第68回 日豪プレス法律相談室
豪州法の下でのヘビ、カンガルー、馬、弁護士の扱い
あるドライバーがクイーンズランド州で今年6月、ヘビと戦っていたことを理由にスピード違反の取り締まりを逃れたことが話題になりました。制限速度時速100キロの道を123キロで走行中だったジミーさんを捕まえた警官は、車中に大きなブラウン・スネークを見つけ、言い訳が本当だと知ったのです。このヘビは世界で最も危険な毒ヘビの一種。ジミーさんは命の危険に晒されながらも免許取消しを免れたのです。
他にも豪州では過去、ユニークな動物たちが重要な役割を果たした裁判がありました。
私が担当した保険会社への賠償請求案件で同乗していた日本人が重傷を負った自動車自損事故がありました。ドライバーは当初、車の前にキツネが飛び出してきたことが事故原因だと主張。豪州のCTP(車の自賠責保険)制度の下で賠償金を受け取るには、ドライバーに過失があったことを証明しなければなりません。動物の飛び出しに対するドライバーの回避行動が事故原因なら、保険会社は賠償金の支払いを簡単に認めなかったでしょう。幸いこのケースでは、ドライバーのキツネ発言に信憑性がなかったため(過去、事故現場付近でのキツネ目撃は皆無)、賠償請求を起こした日本人は240万豪ドル以上の賠償金を受け取ることができました。
道路に飛び出すカンガルーには要注意
豪州の代表的動物のカンガルーですが、昨年の車との接触事故は8000件近くと、道路での問題発生数も恐らくトップ。運転中に目の前にカンガルーが飛び出してきた場合は、他の車との衝突事故を避けるため、ハンドルを切るのではなく、ブレーキを踏んで対応しましょう。
ちなみに鶏や牛など食用の家畜が関連した事故の場合、家畜のオーナーに何らか(放牧場のゲートを開け放し状態だったなど)の不注意があれば、オーナーに責任が問われます。
さて、豪州の多くの裁判所では裁判官と法廷弁護士は馬の毛製のかつらを着用します。これはかつらが裁判制度の威厳を表現できると考えた英国の伝統を受け継いだものです。
このコラムの著者
ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として25年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。豪州法に関する日本企業のリーガル・アドバイザーも務める。高等裁判所での勝訴経験があるなど、多くの日本人案件をサポート。