
シドニー・サリーヒルズにある「Golden Age Cinema & Bar」で9月2日、ドキュメンタリー作品『Bridging Worlds』の特別試写会が行われた。会場には旅行業界関係者やインフルエンサーらが多数来場し、上映前にはトーク・セッションが実施された。登壇したのは、本作に出演したdoq®代表・作野善教氏、ゲスト出演した星野リゾート代表取締役社長・星野佳路氏、そして監督を務めたMSQUARE PRODUCTIONSマネージング・ディレクターのマイケル・クリスチャン・グリーン氏だ。
(取材・文=櫻木恵理)
doq®はシドニーに拠点を置くクロス・カルチャー·マーケティング会社。作野氏が「細かい打ち合わせよりも情熱が作品を作った」と語る本作は、長年海外で暮らしてきた同氏が日本を訪れ、星野氏と共に軽井沢、東京、トマムと舞台を移しながら、日本文化を再発見していく過程を描いた作品だ。星野リゾートの地域に根差し、伝統を守りながら新しい旅行体験を創出する様子が星野氏自身から語られることで、自身のルーツを見つめ直し、「文化を次世代へどうつなぐか」という普遍的なテーマが浮かび上がる。
111年の歴史を持つ星野リゾート継承者4代目の星野氏は、現在国内外に72の宿泊施設を展開し、日本文化の伝統を守りつつ革新的な要素を取り入れることで、地域の魅力を再発見できる場を提供している。トーク・セッションでは、地元食材やライフスタイルを通じ、その土地に訪れる理由を生み出すことに注力していると語った。また、競争の激しい観光業界で生き残るために、まだ誰も注目していなかったころから知名度の低い地域に宿泊施設を展開し、予約のオンライン化にもいち早く着手してきたという。
監督のグリーン氏は、異なる文化圏での撮影を通じて「急速に変化する現代だからこそ、次世代に伝えたい遺産とは何かを問い直す作品になった」と話す。よりリアルなドキュメンタリー性を出すための日本語での自然なやり取りと、作品としてのクオリティーを維持することの間に言語の壁はあったが、だからこそ創造的で価値ある作品になったと振り返った。

トーク・セッションの最後に3人は『Bridging Worlds』をひと言で表現して欲しいとの問いに、グリーン氏は「Connection(つながり)」、作野氏は「Harmony(調和)」、星野氏は「Trust(信頼)」と答え、会場は大きな拍手に包まれた。
その後上映された映像を実際に見た私自身も、日本の自然の美しさや文化継承の大切さが強く印象に残った。伝統を守りながらも現在の旅行者ニーズに合わせる星野リゾートの姿勢が紹介され、観客も一緒にラグジュアリーな旅行気分を味わえるような時間だった。