②ガチで効果あるの? オーストラリアで世界初、16歳以下のSNSアカウントBAN!

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本当に子どもたちを守れるの? それとも天下の「ザル法」?

(Photo: Christopher Ryan on Unsplash)

 オーストラリアで16歳未満の子どもがソーシャルメディア(SNS)のアカウントを持つことを禁止し、「合理的な措置」を怠った運営企業に最大4,950万豪ドル(約51億2,500万円)の罰金を課す「2024年オンライン安全改正法(ソーシャルメディア最低年齢)」。対象となる既存アカウントは段階的に廃止されているようだが、「まだ普通に使えている」との声も聞かれる。では、既存アカウントがBANされた場合、年齢を偽って新規アカウントを作成することは可能なのか。検証してみた。(ジャーナリスト・守屋太郎)

「①今さら使うなと言われても オーストラリアで世界初、16歳未満のSNSアカウントBAN!」から続く

*注:SNSは日本独自の和製英語。オーストラリアなど英語圏での正しい呼称は「ソーシャルメディア」だ。「SNS」と言っても通じないばかりか、発音が似ている「SMS」(ショートメッセージサービス=テキストメッセージ)と勘違いされる可能性が高い。

*記者注:本記事は報道目的の検証を試みたものであり、各社の利用規約に反する偽アカウントの開設や、16歳未満の子どもの違法なソーシャルメディア利用を助長するものではありません。

年齢確認は自己申告なの?

「うちの子にはまだ外でスマホを持たせていません。家の中では母親が以前使っていた古いスマホで、友だちとメッセージを送受信したり、リビングルームのテレビでユーチューブを見たりしています」。10代前半の子どもを持つシドニー在住の日本人男性はこう話す。

 現状は親が管理できる自宅のワイファイ内で利用しているため、問題なさそうだという。ただ、もうすぐ自分のスマホを持つ年齢になる。その時、親としてどう対応するべきかを思慮している。

 世界初の新法をめぐり、賛否は分かれている。バーチャル空間でのいじめや依存症、性犯罪の危険から子どもを守るとして、親世代の評価はおおむね高い。その一方で「うちの子が仲間から取り残される」、「引きこもりや性的マイノリティーなどの弱者が社会から孤立する」といった否定的な意見も聞かれる。

 10日の施行から4日が経過した現時点では、親や年長者の協力を得て新規アカウントを開設したり、海外サーバー経由の「バーチャル・プライベート・ネットワーク」(VPN)を介して利用したりといった「抜け道」も指摘されている。

 そもそも、政府発行のデジタルIDによる認証は想定していない。運営企業がどれだけ厳格に年齢確認を行えるのかは疑問だ。そこで、規制対象となったソーシャルメディアのうちフェイスブック、インスタグラム、ティックトックの3つについて、アカウントの新規開設に伴う年齢確認を実際に調べた。ブラウザはグーグルのクローム(Chrome)を使い、履歴が残らないシークレットウインドウでアクセスした。

偽アカ開設は簡単にできる!?

 フェイスブックは、記者の既存アカウントからログアウトした後、16歳以上の年齢を入力して、新規アカウントのサインインを試みた。だが、連絡先のメールアドレスが同じだったためか、終了ボタンを押すと強制的に既存アカウントに誘導されてしまった。

 年齢確認の問題以前に、フェイスブックは複数アカウントの利用を禁止している。複数アカウントを見破られて、新規アカウント開設に失敗したようだ。ほとんど使っていないとはいえ、既存アカウントは削除したくないと考え、それ以上の検証は諦めた。

 一方、フェイスブックと同じく米メタが運営しているインスタグラムはどうか。記者の既存アカウントからログアウトした後、サインアップ画面に進んだ。年齢確認画面(画像1)には「誕生日の入力が必要な理由」というボタンを押すと「誕生日が必要な理由」(画像2)の画面が出てくる。さらに「詳しくはこちら」というボタンを押すとインスタグラムの「データに関するポリシー」というページが出てくる。ところが、ここにはオーストラリアの特定の法律に関する具体的な記述は一切、確認できなかった。

画像1:インスタグラムの誕生日入力画面
画像2

 登録画面に戻り、16歳以上の生年月日を入力すると、それ以上、詳しく聞かれることもなく、あっさりと新規アカウントを開設できた。

 また、ティックトックはアカウントを持っていないので、最初から新規登録を試みた。登録画面(画像3)で16歳以上であることを示す誕生日と連絡先のメールアドレスまたは携帯電話番号を入力。送られてきた認証コードを入力すると、数分で簡単に新規アカウントを開設できた。

画像3:ティックトックの新規アカウント登録画面

 法律施行からまもない現時点では、政府や運営企業の対応はまだ移行期間と見られ、今後どうなるかは分からない。また、ソーシャルメディアによって登録や認証の方法が異なるので一概には言えない。ただ、今回試したインスタグラムとティックトックに限って言えば、生年月日の自己申告だけでアカウントを作成することが可能で、16歳未満のユーザーを技術的に排除する仕組みはないことが実証できた。

 新法は運営企業に「合理的な措置」を義務付けており、既に投稿されたコンテンツや写真から16歳未満と判断してアカウントBANを行っていくと見られる。しかし、少なくとも新規アカウント開設という「入り口」の部分では、年齢確認は自己申告に依存しており、実効性には限界があると言えそうだ。同様の法律施行を目指す世界各国が、その成否を注視している。

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