執筆者=チョーカー和子
伝説のアウトローを描いた名作『ネッド・ケリー』がやって来る
オーストラリアを代表する偉大なアーティスト、シドニー・ノーラン(1917–92)。独自の想像力と斬新な技法で豊かな自然や歴史を描き出し、オーストラリア美術のあり方を大きく変えた彼の創作の原点に迫る大規模展覧会『ノーラン:Origins(原点)』が、NSW州立美術館で開催中です。

同展は、ノーランが制作活動を始めた1930年代後半から英国へ渡る53年までの「最も目覚ましい初期の創作活動期間」にスポットを当てた初の本格的な展示です。NSW州立美術館の所蔵作品及び、個人や他の主要美術館から集められた150点を超える貴重な作品が一堂に会し、若き天才が世界的アーティストへと登りつめていく鮮やかな軌跡をたどります。
メルボルン出身のノーランは、大胆な色彩と構図、そして型にとらわれない表現で、生前から高い評価を受けてきました。特に過酷で美しいアウトバック(奥地)の風景や歴史、民話を独自の視点で捉えた作品群は、現代のアーティストたちにも大きな影響を与え続けています。

なかでも一番の目玉は、実に60年ぶりに大集結する「ネッド・ケリー・シリーズ」です。19世紀の伝説的なブッシュ・レンジャー、ネッド・ケリーを題材にしたシリーズは、彼の代名詞として世界中で広く知られています。四角い鉄兜をかぶった独特の姿と共に、彼がいかにして19世紀の無法者を不朽の国民的ヒーローへと昇華させたのか、その表現の謎が明らかになります。

同展のもう1つの見どころは、驚くべきスピードで芸術的成熟を遂げた若きノーランの精力的な創作活動を追い、彼が独自のモダニズムを確立していく過程で、彼を取り巻く環境や土地とどのように深く関わってきたかを検証する点にあります。
幼少期を過ごしたメルボルン郊外のセント・キルダ、ビクトリア州の農業地帯ウィメラ、自然豊かなガーリ(フレーザー島)、そして過酷なアウトバックやネッド・ケリーゆかりの地グレンロワンまで。ノーランの想像力を刺激した広大な風景と、彼の作品との間に築かれた深いつながりが解き明かされます。
オーストラリアという国のイメージを形作った偉大な画家。アート・ファンはもちろん、オーストラリアの歴史や自然、そしてこの国がどのように描かれ、語られてきたのかに関心のある全ての人にとって、見逃せない貴重な機会です。ぜひNSW州立美術館でその感動を体感してください。
特別展「 ノーラン:Origins(原点)」
会期:10月3日〜2027年2月7日 (休館日:12月25日)
会場:Naala Nura(南本館)地下2階
入場料:大人35ドル〜
Web: https://www.artgallery.nsw.gov.au/whats-on/exhibitions/nolan-origins/
日本語ガイド・ツアー:11月1日〜2027年1月17日の毎週日曜午前11時から(ただし12月20日、27日、そして2027年1月3日の日曜日は休み)。予約不要。入場券を購入の上、展覧会場入口集合
常設展:無料日本語ハイライト・ツアー
【Naala Nura(南本館)】毎週金曜日午前11時から(年内は12月18日が最終日。2027年は1月8日から開始)。集合場所はインフォメーション・デスク前
【Naala Badu(北新館)】毎週日曜日午後1時から(年内は12月13日が最終日。2027年は1月10日より開始)。集合場所はエントランス・パビリオン

Art Gallery of NSW
ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州立美術館。南本館に加え、日本人建築家ユニットSANAAのデザインによる北新館が2022年12月に新築オープンした。常設展は入場無料。
開館時間:10AM~5PM(水曜日のみ10PMまで)
Web: www.artgallery.nsw.gov.au
日本語サイト:www.artgallery.nsw.gov.au/visit/plan-your-visit/information-in-other-languages/japanese