輝け!
ゴールドコーストの若きアスリートたち
第5回
肥後莉音(ひごりおん)さん(17歳)
ゴルフ
一打一打がコミットメント、
ゴルフは自分自身へのチャレンジ
自然に囲まれたゴールドコーストは、晴天と温暖な気候に恵まれスポーツに最適な場所であると同時にとても盛んである。将来の大きな夢を抱いて果敢にスポーツに取り組んでいるゴールドコーストの若きアスリート達にスポットを当てて、彼らの今の姿を紹介していく。第5回目は、肥後莉音さん(17歳)。ゴルフを始めて5年で数々のトーナメント代表選手に選ばれ、2019年オーストラリア・ジュニア女子ランキング1位に輝いた。今年1月には、国内外の招待選手が集うオーストラリアン・マスター・オブ・アマチュア・チャンピオンシップで62のスコアを出し、VICゴルフ・クラブのコース・レコードを記録した。来年からアメリカの大学へ進学してゴルフに更なる磨きをかけるという。(文=堀千佐子)
――ご自身の簡単な自己紹介をお願いします。
2003年1月26日ゴールドコースト生まれの17歳、セント・スティーブンス・カレッジに通っている12年生です。ゴルフを始めたのは11歳の6年生のころです。現在、エメラルド・レイクスとロイヤル・パインズ・ゴルフ・クラブのメンバーです。ゴルフ・オーストラリアのハンディキャップは今年の3月時点で+4.1。去年、オーストラリア・アマチュア・ジュニア女子ランキング1位になり、日本人で初めて、 “The Golf Australia Order of Merit” (GA OOM)を受賞しました。そして今年はゴルフ・オーストラリア・ハイパフォーマンス・プログラム強化選手に選ばれています。
――ゴルフ歴6年と比較的日が浅いですが、始めた経緯を教えてください。
私は2年生から6年生までバレエと新体操をずっと続けていたのですが、今から6年前に父から“将来も長く続けられるスポーツとしてゴルフをやってみれば?”と勧められたのがきっかけです。“クリスマス・プレゼントに何が欲しい?”と両親に聞かれて、“新体操をこのまま続けさせて!”と子ども心に嘆願した覚えもあります(笑)。でも、実際にゴルフをやってみたところまんざらでもなく、ハンディキャップをもらって試合に出てみるといきなり優勝してしまったりして、どんどんゴルフが楽しくなっていったんです。
――ゴルフを始めて瞬く間にメキメキと成績を上げていますが、その強さの秘訣は何でしょう?
ゴルフを始める以前に水泳やバレエ、新体操をやってきたおかげで、柔軟でバランスの良い「体幹の基礎」のようなものをしっかりと養ってきていたのかもしれません。それが、今の私のゴルフへとつながっているのだと思います。スポーツ全般に通じることですが、自分の体を思う通りに動かすことのできる運動能力、つまりバランス感覚を養うことはとても大切だと感じます。
また、良いコーチにも恵まれました。始めた当初から、エメラルド・レイクス・ゴルフ・クラブのジョッシュ・スミスという同じコーチの下でずっと練習をしています。私の良い部分を存分に引き出して伸ばてくれる人です。そして、父の存在も大きいと思います。父は長年スポーツをやってきた人なので、私のゴルフを一番理解してくれていて、いつも的確なアドバイスとサポートをしてくれるのでとても心強いです。
――2020年1月のオーストラリアン・マスター・オブ・アマチュア・チャンピオンシップでコース・レコードを更新したそうですね?
はい。このトーナメントは国内外からの招待選手がプレーするアマチュア・ゴルフの世界大会なのですが、第2ラウンドで、10アンダーのスコア62のコースレコードを出し、プロの持つ記録に並びました。歴史と伝統のあるヴィクトリア・ゴルフ・クラブは難易度の高いコースですが、第4ホールでホール・イン・ワンを出した後、最終ホールまで全てのショットが面白いように決まり62というスコアを出すことができました。スーパー・ショットの連続に、キャディーを務めていた父も目を見張る程でした。歴代の名だたるプロの記録と一緒に、私のスコア・カードも額に入れられてクラブ・ハウスの壁に飾られるというので、次回それを見に行くのが楽しみです。
――オーストラリアでゴルフをしていて良かったと感じる時はどんな時でしょう?
とにかくオーストラリアはゴルフをする環境がさまざまな面で整っていると思います。特にゴールドコーストは1年中天候も良く、近場にいくつものゴルフ・コースがあるので練習もしやすいですね。また、ジュニアのメンバー・フィーも安い上に、敷居の高い名門ゴルフ・クラブでもジュニア・トーナメント開催に積極的に門戸を開いていて、ジュニア・プレーヤーを育てる環境が整っていることが素晴らしいと感じます。まさに私たちのようなジュニア・ゴルファーにとっては好条件がそろっています。
――遠征が多いそうですが、食事などはどうしているのでしょうか?
体調管理に気を付けながら外食することも多いです。チーム以外の遠征へ出掛ける際には、食料持参でキッチン付きの宿泊先を選んで、同行した父がラインで母に作り方を教わりながら料理を作ってくれたりします。私は卵と乳製品のアレルギーがあるので少し神経を使いますが、大会のオーガナイズで、ゴルフ・クラブのメンバ―がホストしてくれるビレット(Billet)という機会を利用することもあります。
――どのように学校の勉強とゴルフの両立をしていますか?
正直言って、学校の勉強とゴルフの練習や試合をバランス良く両立していくのはとても大変です。ハイ・スクールということもあって、特に遠征が多いと授業をミスしてしまうのが痛いです。でも、今年は2月中旬以降、新型コロナウイルスの影響で全ての試合がキャンセルになってしまったので残念ですが、ここしばらくの間は落ち着いて学校の勉強とゴルフ練習に励みます!
――好きなゴルフ・コースと得意なクラブを教えてください。
オーストラリアで一番好きなコースは、ロイヤル・アデレード・ゴルフ・クラブです。150年の伝統を持つ、自然条件を生かした美しいコースで、オーストラリアン・オープンやアメリカ・ツアーの試合が開催される有名なゴルフ・クラブです。大きなジュニア・トーナメントもここで開催されるんですよ。
得意なクラブは曲がらないドライバーとアプローチ·ウェッジです。ウェッジは一般的にロフト角が付いていて扱いが難しいですが、これ1本で色んなショットができるので私は好きです。昨年、タイトリストのフルスカラシップをもらったので、今愛用しているウェッジは、特注で「LION」の名前入りのタイトリストのものでとても気に入っています。
――今後の予定と将来の目標について聞かせてください。
現在、アメリカの大学5校からスカラシップのオファーをいただいているので、、これからその1つを選んで、来年からはゴルフの本場アメリカのカレッジ・ゴルファーとして文武両道、勉強とゴルフを学びます。カレッジ・ゴルフという新しい環境の中で、技術を磨いて、どんどん試合経験を積んでいきたいです。そして、来年は18歳になるので、年1回のプロ・テストにも毎年チャレンジしてプロを目指していきたいですね。アメリカのネリー・コルダ選手のように安定したプレーとファッショナブルなプロ・ゴルファーになりたいです!
父、正史(まさふみ)さんからのメッセージ
父として、また莉音のゴルフの良き理解者として、彼女がゴルフを始めた日から、時折プレッシャーをかけながらも、共に日々楽しんでゴルフ中心の生活を送ってきました。来年からはアメリカでの今までとは違う新生活が始まりますが、これまで通り、ゴルフを楽しみながら、プロを目指して前向きに頑張っていって欲しいと思います。この先、ゴルフ選手として、技術的にも人間的にも、スポーツを志す子どもたちのお手本となり目標となる人になって欲しいと心から願っています。