QLD州を背負って新設のチャンピオンシップを戦うサムライ・フットボーラー“三銃士”/日豪フットボール新時代 第160回 

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3人そろってクラブのリーグ優勝に貢献した。ファイナルでは苦杯を舐めたが、リーグ優勝のタイトルを獲たことでチャンピオンシップ参戦が叶った(Photo:Yusuke Seki)

 今年10月に始まったオーストラリア・チャンピオンシップ。当初は、オーストラリア国内に正規の2部リーグを創設することを目指したが、紆余曲折を経て開催にこぎ着けた初年度の現状は、到底“リーグ戦”と呼べない形式での実施となった。

 それでも、横浜FM、川崎FなどJ1の第一線でプレーしてきた山村和也が参戦したことも手伝い、一部の日本メディアではこの大会をして“オーストラリア2部”なのかとする表現が散見される。ここで明確にそのことを否定しておかねばならない。現時点では、あくまでも豪州各州・地域のトップ・リーグNPL(州1部・オーストラリア2部相当)のシーズン後の別大会という位置付けにとどまっている。

 NSW州とVIC州という伝統的にフットボールが盛んな2つの州の8つのファンデーション・クラブに前述の各地のNPL覇者8クラブを加えた16チームが4グループに分かれ、まずは総当たり。その後、各グループ上位2チーム計8チームでの決勝トーナメントで王者を決めるという形式で行われている。当稿締切時は、決勝トーナメントが順調に消化され決勝の顔ぶれが決まったところだ。

 筆者が追うQLD州からの唯一の参加したのが今季のNPL QLDを制したモートン・シティ・エクセシオール(MCE)。今季のMCEの攻撃を支えたのは、いずれもJリーグでのプレー経験がある3人の日本人アタッカー。昨年までJ2水戸でプレーしていた高岸憲伸(たかぎし けんしん、26)、QLD州内で個人昇格を果たして今季が2年目の村井清太(むらい せいた、25)、NPL内で移籍をしてきた小島圭巽(こじま けいたつ、24)と、それぞれが個性を発揮してクラブの攻撃陣をリードしてきた。

 この3人の献身的な働きに支えられたクラブは、初参戦のチャンピオンシップでも躍動。グループ・リーグ最後の2試合は打ち合いとなり、最終盤に追いつく粘り強さで勝点を積み上げ、6戦2勝2分2敗の勝ち点8で2位に滑り込んだ。準々決勝で強豪アヴォンデールをアウェイで3-0で破って臨んだ準決勝では、NSWの雄マルコーニ・スタリオンズに0-1で苦杯を舐めた。

 11月8日のシド二ー・オリンピック戦で右足を負傷した高岸は無念の途中離脱となったが、今大会5得点の村井、同3得点の小島の両人は決勝トーナメントで他州の強豪相手にその実力をして大いに存在感を発揮してみせた。

 NSW州、VIC州に偏った大会を”QLD州代表”としての矜持(きょうじ)を胸に戦い、鮮烈な印象を残して準決勝に散ったMCE。彼らの奮闘を讃え、掛け替えのない主力としてシーズンを通じて活躍した”三銃士”を心から誇りに思う。

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。タカの呟き「Aリーグ25/26シーズンが開幕した。過去最多の10人がプレーした昨季からはその半分になったが、今年も5人の日本人選手がプレーする。その5人の共通点は全員がJ1経験者で、更にその内の3人は日本代表経験者。ある程度の経験と実績を持つ選手がキャリア転換期に移籍してくるのがAリーグなのだ」





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