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“味変”の鶏フォーに舌鼓!本場ベトナム料理の宝庫 – Bankstown

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シティから1時間以内で行ける異国
特集 マルチカルチュラル・タウンinシドニー

“味変”の鶏フォーに舌鼓!
本場ベトナム料理の宝庫

Bankstown

少し足を伸ばすだけで海外の食や文化を気軽に体験できる。それは多文化都市シドニーの最大の美点だろう。ベトナム系コミュニティーがある南西郊外のバンクスタウンの一角にも、東南アジアの雑踏の雰囲気を肌で感じられる異空間がある。駅の南側では、野外のベンチで男たちが公然とマージャンに興じる横で、本場ベトナムのストリート・フードや、色鮮やかな熱帯の果物や野菜、珍しい肉や魚を売る商店などがひしめき合っている。(リポート:守屋太郎)

アクセス
Bankstown 2200 NSW
シドニー中心部タウンホール駅から鉄道「T2インナー・ウエスト&レッピントン線」で32分。オパール・カード料金は$3.60(ピーク時$5.15)

1月18日に開かれた旧正月のパレード。ベトナムの民族衣装を来た子どもらがバンクスタウンの中心街チャペル・ロードを練り歩いた
1月18日に開かれた旧正月のパレード。ベトナムの民族衣装を来た子どもらがバンクスタウンの中心街チャペル・ロードを練り歩いた

バンクスタウン駅から南西へ歩く。駅前通りのバンクスタウン・シティ・プラザからチャペル・ロードまでの長さ300メートルほどの通りが、この町のベトナム人コミュニティーの中心街となっている。

「フォー」(ベトナムの米粉麺)を売る店、「バイン・ミー」(英語名「ポーク・ロール」=バゲットにハムや野菜を挟んだベトナム風サンドイッチ)を売るパン屋、色鮮やかな熱帯の果物や野菜を並べたスーパー、珍しい魚介類を売る鮮魚店、精肉店、アジア人向けの小さいサイズの服を売る雑貨店……。間口の小さい、古びた低層の商店が軒を連ねている。

取材日は旧正月を祝う「ルナー・ニュー・イヤー」のイベントが開かれていた。メイン・ストリートは歩行者天国となって多数の屋台が出店し、子ども向けの乗り物も設置され、龍舞(ドラゴン・ダンス)のパフォーマンスや、ベトナムの民族衣装を着た子どもたちのパレードも行われ、いつになく賑わっていた。

1杯で何通りも味わえる

町の南側にあるフォー専門店「アン・レストラン」(Web: anrestaurant.com.au)。ざっと150席はあるだろうか。大学の学食のような広い店で、事情通によると「1日700食以上は売る」という超繁盛店だ。MSG(グルタミン酸ナトリウム)は一切使っていないというが、コクのある独特なスープの中毒性は極めて高い。

フォーの名店「アン・レストラン」の全部乗せ鶏肉フォー(Map①)
フォーの名店「アン・レストラン」の全部乗せ鶏肉フォー(Map①)

メニュー構成は牛肉麺と鶏肉麺の2種類で、それぞれトッピングとサイズを選ぶ。半生肉の薄切り、加熱した牛肉の薄切り、スジ肉、ハチノス(胃壁)が入った「全部乗せ」の「ビーフ・コンビネーション」(ミディアム16ドル50セント、ラージ17ドル50セント)が定番だ。

牛肉麵も捨てがたいが、記者はいつも鶏肉麺を注文している。鶏ハツ、砂肝、鶏レバー、「猪血湯」(ブラッド・ゼリー=豚の血を固めた食材)、玉ひも(排卵前の卵黄)が全部入った「チキン・コンビネーション」(ミディアム17ドル、ラージ18ドル)。店内の中央に置いてある、小皿に入った特製チリ・ソース(無料)は忘れずに確保しておきたい。

回転が早い店なのでフォーはすぐに出てくる。チキン・コンビネーションには、生の卵黄が入った鶏スープ(牛肉麺にはない)も別に付いてくる。まずは、卵黄をスプーンですくってツルリと口に運び、鶏の旨みが詰まったスープに濃厚な卵黄が溶け込んでいくのを堪能する。

次に、鶏肉麺の中から鶏肉やモツを取り出し、適度に辛いチリ・ソースに付けて、前菜として楽しむ。この食べ方は、ベトナム人の客がそうしているのを見て覚えた。酒のつまみに持ってこいだが、残念ながら同店では酒は飲めない。

そして、本体のスープに、別皿のモヤシ、バジル、生トウガラシ、レモンの絞り汁を投入し、いよいよメイン・ディッシュの始まり。スープのうまみを楽しみたいので、生トウガラシは始めはほんの1、2切れでいい。鶏の出汁が効いたスープ、コシのある平べったい米粉麺、適度に味の付いた鶏肉やモツ、レモン汁の酸っぱさ、モヤシのシャキシャキ感、バジルの香味……。全ての要素が最高の次元で絡み合う、至福の瞬間である。

残量が丼の3分の1くらいになったら、残りのチリ・ソースと追加の生トウガラシをスープに投入しての「味変」で仕上げに入る。あっさりした上品な鶏スープは豹変し、腔内は炎のように燃えている。額から滝のように吹き出した汗を拭いながら、最後の1滴までスープを飲み干して完食。

珍しい食材の宝庫

周辺には他にも「サン・ロン」(Map2)などフォーの良店が点在しており、食べ比べてみるのも良い。食後はカフェ(Café Nho=Map③)で、練乳が入った甘いベトナム風アイス・コーヒーで腔内に残った辛みを中和するのもいいだろう。

ポーク・ロールの旨い店「バイン・ミー・ベイ・ゴー」(Banh Mi Bay Ngo=Map④)もお薦めだ。表面が硬く、中が柔らかいバゲットの最適な焼き加減、ハム、酢漬けのダイコンとニンジン、ソースのコンビネーションが絶妙だ。

シドニーのポーク・ロールの繁盛店としては、1日中行列が絶えない「マリックビル・ポーク・ロール」(Marrickville Pork Roll=チャイナ・タウンのダーリング・スクエアにも開店)、シドニー国際空港に近いマスコットの「ホン・ハ・ベイカリー」(Hong Ha Bakery)が有名だが、バンクスタウンのベイ・ゴーは「シドニーでもマリックビル・ポーク・ロールと1位を争ううまさ」(記者の知人)との指摘もある。

チャペル・ロード周辺は、シドニーでもなかなか入手が難しい、レア食材の宝庫でもある。商店街に点在する鮮魚店(Nhat Rang Fish Market=Map⑤など)では、入荷状況や時期によるが、生きたベイビー・アバローニ(小型のアワビ)や大ぶりなカキ(パシフィック・オイスターの一種)、ベトナム風の魚の練り物などが手に入る。八百屋を兼ねたスーパーでは、時期によって長芋やレンコンが売られていることがある。

ベトナム風ウズラ焼き。精肉店「Chi Tanh Quality Meats」(Map⑥)で、ショウガの効いたマリネ・ソースに漬け込んだ状態で販売されている
ベトナム風ウズラ焼き。精肉店「Chi Tanh Quality Meats」(Map⑥)で、ショウガの効いたマリネ・ソースに漬け込んだ状態で販売されている

精肉店(Chi Thanh Quality Meats=Map⑥など)では、ショウガの効いたベトナム風マリネ・ソースに漬け込んだ肉類が買える。中でも1匹まるごと漬け込んだウズラのマリネはお薦め。炭火の遠赤外線で焼くのが理想だが、家庭のグリルで20~30分、皮と手羽がカリカリになるまでじっくり焼き上げ、そのままかじっても十分おいしい。

なお、バンクスタウンでは、ベトナム人とレバノン人が2大勢力を形成している。食後の濃いコーヒーに合う甘いレバニーズ・スイーツの有名店(Chehade El Bahsa & Sons=Map⑦)で、デザートをお土産に買って帰るのもいいだろう。

町の南側にある娯楽施設「バンクスタウン・スポーツ・クラブ」(Map⑧)も見逃せない。ポーキー(遊戯機)がずらりと並ぶ広大な店内はほとんどカジノと言える規模だが、パブやクラフト・ビール専門店、世界各国の飲食店も入居している。人工の川が流れるジャングルのアトラクションや、イタリアの古い町並みを忠実に再現したレストラン街もあり、家族連れやグループで遊ぶには最適。ローカル・ビールがスクーナー1杯5ドルと格安なのもうれしい。会員制だが、入店時に運転免許証を見せればビジターとして入店できる。

ベトナムのストリート・フードから巨大な娯楽施設まで、多彩な顔を持つバンクスタウン。週末に食べ歩きを楽しんだり、食材を買い出しに行くにはお薦めの町である。

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