日本人フットボーラーが描く第2の人生、日本流清掃ビジネスで後進の受け皿に/日豪フットボール新時代 第161回

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日本人選手間でも頼られる兄貴分的存在はピッチ上でも頼れる存在として活躍を続ける(Photo: 本人提供)

 昨今、来豪してフットボールをプレーする日本人選手が増えている。そのうちの一定数は、この国での永住を目指し、現役引退後のキャリアを視野に入れてチャレンジしており、その数だけさまざまな人間模様が繰り広げられている。

 笠原悠太(31)は、まさにその典型として取り上げるに値する。2018年に来豪以来、QLD州セミプロ・リーグで7季にわたりプレー、NPLの強豪ライオンズFCでグランド・ファイナル制覇も経験するなど実績も十分。7年目のシーズンはタリンガ・ローバーズ(FQPL 2/QLD州3部)でプレー、来季の現役続行も決めている。

 笠原とは面識はあるものの、これまであまり深い接点を持ってきたわけではない。ただ、折に触れて顔を合わした時にはきちんとあいさつができて、自分の言葉で話せる笠原には「しっかりしてるな」と好印象を持っていた。ある選手によれば、コロナ禍で帰国者が続出する中であえてこの国に残る決断をした日本人選手たちの交流のハブになっていたのが笠原だったという。その見た目からして侠(おとこ)気がありそうだが、実物もまさにそのままの人間性なのだ。

 そんな彼と久々に再開した折、これまでの永住権獲得の道のりでのさまざまな苦労を聞いた。諦めずに挑戦し続けて、今は夢が叶うのをはっきり見通せるところまでたどり着いたようだ。それだけではない。「実は、清掃業のビジネスを立ち上げまして」と言うではないか。その清掃業では、日本人特有のきめ細かい作業とクオリティーで大いに好評を博し、目の前の顧客に自分の仕事で心底喜んでもらえることが大きなやりがいになっていると言う。

 しかし、己のビジネスの成長を喜ぶだけの笠原ではない。「将来的には、オーストラリアで働きながらフットボールをする若い選手に仕事を紹介できる規模に事業を成長させたい」と自らの後に続く若い選手たちのセカンド・キャリアの受け皿になるというしっかりとしたビジョンも持っている。

 7年の生活を振り返って、「英語力、人間力、自己発信力の3つの力は自分の大きな財産」と自ら胸を張る。彼が清掃業に従事する時のユニフォームの黒いシャツの背には赤い達磨(だるま)が大きくあしらわれている。忍耐の人・達磨大師のように、愛するパートナーと二人三脚で耐え抜いた7年間は、若きフットボーラーを大きく成長させた。

 日本人同士なので英語力はジャッジできないが、彼には人間力と自己発信力が高い水準で備わっているので、セカンド・キャリアも必ずやり遂げるはず。応援しよう。

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。タカの呟き「来年のW杯の組み合わせが決まった。日本はオランダ、チュニジア、欧州プレーオフ勝者と同組。プレーオフでどの国が勝ち上がってきても強豪ぞろい。楽な相手ではない。監督は優勝を目指すつもりらしいが、まずは悲願のベスト8を目指して、1つひとつ大事に戦っていって欲しい」





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