RUGBY WORLD CUP 2019 JAPAN
ラグビーW杯 観戦ガイド
いよいよ今月開幕する、第9回ラグビー・ワールド・カップ(以下、RWC)。日本で初めて開催される今大会に、ラグビー・ファンならずとも多くの日本人が関心を高めている。そこで本紙でラグビーの連載を持つ「豪州ラグビー通信」のYASU氏にオーストラリア代表について、日本代表については「GO! ワラビーズ」の山田美千子氏にそれぞれの見どころを紹介してもらった。また全試合を網羅したカレンダーも併せて、ぜひ観戦に役立てて欲しい(文中敬称略、記事の情報は8月19日時点のもの)。(構成=山下香)
2度の優勝を誇る古豪オーストラリア代表
「ワラビーズ」の愛称で親しまれるオーストラリア代表。1987年の第1回RWCは、オーストラリアとニュージーランド(以下、NZ)の両国合同開催の大会であり、当時は実力的にもオーストラリアとNZが決勝で戦うシナリオが予想されていた。しかし、ワラビーズは準決勝のフランス戦でまさかの敗退。3位決定戦でもウェールズに敗れ無冠で大会を終えた。91年の第2回大会で前回の雪辱を果たし初優勝、第4回大会では史上初の2度目の制覇を成し遂げた。そして連覇となる3度目の優勝に挑んだ第5回のオーストラリア大会では、イングランドとの決勝戦で延長戦にもつれ込み、惜しくも敗れ準優勝となった。その後も、第7回大会で3位、第8回大会で準優勝と常に上位をキープしており、最新の世界ランキングでは6位。今大会でも優勝候補の1つとして期待されている。
注目の1戦:ウェールズ戦【9月29日(金)日本時間16:45~】
今年のシックス・ネーションズ(欧州6カ国対抗戦)で全勝優勝を達成し、最高の状態でワールド・カップに臨むのがウェールズ。ワールド・カップでの成績ではワラビーズが上回るものの、最新の世界ランキングでは、ニュージーランドが約10年守り続けた首位の座をウェールズが奪い1位まで上り詰めた。そのウェールズは、トビー・ファレタウ(No.8)、ガレス・アンスコム(SO)といったFWとBKの中心選手をけがで欠き、厳しい状態となっているが、ワラビーズにとって、プール戦での最大の難敵であることには変わらない。
注目選手
マイケル・フーパー選手 Michael Hooper: FL
20歳でワラビーズに選出され、22歳で豪州代表キャプテンとなる。世界最高峰のオープン・サイド・フランカーとして活躍し、ボールの争奪にも強く、相手の攻撃を寸断するタックルを繰り返す。スピードも兼ね備え、ボール・キャリーの距離はBKの選手を上回ることも多い。豪州最優秀選手に贈られる「ジョン・イールス・メダル」を2013年、16年に受賞。現在もワラビーズのキャプテンとして、自身2度目となるワールドカップに挑む。
ウィル・ゲニア選手 Will Genia: SH
2011年、レッズのスーパー・ラグビー初制覇の中心選手。第7回RWCのNZ大会、そして第8回のイングランド大会にも出場し、今大会で、3大会連続の出場となる。スクラム・ハーフとして正確なパスはもちろん、ゲームのテンポを作る起点となり、自らアタックを仕掛ける攻撃的なプレー・スタイルを持つ。前大会後はフランスでプレーし、昨年レベルズに移籍しスーパー・ラグビーに復帰。今大会後は日本の近鉄ライナーズへの入団が決まっている。
一歩一歩、着実に前に進んできた日本代表
RWC初開催から連続出場している日本代表、通称「ブレイブ・ブロッサムズ」。2015年には優勝候補の南アフリカを破り、この大会で3勝を挙げた。「スポーツ史上最大の番狂わせ」と世界中に衝撃を与えた日本代表チームへの期待は、RWCの日本開催と相まって大きく膨らんでいる。前回大会以降の代表戦は先月11日までに32試合行われており、戦績は18勝13敗1分と勝ち越している。最新の世界ランキングでも、11位からチーム史上最高タイの9位に上昇し、確実に力を付けてきている。その一方で上位チームからは勝ち星を奪えていない。日本と同じプールAには、この4年の間に勝利を奪えていないアイルランドとスコットランドが入っており、厳しい戦いを強いられそうだ。自国開催を追い風に、世界に衝撃を与えた4年前を超える大躍進が期待されている。
注目の1戦:ロシア戦【9月20日(金)日本時間19:45~】
日本大会の開幕戦となるロシア戦。ここでの出来不出来が、このRWCでの日本代表の全ての試合につながっていくことになるだろう。2002年以降の対ロシア戦は5勝1敗で、対戦成績としては圧倒的に日本に分があるが、昨年11月の試合では32-27とそれまでになく拮抗した試合となった。フィジカルの強いロシアに先制され、後半に追いつき逆転、更に同点、再逆転の末の勝利であった。油断できない相手であることは間違いない。自分たちの目指す試合内容で初戦を勝利し、プール戦突破につなげたいところである。
注目選手
ジェームス・ムーア選手 James Moore: LO
「イケメン」とラグビー好きの女子の間で話題になっているのがオーストラリア、ブリスベン出身のジェームス・ムーア選手26歳。身長195センチ、102キロと大柄だが、豊富な運動量とパワーが魅力。2016年に東芝ブレイブ・ルーパス加入に伴い来日。18年にはサンウルブズに選ばれスーパー・ラグビーにデビュー。同年、宗像サニックス・ブルーズへ移籍。今年7月に日本代表資格を取得した。
福岡賢樹(けんき)選手 WTB
2015年のRWCイングランド大会に大学生として出場。翌年に、パナソニック・ワイルド・ナイツに加入し、セブンズ日本代表としてリオ・デ・ジャネイロ五輪にも出場した。17年からはスーパー・ラグビーのサンウルブズでもプレーしている。日本屈指のスピードスターであり、ボールを受けてからトップ・スピードに至るまでが早く、軽快なステップワークでトライを決める。引退後は医師を目指す。
日本で「ワラビーズ号」が走る!
9月10日(火)から11月3日(日)の間、特急ロマンスカーをワラビーズ仕様に装飾した「ワラビーズ号」が運行する。今年4月に小田急電鉄株式会社がラグビー・オーストラリアとメジャー・パートナーシップを結んだことがきっかけとなった企画で、ワラビーズの応援を目的としている。車体にワラビーズのロゴが描かれ、運行初日と期間中のワラビーズ公式試合の日には車内座席のヘッド・カバーがワラビーズ仕様に。また9月7日(土)からは「ワラビーズ歓迎記念乗車券」が1,500セット限定で販売される。他にも11月3日(日)まで新宿駅や小田原駅にワラビーズ仕様の顔出しパネルやフラッグの展示も行われるので、この時期、日本に行くワラビーズ・ファンはぜひチェックしよう!
テレビで観戦するためには
オーストラリア戦
決勝トーナメント含む、全てのオーストラリア戦は「Channel 10」が生放送する予定だ。ライブストリーミング配信も行いスマートフォンやパソコンでの視聴も可能なので、テレビを持っていない人でも楽しめる。ちなみに、オーストラリア戦が全て無料で視聴できるのは今回が初めて。このチャンスをお見逃しなく。
■Channel 10 Web: https://10play.com.au
日本戦&その他の試合
残念ながらオーストラリアではオーストラリア戦以外の無料放送は行われないため、有料放送の「Fox Sports」に加入するか、有料放送を視聴できるバーに行くしか観戦方法はない。特にシドニー近郊のクロウズ・ネストにある「札幌Japanese Restaurant」では日本戦、オーストラリア戦を含むほとんどの試合を放映する予定だ。同店のオーナーは熱狂的なラグビー好きとして知られ、日本人にもオージーにも知られる有名店である。ラグビー好きも、そうでない人も、この機会にぜひ足を運んでみよう!
■札幌 Sapporo Japanese Restaurant ■住所:94 Willoughby Rd., Crows Nest NSW ■Tel: (02)9436-3435 ■Web:www.sapporo.com.au
全試合日程カレンダー
試合の得点と勝ち上がったチームを書き込もう。切り取って壁に貼っても便利!
試合開始の時間は全て日本時間です。一部の州では10月の第1日曜日にサマータイムが始まります。よく確認して試合を見逃さないようにしよう。
9月20日(金)
19:45~ 東京スタジアム(東京都)
9月21日(土)
13:45~ 札幌ドーム(北海道)
フランス( )―( )アルゼンチン
16:15~ 東京スタジアム(東京都)
ニュージーランド( )―( )南アフリカ
18:45~ 横浜国際総合競技場(神奈川県)
注目!
過去3回の優勝を誇り3連覇を目指すNZと過去2回優勝の南アフリカの試合は見逃せない。今年のラグビー・チャンピオンシップでは16-16で引き分けているが、果たしてRWCの舞台ではどんな試合展開となるのか。初戦から屈指の好カードで、大会を大いに盛り上げる一戦になることは間違いない。勝利の女神はどちらに微笑むのか。激突が楽しみである。(山田美千子)
決勝の組み合わせとしても十分可能性があるNZ「オール・ブラックス」と南アフリカ「スプリングボクス」が、プールBで同組となった。開幕翌日に行われるこの対戦に世界中の注目が集まることは間違いない。2011年、15年の王者であり、今大会で3連覇がかかる世界最強のオール・ブラックスに対し、スプリングボクスは、ラグビー・チャンピオンシップ(南半球4カ国国対抗戦)において、昨年はアウェイで勝利し、今年もまた同じ会場で引き分けており自信をつけている。スプリングボクスも過去に2度、ワールドカップ制覇を成し遂げており、両者互いに一歩も譲らない好ゲームが期待される。(YASU)
9月22日(日)
14:15~ 東大阪市花園ラグビー場(大阪府)
アイルランド( )―( )スコットランド
16:45~ 横浜国際総合競技場(神奈川県)
イングランド( )―( )トンガ
19:15~ 札幌ドーム(北海道)
9月23日(月)
19:15~ 豊田スタジアム(愛知県)
9月24日(火)
19:15~ 熊谷ラグビー場(埼玉県)
9月25日(水)
14:15~ 釜石鵜住居復興スタジアム(岩手県)
9月26日(木)
16:45~ 東平尾公園博多の森球技場(福岡県)
イングランド( )―( )アメリカ
19:45~ 神戸市御崎公園球技場(兵庫県)
9月28日(土)
13:45~ 東大阪市花園ラグビー場(大阪府)
日本( )―( )アイルランド
16:15~ 小笠山総合運動公園エコパスタジアム(静岡県)
南アフリカ( )―( )ナミビア
18:45~ 豊田スタジアム(愛知県)
9月29日(日)
14:15~ 熊谷ラグビー場 (埼玉県)
オーストラリア( )―( )ウェールズ
16:45~ 東京スタジアム(東京都)
9月30日(月)
19:15~ 神戸市御崎公園球技場(兵庫県)
10月2日(水)
16:45~ 東平尾公園博多の森球技場(福岡県)
ニュージーランド( )―( )カナダ
19:15~ 大分スポーツ公園総合競技場(大分県)
10月3日(木)
14:15~ 東大阪市花園ラグビー場(大阪府)
アイルランド( )―( )ロシア
19:15~ 神戸市御崎公園球技場(兵庫県)
10月4日(金)
18:45~ 小笠山総合運動公園エコパスタジアム(静岡県)
10月5日(土)
14:15~ 大分スポーツ公園総合競技場(大分県)
イングランド( )―( )アルゼンチン
17:00~ 東京スタジアム(東京都)
注目!
2003年に北半球チーム初の優勝を飾ったイングランドと前回大会で初のトップ4入りを果たしたアルゼンチンの試合に注目したい。前回大会で日本を率いた名将エディー・ジョーンズ氏がHCを務めるラグビーの母国イングランド。一方のアルゼンチンはスーパー・ラグビー、ラグビー・チャンピオンシップに参戦以降、成長著しいラグビー新興国である。両極にあるこの2チームがどんな戦いを見せるのか。順位によってはより一層激しいゲームが繰り広げられるだろう。(山田美千子)
19:30~ 豊田スタジアム(愛知県)
10月6日(日)
13:45~ 東京スタジアム(東京都)
フランス( )―( )トンガ
16:45~ 熊本県民総合運動公園陸上競技場(熊本県)
10月8日(火)
19:15~ 神戸市御崎公園球技場(兵庫県)
10月9日(水)
13:45~ 熊谷ラグビー場(埼玉県)
スコットランド( )―( )ロシア
16:15~ 小笠山総合運動公園エコパスタジアム(静岡県)
ウェールズ( )―( )フィジー
18:45~ 大分スポーツ公園総合競技場 (大分県)
10月11日(金)
19:15~ 小笠山総合運動公園エコパスタジアム(静岡県)
10月12日(土)
13:45~ 豊田スタジアム(愛知県)
イングランド( )―( )フランス
17:15~ 横浜国際総合競技場(神奈川県)
注目!
イングランド、フランス、アルゼンチンが同組となり「死の組」と呼ばれるプールCにおいて、予選ラウンド最終戦となるのが、このカード。イングランドは2015年の前大会でも、オーストラリア、ウェールズと同組となる「死の組」で、開催国でありながら予選ラウンドで敗退という、WRC史上初となる屈辱を味わった。フランスは世界ランク7位(8月19日時点)ながらも、これまでのWRCでは準優勝3回という好成績を残し、過去には、NZを始めとする優勝候補を撃破するなど、大会本番にめっぽう強い。予選ラウンド最後の週末、このゲームも必見。(YASU)
19:45~ 東平尾公園博多の森球技場(福岡県)
10月13日(日)
12:15~ 釜石鵜住居復興スタジアム(岩手県)
アメリカ( )―( )トンガ
14:45~ 東大阪市花園ラグビー場(大阪府)
ウェールズ( )―( )ウルグアイ
17:15~ 熊本県民総合運動公園陸上競技場(熊本県)
日本( )―( )スコットランド
19:45~ 横浜国際総合競技場(神奈川県)
10月19日(土)
16:15~ 大分スポーツ公園総合競技場(大分県)
準々決勝②( プールB1位 )―( プールA2位 )
19:15~ 東京スタジアム(東京都)
10月20日(日)
16:15~ 大分スポーツ公園総合競技場(大分県)
準々決勝④( プールA1位 )―( プールB2位 )
19:15~ 東京スタジアム(東京都)
10月26日(土)
17:00~ 横浜国際総合競技場(神奈川県)
10月27日(日)
18:00~ 横浜国際総合競技場(神奈川県)
11月11月1日(金)
18:00~ 東京スタジアム(東京都)
11月2日(土)
18:00~ 横浜国際総合競技場(神奈川県)