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オーストラリアで話す日本酒のお話 シドニー+「天狗舞」

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オーストラリアで話す日本酒のお話

第9回:シドニー+「天狗舞」

今年も盛況のシドニー酒祭り
今年も盛況のシドニー酒祭り

今回は「天狗舞」の蔵元、石川県の車多(しゃた)酒造さんをご紹介します。石川県と言えば、豪雪、兼六園、そして毛ガニを始めとした季節折々の食材が思い浮かびますが、その地元料理と一緒に味わいたいのが、うまみふくよかな日本酒の天狗舞です。

200年の伝統

車多酒造の創業は文政六年(1823年)。歴史をたどると、オーストラリアはまだ「流刑植民地」としてイギリスに支配されていたころであり、日本では長崎、出島、異国船打払令などが日本史の教科書に登場する時期です。一方、日本酒の現場では冬の寒い時期に仕込む「寒造り」などの醸造技術の発達から、効率的な清酒の生産が進んでいました。しかし、天狗舞のスタイルは当時から量より質。酛(もと)を生み出す微生物と蔵の職人が共同作業で造る、コクと奥行きのある味わいが、現在まで引き継がれている天狗舞の特徴です。

海外への挑戦

(左から)車多慶一郎さんと小川博久さん
(左から)車多慶一郎さんと小川博久さん

伝統を守ることはもちろんですが、世界に向けて天狗舞を発信していくこともブランド継承・発展の大事な側面です。そこで天狗舞は10月のシドニー酒祭りに初出展。将来、九代目として蔵を継ぐ車多慶一郎さんと営業部の小川博久さんは「オーストラリアの消費者は質が高い」と感じたそうです。天狗舞は中国、アメリカと大きな海外市場へも挑戦していますが、都市部に人口が集中し、日本への観光人気も高まっているオーストラリアを今後の成長市場と捉えています。会場では燗酒も提供し、来場者に冷酒との味わいの変化も楽しんでもらいました。小川さんによれば「天狗舞はオージーがよく知っている日本酒とは違うイメージ。冷でも燗でも味の厚みがあるので、油を使った中華や肉、スペイン料理のパエリアなどと合わせても絶妙だと思う」とのこと。確かに、祭り会場で販売していたトンカツ・バーガーとの相性は最高でした。

水は“100年物”

天狗舞のうまみに貢献している要素の1つは水。地元の白山に降り積もった雪が地下に浸み込み、その後に伏流水として湧き出るまで100年近く掛かるそうです。雪解け水は、山の樹木や土壌からの栄養分、ミネラルをたっぷり吸い込み、その雫が天狗舞のお酒として生まれ変わっているのです。そのおかげで石川県から遠く離れたオーストラリアでも、白山の自然の恵みをお酒として頂くことができます。

白山の自然と蔵の微生物に思いを寄せながら、オーストラリアのラム・チョップと天狗舞で乾杯しませんか。


雄町稲穂
在シドニー歴20年以上。日本での仏・独・豪ワインの輸入販売を経て、シドニーのブティック・ワイン専門会社に入社、日本やアジア諸国へ豪州プレミアム・ワインを輸出。現在は豪州食材を世界に広める企業に勤務。日本酒は2017年にWSET(Wine & Spirit Education Trust)のSake Level 3、19年にSSI(Sake Service Institute)国際唎酒師を受講・合格。引き続きスキルアップのため「テイスティング」に励んでいる

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