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偉大なるリーの引退/QLDバレエ団 合々香と弘平のグランパドトゥ 第27回

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『マノン』で筆者(写真右)がリー(同左)と共演した時の写真。主役のマノン役は当コラムを隔月で担当する吉田合々香(同中央)(Photo: David Kelly)

 この度、私たちQLDバレエ団(QB)が誇る芸術監督のリー・ツンシン(Li Cunxin)が2023年12月末をもって退任することになりました。

 12年7月に芸術監督に就任したリーは、10年以上の長きにわたりカンパニーのために最善を尽くしてきました。QBの公演に訪れた際、客席で彼を見掛けたという人も多いでしょう。リーは客席から公演を見て、その都度、気付いたことをダンサーにアドバイスやフィードバックをしてくれていました。

 そんな彼のことを、映画『Mao’s Last Dancer(邦題:小さな村の小さなダンサー)』を通じて知ったという人が多いのではないでしょうか。彼は中国の片田舎の貧しい農家に生まれ、バレエとは何かも知らないまま、学校を訪れたバレエ学校の視察団にその身体能力の高さを見いだされ、バレエ学校に入学。そして、長いバレエのキャリアをスタートさせました。それから先の彼の波瀾万丈のキャリアについては、ネタバレになってしまうので、ぜひ、映画または原作をご覧ください。

 リーのバレエに対する情熱はバレエとの運命的な出合いで沸々と湧き出てきて以来、今なお収まることはありません。その情熱は、僕らダンサーにも確実に受け継がれ、彼の理想のバレエ団としての現在のQBの姿に反映されています。

 数年前、芸術監督の続行を決めていたリーですが、今年に入ってから体調があまり優れず、健康面を考慮して退任を決めました。

 彼が就任した当時、ダンサーが30人にも満たなかったQBは、今や60人ものダンサーを抱え、世界的に有名で大掛かりな超大作を公演できるバレエ団に育ちました。自らの理想とするバレエ団を作り上げるという夢を実現させた彼は、本当に偉大だと思います。

 個人的には、同じアジア人としてとても尊敬できるだけでなく、その仕事に対する姿勢、バレエへの真摯な取り組み、そして人生の価値観など、多く学ぶところがあります。それらを常に行動で身をもって示してくれる、彼のようなすばらしい監督の下で働けたことをとても誇りに思っています。

 まだまだ尊敬するリーのことを書き足りないので、次回のコラムも引き続き彼について書きたいと思います。

このコラムの著者

岩本弘平/QLDバレエ団シニア・ソリスト

兵庫県伊丹市出身。11歳からバレエを始め、18歳でメルボルンのオーストラリアン・バレエ・スクールに入学。その後、ロイヤルNZバレエ団を経て、2018年にQLDバレエ団に移籍。趣味はウクレレ、スポーツ観戦、睡眠、日本のお笑い。祖母の手作り水餃子の味を懐かしみながら、大好きなウィスキーのグラスを傾ける。

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