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2カ国での書く能力の習得について
 ブレット先生のバイリンガル教育指南 第6回

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 国際結婚をはじめ、近年、海外に定住する日本人は増加しています。しかし、わが子を地元の小学校に通わせながら、同時に日本語を学ばさせ、さらにそれを維持させることは簡単なことではありません。周りに、必要なサポートや環境が十分でないということもあり、特に読み書きができなくなる傾向があります。

 ただしある研究家によれば、少数言語(日本語)での基礎ができていれば、学校での言語(英語)にも良い影響を与え、両言語において優れた読み書き能力を発揮できるようになるという成果が得られたと言われています。

 特に書く能力は、文化の担い手としての役割を果たすための重要なスキルです。このライティング・スキルを身に着けるには、何らかのテーマを設けて書くことでコミュニケーションを図るという練習をすることが効果が高いと言われています。

 また、子どもの脳は柔軟なので、若いうちに異なる書記システムを習う方が良いと言われています。小学校に入る前の段階から少しずつ教える価値は十分にあると言えるでしょう。

 漢字などを覚えるには実際に書く練習が重要です。特に、昔に比べ日常的に活字離れが進んでいるためか、読む力、書く力は衰えているのが現状です。英語もそうですが、日本語においても書くことは漢字と語彙を頭に刻み込む大切な行程です。パソコンや携帯、メールの普及によって、漢字力の低下がさらに進まないように、この問題を十分に考慮し、漢字を段階的に覚える作業として実際に書く練習を十分にさせましょう。

 しかしながら、年齢やもともと持ち合わせている個々の言語能力にも大きく影響される場合があります。実際に書く練習をさせる時は、できるだけさまざまなテーマと内容を設定し、そして気楽に、かつ親子一緒に楽しく練習することが効果的と言えるでしょう。

 ともかく、できるだけ早めに第2言語の練習を始めることさえできれば、大人になってから外国語でおかしやすい典型的な誤りの数は圧倒的に減り、回避することもできます。「対照修辞学」(ある国の文化とともに母語が第2言語にどう影響するか)の観点からも、大人の日本人英語学習者がおかしやすい間違いについて批判的な分析と検証を行うことで、ライティング・スキルを向上させるためのさらに有効な方法についての理解を得ることができます。

 もちろん、一般的に良いライティングには普遍的な基準があります。ここではそれらすべてに1つずつ触れることはできませんが、「対照修辞学」の観点から日本人の英語ライティングに関する一例を挙げてみましょう。

 日本人の英語ライティングには概して、英語母語話者のライティングにはない「起承転結」の文章構造があるだけでなく、いわゆる読み手の責任により強く依存するという特徴があります。これらは第1言語の文化的特徴が必然的に影響しているのです。

 しかし、幼いころから子どもをバイリンガルとして育て、2カ国語の読み書きを練習していくことで、第1言語の干渉的誤りを回避することができ、発達段階における通常の誤りしか見られなくなることが分かっており、これはたいへん望ましいことです。 では、次回は2カ国語で読む能力の習得についてお話していきたいと思います。

ブレット・カミング プロフィル

◎愛知県立大学外国語学部英米学科准教授。QLD州グリフィス大学卒(日本語・日本史専攻)、サザン・クイーンズランド大学大学院応用言語学修士課程修了。ケンブリッジ大学連合で大人向けの英語教育講師免許を取得。「バイリンガリズム」の研究以外に、「日本人英語学習者の対照修辞学」「自己確立と言語教授」「言語・文化と言語方策における関係性」などがある。現在いくつかの「バイリンガリズム」に関連した執筆を行っている。バイリンガル教育に対する興味、関心のある人は、以下より直接の連絡が可能
Email: bcsensei@protonmail.com
Web: brettcumming.weebly.com

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