NSW州立美術館 ボランティアガイド便り
「ヒルマ・アフ・クリント:神秘の絵画」展
執筆者=チョーカー和子・ランゲージ・ガイド
国際的な評判を巻き起こしている、非凡なスウェーデンの芸術家、ヒルマ・アフ・クリントの抽象的、神秘的、幻想的なアート100点以上を集めた展覧会が、6月からアジア太平洋地域で初めてNSW州立美術館で開催されます。
展示の中心となるのは「The Ten Largest」。人類発展の4つの段階を探求する活気に満ちた色と不思議な図形が溢れるように配列された、3メートルを超える巨大な作品10点です。
アフ・クリントは1862年にストックホルムに生まれ、王立美術院を優等で卒業。自然主義的な画家として才能を認められました。しかし40代半ばの1906年、芸術家として根本的に異なる道を追求することを選択します。
彼女の作品制作に影響を及ぼしたのは正当な美術教育ではなく神秘主義でした。普段見ることが不可能な霊的存在やそのメッセージをシンボルとして、キャンパスを埋め尽くす野心的な新作を描き始めたのです。巨大で輝くような色彩に溢れた謎めいた空想的なその形は、それまで誰も見たことがないものでした。
1944年に82歳で亡くなり、1300点以上の作品、124冊に及ぶノートを残しましたが、死後少なくとも20年間は作品を公開せず、秘密裏に保管するように遺言を残しています。
当美術館館長のマイケル・ブランドは「アフ・クリント展覧会の開催を光栄に思う。1世紀以上経った今、彼女の絵はようやく注目を集め、彼女は想像力に富む革新的な20世紀の芸術家として然るべき地位を得た」と述べています。
開催場所
NSW州立美術館
オーストラリアの主要な美術館の1つで毎年約100万人が訪れる。オーストラリアとアボリジナル・アート、現代アート、ヨーロッパやアジアからのコレクションを持つ。市内の中心から徒歩約15分のシドニー・ハーバーを臨む立地。日本語を含むアジア言語のボランティア・ガイドもおり、本連載は同館の日本人ガイドが執筆を担当している。