オーストラリア版流行語大賞 !? 2024年は「enshittification(エンシティフィケイション)」/オーストラリア弁(新方言)を探せ 第33回

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 オーストラリアのマッコーリー辞書が、2024年の言葉を発表した。今年の言葉に選ばれたのは「enshittification(エンシティフィケイション)」。製品やサービス、特にオンライン・プラットフォームが、始めは良かったもののだんだん利益を追求する姿勢が強くなっていき、質が低下する様子を表す新語だ。

 ガーディアン紙はこの言葉が生まれた背景として、X(旧:ツイッター)ではポスト真実時代の疑似科学や陰謀論が氾濫(はんらん)するようになっていったり、フェイスブックが友人たちとのつながりよりも某ショッピング・サイトの製品を見せることを重要視するようになっていったり、インスタグラムも理解不能なアルゴリズムでバズっている投稿を見せることが多くなってきていると指摘する。

 そのままではただの下品な意味になってしまうSワードに、接頭辞と接尾辞をくっ付けて包み込むことで少し上品な印象を持たせつつ、劣化し変化していく意味をも含ませるという、なかなか興味深い言葉の生成方法だ。

 またコロナ禍以降、オーストラリア社会ではリモート勤務が多くなり、仕事と私生活の境界線があいまいになっている人が多く、従業員が勤務時間外に仕事に関する連絡を拒否する権利を保障する法律ができた。この法律「right to disconnect(ライト・トゥ・ディスコネクト)」も今年の言葉としてノミネートされている。

 もともとはセクシュアルな意味で使われていた「rawdogging(ロウドギング)」も、今年はスマホやPCなどのデバイス、本や雑誌もない状態で長時間フライトを乗り切るチャレンジを意味する言葉として流行し、ノミネートされた。

 一般の人びとが選ぶピープルズ・チョイスにも、先述の「enshittification」が選ばれた。次点にはSNS上で長時間閲覧され、知的刺激の少ない質の低いコンテンツを意味する「brainrot(ブレインロット)」、また他者との関わりや環境によって消耗したりチャージされたりする、社交的なエネルギーを意味する「social battery(ソーシャル・バッテリー)」も選ばれた。

プロフィル

ランス陽子

フォトグラファー/ライター、博士(美術)。現在、グリフィス大学の大学院でオーストラリアの日本人コミュニティーにおける日本語変種を研究中。ゴールドコーストでの調査を手始めに、今後はオーストラリア各地での調査を予定している。在豪日本人が使用している面白い言葉についての情報を募集中。情報やメッセージはFBコメント欄かFBメッセージまで。「オーストラリア弁を探せ!プロジェクト」
(Web:www.facebook.com/JapaneseVariationInAUS

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