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日豪フットボール新時代「自信」第129回

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自信

6年の“自信”が表情にも表れる(筆者撮影)

 3月某日、シドニーCBDの朝。小糠雨の中で待ち合わせたのは、当コラムに4 年ほど前に登場してもらった(第85回「稀有」)伊藤瑞希(33)。実際に顔を合わせるのは3度目だが、日常的に情報交換などで連絡を取り合う仲だけに、久しぶりに会った気が全くしない。

 Aリーグの強豪シドニーFCアカデミーGKコーチの伊藤は、今年4月で豪州滞在丸6年を迎える。その事績を事細かに振り返ると当連載が何回あっても足りないが、今や彼は豪州随一のビッグ・クラブのフルタイム・コーチで、その教え子がAリーグ・デビューを果たし始めているのだ。

 シーズン中は、全ての世代別のアカデミー・チームの試合をチェックするためにほぼグラウンドに出ずっぱり。そんな多忙の合間を縫っても自己研鑽を怠らない日々。地元の準国営放送のレギュラー出演、自前のポッドキャストの発信など、自らの情報発信にも時間を割いてきた。

 最も大きな変化は、生涯の伴侶を迎えて既婚者になったことだ。とは言え、大阪が拠点のパートナーとはコロナ禍で全く一緒に暮らせずにいて、同居という意味での新婚生活はほぼないに等しい。それでも、お互いがお互いの夢とキャリアを理解し合って、そういう形での生活を敢えて選んでいるのだと言う。

 6年前の取材時には、何でも吸収しようとする、良い意味での「がっつく感じ」が印象的だった伊藤。今回は、6年という時間で積み上げてきた実績や自信がその言動に現れてか、どこか余裕を漂わせる。写真撮影のためにクラブのエンブレムの付いたジャージを羽織ってもらっていたが、そのまま店を出ようとすると、目ざとくそのロゴに目を留めたカフェの客の1人に話し掛けられた。

「ロゴを付けて歩く時はやっぱり下手なことはできませんからね」。シドニーFCで、今や「ミッキー」と言えば知らない人がいない男の自信があふれている。この男、要チェック。絶対にシドニー、いや豪州だけでは収まらない器だ。

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。タカのつぶやき「日豪戦取材でシドニーに4日ほど滞在した。試合周辺の雑感はウェブ版のルポに詳しいが、とにもかくにも豪州フットボールに関して、何かと『気付き』の多い滞在となった。危機感であり、将来への期待であったり……。感じたことは、少しずつでも書き表していきたい」





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