2024年は大台の2,700万人超えも、年間1.65%増にとどまる

オーストラリアの人口が、暦年で初めて2,700万人の大台を超えた。オーストラリア統計局(ABS)が19日発表した人口統計によると、2024年12月末時点の全人口は2,740万13人となった。前年同月末から44万5,900人増えた。ただ、年間の増加率は1.65%と前年同月末の2.41%から大きく減速した。
オーストラリアは近年、移住者の受け入れを背景におおむね3年当たり100万人のペースで人口を増やしてきた。しかし、人口増加率は2021年3月末に前年比0.1%増と急ブレーキがかかった。新型コロナウイルス感染拡大で外国人が国外に流出するとともに、新たな移住者(永住目的の外国人だけではなく、企業駐在員や留学生などの長期滞在者を含む)の流入が完全にストップしたからだ。
その後、経済再開にともなって移民の流入が再び増えたため、23年9月末には近年で最大の2.53%まで急上昇した。ところが、24年の初めからは下落に転じ、1%台のコロナ前の水準まで戻った。

その背景には、連邦政府が23年末以降、外国人留学生のビザ発給を厳格化するなど、移住者の受け入れ抑制に舵を切ったことがある。コロナ禍の反動で移住者が急増したため、住宅の供給が需要に追いつかず、社会問題となったためだ。都市部では、留学生などの外国人だけではなく、現地住民も住まいを見つけるのが難しいという「住宅危機」が顕在化した。移住者の急増が激しいインフレに油を注いだとの指摘も、受け入れ抑制に追い風を吹かせた。
人口増加の内訳を見ると、政府の規制が移住者の流入減に結びついたことは明らかだ。移住者の純増数(国内に流入した移住者数から国外へ転出した移住者数を引いた数)は、23年9月末に年間55万5,798人で頭打ちとなり、24年12月末には同34万750人まで減少した。
一方、国内の自然増(出生者数から死亡者数を引いた数)は、23年9月末時点で年間10万7,420人、24年12月末に同10万5,174人とほとんど変わっていない。
住宅問題への関心は高く、5月の連邦選挙でも主な争点の1つとなった。労働党政権は、購入しやすい適正な価格の住宅建設を進めているが簡単ではなく、達成できても長い時間がかかる。当面は移住者受け入れを抑制せざるを得ない状況が続きそうだ。
■ソース
Australia’s population grew by 1.7per cent, Media Release(ABS)