第8回 タスマニア巡り
冬山を楽しむ、マウント・フィールド国立公園
ホバートから車で1時間強、ダーウェント・リバー沿いを北上し、牧場地帯を抜けた先にマウント・フィールド国立公園があります。1916年にフレシネ国立公園と共に設定された州最古のこの国立公園は、1年を通して州内外から多くの人が訪れるタスマニアきっての人気スポット。大小のハイキング・トラックはもちろん、ビジター・センターやキャンプ場なども充実し、老若男女問わず楽しむことができます。
メインは何といっても徒歩30分ほどのラッセル滝サーキット・ウォーク。ナンキョクシダやナンキョクブナ、ササフラスに囲まれた高さ40メートルほどのラッセル滝の景観はすばらしく、特に降水量の多い冬場に真下から眺めるその姿はまさに圧巻の一言。プラットフォームまでは整備されていて車いすや足に自信のない人でもアクセスしやすくなっているのも◎。
公園はマウントというだけあって上下に長く、ビジター・センターやラッセル滝は標高300メートル程度。そこから砂利道を車で30分ほど登ると標高1000メートルのドブソン湖から始まる上部に到着します。数時間から1日の中長距離ハイクがメインの上部には、公園局や山岳クラブの山小屋があり、最高峰マウント・フィールド・ウエスト(1434m)やレイク・ウェブスター・トラックなどを数日掛けて回る人も。800メートルを超えると雪が降りますが、1メートルを超す積雪になることは少なく、下準備さえしっかりしておけば比較的簡単に雪山ハイキングを楽しむことができます。
常緑のパンダニやナンキョクブナの森に積もる雪を見ながら歩くのも幻想的。加えてタスマニアに2つしかないスキー場もあり、実は知る人ぞ知るウインター・スポーツのメッカなのです。そのため冬期中の入場制限はあまりありませんが、そこは変化が激しく先の読めないタスマニアの天候です。冬晴れの5分後には猛吹雪なんてことも当たり前です。入念な下準備と天気予報のチェックで、タスマニアの冬山を楽しみましょう。
このコラムの著者
稲田 正人
タスマニアのツアー・ガイド/コーディネーター。タスマニア大学で動物学・環境学を学んだ後、のんびりゆったりした生活感に魅せられ、そのままタスマニアに在住。現在は現地旅行会社AJPR(Web: www.ajpr.com.au)に勤務する傍ら、多過ぎる趣味に追われる日々を満喫中