書家れんのつきいち年中行事
第158回 いどり祭
北陸道に属する石川県能登の歴史は古く、4世紀には大和政権の支配が及んでいました。有名な輪島塗は室町時代に始まり、今と同様の工程が確立したのは江戸中期の享保のころだそうです。余談ですが、享保の改革を将軍吉宗と共に遂行した大岡忠相は“越前守”の前には“能登守”でした。
さて、その能登町鵜川の菅原神社では毎年11月1~8日に県の無形民俗文化財「いどり祭」が開催されます。「いどる」は「けなす」の方言で、つまりは「けなし祭」。奉納餅の出来栄えの悪口を言うことでその年の五穀豊穣に感謝し、翌年の豊作を願うという非常に奇妙なお祭りです。
6地区12組の内、毎年交替で2組が当番になって、男子のみで作った直径1.2メートルもある大鏡餅2枚と、丸型小餅約60個、トウシ餅16枚を神前に供し、翌年の当番を陪賓としてもてなします。普通もてなされた方はお礼を言うところですが、信じられないことにこの時、陪賓たちは鏡餅やお膳の餅などについて「シワだらけだ」「ヒビだらけで酷い」などと難癖を付ける、即ち“いどる”のです。するとこれに対して「餅には粘りがある」「艶がある」などと当番側が反論します。そしてこの両者の口論を収めるのに神主が登場し仲裁に入る、というのが流れになります。
これらの段取りの仕組は戦国時代の1534(天文3)年に整えられ、今に続くそうです。1534年と言えば織田信長の生まれた年ですね。
このコラムの著者
れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。作品“ふるさと”が国有財産として在豪日本国大使館蔵。豪・日・ドバイ・NZで作品展、大書ライブ、workshop多数。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に参加。シドニー総領事表彰。元号“令和” (総領事館蔵)、日立豪 “協創”揮毫。豪五輪委員会で応援大書。書道教室。LINE stamp販売中。
Web: renclub.net / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub