脇道 ── Side Streets of Sydney
Through the Camera Lens of Nao Ashidachi
写真家・足達奈穂が切り取るシドニーの風景、そして込められた思いをつづる
線についての話。
私は曲線より圧倒的に直線に惹(ひ)かれる。
もともと高架橋など長い直線を描く建築物が好きで、それらを記録するようにシャッターを切り始めたことが、街写真を撮るようになったきっかけだった。
直線に魅了されるのもあり街のフォルムは全て線として見ている。
写真を撮った場所はピアモント橋の上、タウンホール寄りの位置からシドニー水族館方面を見た景色。
沢山の線が見られる場所にはやっぱり立ち止まってしまう。
交通のために作られた層たちがたくさん。
車やバイク以外に奥には船もあり、見返してみるととても情報量の多い写真だ。
層が重なるところには柱が建てられ、この層が先に作られたのかなと私のお得意の妄想が始まり、そうなると日本橋の真上に通された首都高速を思い出したりもする。
インフラの整備には層のミルフィーユ化、そして柱がつきもの。
あまり共感されないかもしれないが、景観を台無しにされた今の日本橋の状態は、歴史の蓄積が見られるので私は好きだ。
柱の垂直に伸びる線も好きで、街を撮った写真を後から見返すと無意識に縦線を写真の中心にしていることがとても多い。
さんざん線についての話をしたが、ここから見た風景で何を一番記録したかったというと高架下のゴミなのだ。
ゴミは、やはりこういった人があまり立ち入らない高架下に止めどなく集まる。
世界中どこでもそう。
ゴミに加えて自転車もよく置き去りにされる高架下の不思議。
そんな思いでシャッターを切った1枚だ。
足達奈穂 Nao Ashidachi
ドイツ生まれ。海外転勤の多かった父に連れられ、幼少時代の多くを海外で過ごし、結婚後は夫の海外赴任に伴いオーストラリアへ。2018年よりシドニー在住。14年ごろから東京のストリート・スナップを撮り始め、写真家デビュー。東京の街を舞台にした写真集『boys in tokyo sentimental』を刊行中。現在、東京メトロ×AND STORYの地下鉄車内用広告写真を手掛けている