富豪のファンドから巨額の政治献金

オーストラリア公共放送ABCの調査によると、温室効果ガス削減策の強化を掲げる保守系無所属のグループ「ティール」の候補に、民間の気候変動対策ファンド「クライメット200」から巨額の選挙資金が流れていることが分かった。献金額は1人当たり最多で54万6,000豪ドル(約5,000万円)に達している(グラフ参照)。
また、政治献金全体に占めるクライメット200の割合は、下院の西オーストラリア州ムーア選挙区のネイサン・バートン候補(新人)の74.6%を筆頭に50%を超える候補が4人いるなど、同ファンドへの依存度が高い候補が多いことが明らかになった。
ABCは、クライメット200が資金提供を公表している35人の候補者を対象に同ファンドからの政治献金について質問状を送り、半数を超える19人から金額について回答を得た。残りの16人は情報提供を拒否または返答しなかったため、資金の流れの全容は分かっていない。
議会で影響力強める可能性も
オーストラリアでは、企業の政治献金は違法ではない。ただ、クライメット200は、風力発電など再生可能エネルギー事業を手掛ける富豪のサイモン・ホームズ・ア・コート氏が運営しており、資金の流れの「見える化」が求められている。
クライメット200は、前々回の2019年連邦選挙以降、脱炭素に積極的な無所属候補に資金を提供してきた。ティールは前回の22年選挙では下院10議席、上院1議席の合計11議席を獲得して躍進した。
5月3日投票の今回の選挙では、二大政党の支持率がともに低迷していることから、ティールや左派の環境保護政党「グリーンズ」(緑の党)などの少数勢力が「台風の目」となる可能性がある。与党が過半数を割れば議会運営の主導権を握り、ホームズ・ア・コート氏が政治的影響力を高めるかもしれない。
「どの業界も献金の透明性が必要」と専門家
現行の選挙法制では、候補者は1万6,900豪ドル以上の政治献金について、選挙後に公表しなければならない。今年2月に成立した新しい法律(来年施行)では規制が強化され、公表の下限が5,000豪ドルに引き下げられる。加えて、献金から7日以内、選挙期間中に公表することが義務付けられる。
メルボルン大法学部のジュー・チェン・タム教授はABCに「特に、政党や候補者が唯一または限られた資金源に依存している場合、腐敗や不適切な影響力が生じやすくなる。それは、クライメット200も、主要政党が頼りにしている化石燃料関連の産業や金融業界も同じことだ」と述べ、透明性が必要だと指摘した。
モナシュ大で政治科学の講師を務めるザラ・ガザリアン氏は、政治資金をリアルタイムで公表できるようになれば「透明性を高め、候補者にどんな資金がどこから流れているかを(投票前に)有権者が監視できるようになる」と語った。
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