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静かな心で/花のある生活

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花のある生活 ─ flower in life ─ 第33回
静かな心で

金糸のような竹先が、細く長く上へ上へと伸びています。現代的なガラス花器に縁起の良い大王松、蛇の目松と松づくしでいけています
金糸のような竹先が、細く長く上へ上へと伸びています。現代的なガラス花器に縁起の良い大王松、蛇の目松と松づくしでいけています

 私の心には「いけばなは手習いだから」という恩師の言葉が刻みこまれています。花いけをしていて形が決まらず迷った時には、「何とかしようと思わないと」とも言われました。途方に暮れると両手に花を持ってしまい、焦っていることを見抜かれてしまうこともありました。いけばなは、単に生花をお花器に挿すものではないということですね。

 心が乱れていては花は決して言うことを聞いてくれようとせず、なおさら思うようにはいかなくなります。静かな気持ちと、澄んだ心や目で、花や枝を注意深く扱ってあげる必要があるかと思います。

 そのような注意深いお稽古を繰り返しているうちに、手が馴れて手習いができていき、そのうち心も整ってくるのではないかと思います。

 「花はいけたら人になる」といわれます。草木の中から自分の線を見つけ、植物に自分を写し込みながら心を整えていくこともお稽古の1つだと私は考えています。茶道のお稽古に柄杓(ひしゃく)を構える鏡柄杓という動作があるかと思います。柄杓の合(汲む部分)を鏡のように構える所作もまた、大切なお稽古だと伺っています。ひと昔前、茶道華道が花嫁修行であったことが分からなくもない気がします。

 長い道のりが必要なお稽古事を始めることは、敬遠されてしまうことかもしれませんが、自分の生活の一部に成り得ることを一生学んでいけるのだから、私は素晴らしいお稽古だと思っています。時代や生活と遊離しない形で、そして日常生活の中で、自分のペースを保ち、花と語り合い、自分自身とも語り……。言葉で言うほど簡単なことではありませんが、結果を心配し過ぎないで日本の伝統的なお稽古をたしなんでみることを私はお薦めします。

 今年もまだ始まったばかり、この1年も心丈夫に乗り切っていきたいですね。

このコラムの著者

Yoshimi

Yoshimi

いけばな講師。幼少期より草月流を学ぶ。シンガポールでの華道活動を経て、現在はシドニーでいけばな文化芸術の発展に務める。令和元年には世界遺産オペラ・ハウスで日本伝統芸能祭に出演。華道教室を主宰。オンラインレッスン開催中。
Web: 7elements.me

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