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昼は夜を侵略したのか、それとも夜が昼を侵略したのか?「ルイーズ・ブルジョワ展」/NSW州立美術館ボランティア・ガイド便り

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執筆者=チョーカー和子(NSW州立美術館日本語ボランティア・ガイド)

Louise Bourgeois, 1990 © Yann Charbonnier

 巨大な蜘蛛の彫刻「Maman」が州立美術館南館の前庭で皆様をお出迎え。高さ9メートル、ブロンズ製で重さ11トンもあるこの作品は、ブルジョワが母親への愛情を表現したものだ。節くれだった長い脚の間から見上げると、お腹には大理石の白い丸い卵が20個入っている。この大きな蜘蛛は1999年、ブルジョワが88歳の時の作品である。

 ブルジョワは1911年にパリでタペストリーの修復工房を営む裕福な両親の元に生まれた。結婚してニューヨークに拠点を移し、98歳で亡くなる数日前までアート制作を続け、次世代のアーティストたちに多大な影響を与えたコンテンポラリー・アーティストだ。彼女の創作活動は少女時代に受けた心の傷を癒すための行為であったという。

Installation of Louise Bourgeois ‘Maman’ at the Art Gallery of New South Wales, November 2023, photo © The Easton Foundation/Art Gallery of New South Wales, Felicity Jenkins

 北館地下2階の「昼」のギャラリーでご覧頂きたいのが17体の彫刻「ペルソナージュ」。つらい思い出の詰まったパリからニューヨークへ移り住んだブルジョワはホームシックに陥った。等身大で抽象的でどことなく擬人化されたこれらの彫刻はブルジョワと夫、3人の息子、フランスに残してきた友人や家族を表していると言われている。その形は縫い針や織物に使うシャトルなどタペストリーの修復に使う道具のように見える。

 ブルジョワはこれらの彫刻を設置する場所にこだわったという。インスタレーション・アートが注目される20年も前に没入型の展示方法を用いて、自身と他人との距離、緊張感などを表したブルジョワの気持ちを全身で感じてみて欲しい。

 無意識の世界を表現する「夜」の暗いタンク・ギャラリーの片隅では彼女の自画像だという男性器を持った5本足の雌猫を見つけることができるかもしれない。ブルジョワの不可思議な美、突き刺すような感情的パワーを持つ芸術!そんな見応えあるこの展覧会をお見逃しのないように。

Installation view of the ‘Louise Bourgeois: Has the Day Invaded the Night or Has the Night Invaded the Day?’ exhibition, 25 November 2023 – 28 April 2024, at the Art Gallery of New South Wales, photo © The Easton Foundation/Art Gallery of New South Wales, Felicity Jenkins

 本展覧会は、オーストラリアにおける女性アーティストの展覧会としては最大規模で、北館地下2階で「昼」、地下4階のタンク・ギャラリーでは「夜」を、2フロアに分けて展示している。

ブルジョワ展の日本語ツアー・ガイドは、3月10・17・24・31日、4月7・14・21日の日曜日午前11時から。

■Web: www.artgallery.nsw.gov.au/whats-on/events/japanese-guided-tour-louise-bourgeois  

常設展の日本語ツアー・ガイドは、南館は毎週金曜日の午前11時から、北館は毎週日曜日の午後1時から。

Art Gallery of NSW

ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館。常設展入場無料。本連載は美術館の日本語ボランティア・ガイドが担当。「件名:Japanese Tour」でEメールによる日本語による問い合わせ可。
Webwww.artgallery.nsw.gov.au
Email: volunteerg@ag.nsw.gov.au



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