福島先生の人生日々勉強
感情の扱い方
朝、眠たくて起きたくない時に、家族に起こしてもらっておきながら悪態をついてしまったことはありませんか。日中はどうってことないようなことでも、朝にまだ寝足りないような時にはものすごくイライラして相手を恨んでしまうほど腹を立てたりしますよね。夜、疲れてきた時にも同じようなことが起こりがちです。
私たちは心に余裕のある時には寛容で相手に優しさを示すことができますが、そうでない時にはほんのささいなことで怒ったり、泣いたりしてしまいます。なぜなら、初めに沸き立つ感情は自分の意志でコントロールできるものではないからです。最初の感情は自然と生じる感覚と直結した「反応」に過ぎません。うっかり指を切れば血が出ますし、痛いですよね。それと同じです。眠くてまだ寝ていたい時に親にたたき起こされて怒るというのは、起こされた本人からしてみれば「泣き面に蜂」なわけです。
不機嫌をまき散らしていると家族に嫌な思いをさせてしまいますし、これが外の社会であれば、嫌われて仕事もおぼつかなくなるかもしれません。しかし、私たちの脳には防御本能が備わっていて、怒りや悲しみ、不安や恐怖を感じることによって危険から身を守るようにできています。だからこそ、今日まで生きてこられているのですが、反面、このネガティブな思考回路が人との摩擦を生んでしまうのです。そして、それを打ち消すためにコントロールしようとしてしまい、最終的には、「どうして私はこんなことくらいで怒ってしまうのか」と自分を責めてしまいます。この自責の念は悲しいことに、相手に怒りをぶつけたり、相手を責めたりと、ろくな方向に向かいません。なぜなら、その行為さえも自己防衛の結果だからです。こうして、負の連鎖は相手を巻き込みながら大きくなっていき、どん底を味わうことになっていまいます。
これを避けるためには、感情を自分のものと考えず、遠くから見守って管理するのです。「いま頭に浮かんだ感情は私の心の産物ではない。人体に備わった防御機能が生んだのだ」と。カッとしたら、うっかり言葉の暴力を使ってしまう前に一度冷静にそのことを考えてあげてください。揉め事は大抵、大騒ぎする程のことではありません。ましてや、相手の人格を蔑むような言葉で攻撃する必要もないのです。それは、「防御のための攻撃」という人間に備わった能力の産物です。感情は、真正面から受け止めてコントロールしようとしても反発されるだけです。感情と距離を置き、客観的にマネジメントしてあげればうまくいきます。感情のマネジメントは仕事や芸事と同じ。繰り返し練習していくうちに達人になれますよ。
教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。34年間、教育に携わり、教育カウンセリング・海外帰国子女指導を主に手掛ける。1992年に来豪。シドニーに私塾『福島塾』を開き、社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命として、幼児から大学生までの指導を行う。2005年10月より拠点を日本へ移し、日々活動の幅を広げていく一方で、オーストラリア在住者に対する情報提供やカウンセリング指導も継続中である。