
オーストラリア東海岸を縦断する同国初の高速鉄道建設が、従来の構想段階から計画案のフェーズへとやっと進み始めた。ただ、連邦政府が2年後をめどに着工を検討するニューカッスル・シドニー間は、全体構想の1割にも満たない。史上最大級の国家プロジェクトとなる全ルート開業は、仮に実現したとしても今世紀後半と見られ、まさに「国家百年の計」となりそうだ。それでも、高い安全性と高頻度の定時運航で優れた新幹線技術を誇る日本勢にとっては、ビジネスチャンスとなり得る。日豪両国が経済・安保で連携を深める中で、その行方が注目される。(文・構成:守屋太郎)
ポイント
・高速鉄道のメリットは経済成長と生産性向上
・2061年には沿線人口1,000万人規模の都市圏に
・コストや資金調達は「2年間で詰める」(アルバニージー首相)
時速300キロ以上で一度に数百人〜千人以上(日本の新幹線の場合)を大量輸送できる高速鉄道。人口密集地域では、経済成長を促進するメリットが期待できる。利用客1人ひとりの移動時間が飛躍的に短くなる分だけ使える時間が増え、1時間当たりの労働生産性が向上する。人の流れも大きく変わる。大都市と地方都市が点から面でつながり、巨大経済圏を形成する。地域間格差を解消し、地方活性化にもつながる可能性がある。
オーストラリア連邦政府が24日発表した高速鉄道計画案のステージ1、ニューカッスルからシドニーにかけての沿線人口は、2061年に920万人(投資対効果検討書=ビジネスケース)と現在の2倍近くに膨れ上がる見通しだ。高速鉄道が開通すれば、南北約160キロにわたるオセアニア最大のメトロポリス(巨大都市の連続帯)が生まれる。
ニューサウスウェールズ州第2の工業都市ニューカッスルから、瀟洒な海岸町が点在するセントラルコースト、都市圏第3の中核都市として開発が進む西シドニー空港周辺までの一帯が、オーストラリア経済の中心都市シドニーと一体化するのだ。
高速鉄道が沿線住民のライフスタイルを一変させる――。キャサリン・キング連邦インフラ・交通・地方開発・地方政府相は24日、声明で「ニューカッスル・シドニー間の高速鉄道は、わが国で最も人口が集中している地域の人々の暮らしと仕事、旅の形を変革する。ニューカッスル、セントラルコーストの地域社会とシドニーをこれまでにない形で結び付ける」と述べた。
最大の課題は、費用対効果が見込めるかどうかだ。キング氏は「慎重な計画とコスト計算、詳細な準備には時間がかかるが、いったん建設が始まれば、永続して使えるものとなる」と語り、長期的視点から前向きな姿勢を示した。
「経済成長と生産性向上のゲームチェンジャーになる」と首相
アンソニー・アルバニージー首相も同日朝、公共放送ABCラジオのインタビューで次のように語っている。
キャスター:政府はシドニーとニューカッスル間の高速鉄道に追加で2億3,000万ドルを投じて、詳細な計画作業にあてて、2年以内に着工準備を整えると言っているよね。でも、多くの人は高速鉄道の実現時期について懐疑的だと思うよ。基本的な質問に答えてほしいんだ。総工費はいくら?どうやって資金調達するの?建設にどれくらいかかるの?
首相:そのために、私たちが設立した高速鉄道局を通じて、包括的な調査を行っているんだ。1メートル単位の詳細な計画、設計の検討、承認プロセス、規模とコストを精査し、今後2年間でプロジェクトを着工可能な状態に持っていくよ。
ニューカッスルとシドニー間の回廊には、オーストラリアの多くの人口が居住していて、今後も増え続けていく。でも、現在の高速道路と既存の鉄道は正直、時代遅れで、輸送能力はいずれ限界に達する。
これ(高速鉄道建設)は、住宅供給を促進し、数千人の雇用を生み出し、数百億ドル規模の新たな経済活動を創出するよ。私たちはこの作業を進めていく。経済成長と生産性向上にとってゲームチェンジャー(状況を劇的に変革させるもの)になるんだ。
アルバニージー首相は前労働党政権のインフラ・交通相時代から、高速鉄道に積極的に取り組んできた。「インフラ宰相」の異名を持つ首相肝入りの政策は2年後、思惑通り着工に辿り着けるのか。
「オーストラリア版新幹線、実現へ一歩前進したよ! ③雲散霧消くり返した構想の行方は?」に続く
◼️出典資料
Radio interview – ABC AM, Transcript(Prime Minister of Australia)