第14回英語のイディオムに登場する犬たち
「犬も歩けば棒に当たる」「犬猿の仲」「夫婦げんかは犬も食わない」など、犬に関する日本語のことわざや慣用句は多い。犬という動物が私たち日本人の生活の一部として深くなじんできたという証だろう。もちろん英語にも、同じように犬に関するイディオムやフレーズがある。
「It’s raining cats and dogs」はどしゃ降りの雨が降っているということを指す。なぜどしゃ降りだと犬と猫が降ることになるのか、その理由ははっきりしていないが、17世紀には既に文献として残っている古い言葉だという。ギリシャ語の「Catadupe」または「Cat doxa」がなまった言葉だとか、北欧神話の嵐の神オーディンが従えている犬と、不穏な嵐と共に登場することの多い魔女とその黒猫からきているなど諸説あるものの、これといった語源は確定していないようだ。
とても具合が悪いという意味の「Sick as a dog」もオーストラリアでたまに耳にする言葉だ。こちらも17世紀から使われている古い言葉だが、はっきりとした語源はやはり不明なままなのだそうだ。当時は街にうろつく野良犬も多く、汚れてやせ細り、道端で嘔吐している姿をよく見掛けたからではないかというのが今のところ有力な説のようである。この時代に生まれた犬に関する言葉にはネガティブな意味合いのものが多いようで、疲れてくたくたになった時に使う「Dog-tired」という表現などもある。
「Dogs are man’s best friend」、犬は人間のベスト・フレンドだ、という言葉がなぜ生まれたのかに説明は要らないだろう。そこから転じて、マリリン・モンローの歌と合わせて「Dogs are man’s best friend, diamonds are girl’s best friend」犬は男性の友、ダイヤモンドは女性の友、などと言ったりすることもある。男性が女性を怒らせてしまい窮地に陥っている時は「I’m in the doghouse」などと言ったりもする。夫が家に入れてもらえず犬小屋で寝ることからきているスラングだ。
レストランで食事をした後、皿に残った料理を快く持ち帰らせてくれる店も多いオーストラリアでは、パックに詰めた残り物や容器のことを「Doggy bag」と表現することも多い。犬のためといった建前だが、もちろん持ち帰って食べるのは人間だ。
ランス陽子
フォトグラファー/ライター、博士(美術)。数年前にシェットランド・シープ・ドッグの2頭が亡くなり、現在はオーストラリアで古くから牧羊犬として愛されているボーダー・コリーのスパーキーとゴールドコーストで暮らす。
Web: www.yokolance.com.au