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映画『Mao’s Last Dancer』で世界中に名を轟かせた恩師リーとの出会い①/QLDバレエ団 合々香と弘平のグランパドトゥ 第30回

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2022年『マノン』の公演にて、タイトル・ロールを演じる筆者とムッシュGM役を演じるリー・ツンシン(© David Kelly)

 皆さん、こんにちは。QLDバレエ団の吉田合々香です。

 今回は、弘平さんが担当しているコラム(第27回)で既に書かれている通り、今年いっぱいで同団の芸術監督を引退するリー・ツンシンと、私の出会いについてお話ししたいと思います。

 元スター・ダンサーであり、自身のドラマチックな人生が描かれた映画『Mao’s Last Dancer』で、バレエ界のみならず世界中にその名を轟かせたリーとの出会いは11年前にさかのぼります。

 2013年1月、当時私は留学4年目のバレエ学生としてパリ国立高等音楽・舞踊学校に通っていました。卒業する年ということもあり、就職活動を兼ねて若いダンサーの登竜門と呼ばれる「ローザンヌ国際バレエ・コンクール」に出場しました。

 それは歴史と権威のあるコンクールで、毎年、世界中からビデオ審査を勝ち抜いた若く将来性のあるバレエ学生がスイスのローザンヌの地に集まり、1週間にわたる厳正な審査が行われます。審査員は毎年顔ぶれが異なり、バレエ界ですばらしいキャリアを誇る世界的なスターが多く招かれます。13年にリーも審査員の1人としてローザンヌの地に招かれていました。他にも、熊川哲也氏を始め、ニーナ・アナニアシヴィリ、タマラ・ロホなどバレエ界では知らない人はいないほどの大スターが顔をそろえていました。





 コンクールでは、舞台での演技だけでなく、1週間のレッスンやリハーサルの様子までもが審査対象になります。バレエ人生を左右する自分の全てを賭けた1週間。目を見張るほど美しく才能あるライバルに囲まれる中で、自分の力を最大限に発揮するために全身全霊で臨んでいました。

 スタジオの一番前の長いテーブルにずらっと並ぶ、真剣な表情の審査員の方々が目に入ると緊張感は更に高まります。その中で印象的だったのが、居並ぶ審査員の中でただ1人、常に笑顔を絶やさず私たちを眺めていた審査員の姿でした。初日が終わって夕食時に、母に「とても優しい笑顔で見てくださる審査員の先生が1人いて、緊張がほぐれたんだ」と話したことを今でも覚えています。

 そう、その人こそが、私のバレエ人生に大きな影響を与えることになるリー・ツンシンだったのです。

 次回に続きます、どうぞ、お楽しみに!

このコラムの著者

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吉田合々香(よしだねねか)/QLDバレエ団プリンシパル・アーティスト

金沢市出身。欧州に4年間留学後、2014年QLDバレエ入団のためにブリスベンに移住。平日はバレエ漬け、週末はお菓子作りや居心地の良いカフェでの時間を楽しむ。リラックス方法はおいしい和食を食べ、お風呂に浸かり、アロマを焚いてぐっすり眠ること。好きな映画は『ジュリエットからの手紙』。





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