福島先生の人生日々勉強
心の罠
自分に向けられた他人の言葉が心に刺さることがありますね。家族であれば腹が立って言い返し、けんかになることもしょっちゅうです。
ここで考えたいことは、どうして腹が立つのかということ。「あんなことを言うから。あの人のせいで私がこんな思いをする。あの人が全部悪い」、これらはよくある普通の反応です。励ますにしても、「大変ね、嫌なことされて。あなたはよく頑張っていると思うよ」となるのが一般的でしょう。それはそれで一旦落ち着く方法ではあるのですが、解決には至りません。
他人や家族の言動に腹が立つというのは、自分の心の中の「何か」に、その言動が障っているということです。「何か」とは、自分にとって危険なもの、怖いもの。しかも、自分では気付いていません。無意識の中に埋まっている地雷のようなものです。その地雷に、他人の言動というきっかけが触れて、心の中の地雷が反応し、着火して爆発するのです。
しかし、地雷がなければ反応は起きません。腹が立ったのは自分の中に地雷があるから。そう考えてみるのがもう1つの心の使い方です。ムカッときたら、「怒らせたあなたが悪い!」と戦争を仕掛ける前に、一呼吸おき、相手に向かいそうになった目線を自分に向けてみてください。「この人の言動が自分の何に障ったのだろう。自分の地雷は何なのだろう」と考えてみるのが、新しい1歩です。相手の言動に白黒付けるのではなく、むかついた自分に幻滅するのでもなく、ただ立ち止まって考えるのです。
感情の元を辿っていくと、心の奥に「傷」があり、無力感や罪悪感など、自己否定で塗りつぶされた「闇」があります。「できない。足りない。価値がない。大切にされない。愛されない」、読むだけで気が滅入りそうですね。こんなにも私たちは「ダメ」が嫌いで、自己否定の感情が引き出されること、それに直面させられることをひどく怖れているのです。
他人から指摘を受けると自衛本能が働き、相手を威嚇(いかく)して自分を守ろうとします。その度に戦争をしたいですか? また他の誰かがあなたの地雷を踏むだけです。職場を変えてもパートナーを替えても、心に爆弾を抱えている限り同じです。ここは1つ、視点を変え、爆発しそうになったら一呼吸おき、コツコツと根気よく、「自己否定」という巧妙な心の罠を解いていきましょう。その言動は自分の何に障ったのだろうかと、問い掛ける習慣を続けるだけでも、確実にストレスは減っていきます。自分と向き合い、優しくすること。戦争は必要ありません。
このコラムの著者
教育専門家 福島 摂子
教育相談及び、海外帰国子女指導を主に手掛ける。1992年に来豪。社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命とした私塾『福島塾』を開き、シドニーを中心に指導を行う。2005年より拠点を日本へ移し、広く国内外の教育指導を行い、オーストラリア在住者への情報提供やカウンセリング指導も継続中。