人、ビザの種類を変更する人、滞在を延長する人などです。政府は純海外移民数を、現在の約30万人から2028年までに22万5,000人へと引き下げようとしています。これらの手段は法律ではなく規制によって作動するため、ほとんど予告なく施行されることとなります。短期ビザをお持ちの人、または豪州国内での申請を予定している人は、今すぐご自身の状況をご確認ください。
1. 立法を断念
政府はもともと、立法による移民法の改革を望んでいました。各社報道によれば、政府は野党(連合)に対し、オンショア(豪州国内)での難民保護ビザ申請の期限制限や、一部の審査請求権の制限を含む法改正への協力を求めていましたが、この妥協協議は決裂しました。議会での道を失った政府は、行政が持つ手段としての「ビザ条件」、「申請手続き」、そして「大臣指令の変更」などによって改革を進めることを確認しました。
大臣自身も、立法が「より良い」「最善の」結果だっただろうと認めつつも、それが実現しない以上「政府が使える手段はまだある」と述べています。この一文が、今回の政策転換を象徴しているようです。オーストラリアの短期ビザ制度の多くは「需要主導型」であり、行政が直接握る主要な統制手段は計画枠(プランニング・レベル)と処理設定(プロセシング)の2つです。今後、この両方が意図的に用いられると見られます。
ここで、制度の2つの側面を区別しておくことが重要です。永住移民プログラムは約18万5,000枠のまま据え置きです。しかし、今回の動きは短期ビザの側、つまり、留学生とその家族、一時就労者、そして国内でビザを切り替える人びとに集中しています。政府は、このセクターに最も有効的、かつ直接的に影響を与えられると考えているようです。
2. 影響を受ける3グループ
政府が示した方向性から、3つのグループがこの変更の矢面に立つことになります。詳細な規制内容はまだ明らかになっていませんが、対象は明確です。
(a)留学生家族
最も具体的に報じられているのは、留学生が事実上、家族を豪州に呼び寄せられなくなるという点です。参考までに、前年度に発給された学生ビザ33万7,427件のうち、約4万5,991件が2次申請者(扶養家族)向けでした。削減の多くは、この家族層から生じると見られます。留学生の数自体はおおむね維持される一方で、付随する家族ストリームが閉ざされる、という構図です。
(b)ビザを切り替える一時滞在者
今回の改革は、いわゆる「ビザ・ホッピング」──滞在延長のために国内で次々と一時ビザを乗り換える手法を標的としています。条件と申請設定の厳格化により、連続したビザの切り替えは難しくなると見られます。ある一時ビザから次のビザへとつなぐ計画に頼っている方は、もはや安全とは考えられません。
(c)滞在延長を望む方
政府は短期ビザ滞在の延長に対しても厳しい姿勢を示しています。7月からのワーキング・ホリデー・ビザの処理減速、技術ビザの処理順位の見直しといった先行する動きと合わせれば方向性は明白です。そのため、短期ビザ制度は、より小さく、より短い方向へと向かっていると言えます。
3. 法律改正ではなく「規制変更」によることの法的な意味
オーストラリアにビザで滞在する者にとって、その「手法」は「中身」と同じくらい重要です。法律(1次立法)による変更は、審議・修正・スケジュール化を経るため、通常はある程度の猶予をもって施行されます。一方、規制・法令上の指令・大臣指令による変更は、はるかに迅速に、時には即時に施行でき、同じ議会手続きの対象とはなりません。
実務上の影響は3つあります。第1に、現行ルールで動ける「窓」が突然閉じる可能性があること。今日は問題のない申請が、来月には新たな条件に直面するかもしれません。第2に、経過措置が決定的に重要になること。ある変更が自分に適用されるかどうかは、申請を提出した日、あるいはビザが交付された日という「正確な日付」によって決まることが多いのです。第3に、詳細は段階的に、複数の法令として発表されることです。1つの文書にまとまって出てくるわけではありません。
これは政策そのものの是非を論じるものではありません。適切な移民水準については、良識ある人びと、そして主要政党の間でも意見が鋭く分かれており、その議論は公の場で展開されています。野党や無所属議員が、場合によってはさらに大幅な削減案を打ち出す動きもあります。そのため、これまで以上にこうした政治状況の変化を敏感に受け止めなければならない時代が来ていると言えます。
4. 今すべきこと
詳細が固まるまでの実務的な対応
各規制が公布されるまでは、正確な助言は個々の状況によって異なります。しかし、以下のステップは広く当てはまり、早く着手するほど有利であると思われます。
(a)現在のビザ条件と有効期限を今日確認する。
ImmiAccountにログインし、何が許可され、いつ終了するかを確認しましょう。延長や切り替えが昨年通りできると思い込まないでください。
(b)家族の呼び寄せを予定する留学生は、その道が「閉じつつある」ことを想定する。
既にその方向で始まっています。
(c)国内でのビザ切り替えに頼る計画は、見直しを受ける。
連続した乗り換えこそが、今回の措置の標的です。現実的な出口計画、または永住計画を、適切なスケジュールと共に用意することが不可欠です。
(d)現行ルールで今提出できる申請があれば、提出を検討する。
現行ルールで資格があり準備が整っているなら、早く提出することで途中変更のリスクを減らせます。ただし、締切に間に合わせるために不完全・不正確な申請をしてはいけません。それ自体が重大なリスクを伴います。
(e)雇用主は採用スケジュールを再確認する。
処理順位の見直しと短期ビザの厳格化は、採用計画に影響します。主要なスポンサー対象者との永住権に関する話し合いを、今から計画に組み込むことが必要です。
(f)常に「法令」を注視する。
拘束力ある詳細は規制・指令にあり、いつ公布されてもおかしくありません。関連する法令に注視し、確認をし続けることが必要となります。
5. 最後に
立法ではなく規制によって動く環境では、準備が報われ、遅れが罰せられます。この環境をうまく乗り切れるのは、自らの現状を正確に把握し、思い込みではなく計画を持ち、選択肢が開いているうちに動く人びとです。取り返しの付かない判断を下す前に、必ず登録移民エージェントまたは弁護士に、現時点の状況をご確認ください。
アドバイザー

清水 英樹
オーストラリアQLD州弁護士。在豪30年以上。地元大学卒業後、弁護士資格を取得。フェニックス・グループCEOとして傘下にあたる「フェニックス法律事務所」、ビザ移民コンサルティング「Goオーストラリア・ビザ・コンサルタント」、交通事故ならびに労災を専門に扱う「Injury & Accident Lawyers」を経営
