写真で世界に挑戦したい
第64回 今回登場のワーホリ・メーカーは?
上田恵子さん
1987年まれ・京都府出身
大手外資系アパレル・ブランドで約10年勤務。その後、世界一周旅行へ。旅中に本格的に写真を撮るようになり、プロのフォトグラファーとして活動を始める。昨年12月に来豪し、シドニーを拠点に撮影の依頼を受けている。(Web: travelovepic.wixsite.com/reiwa、インスタグラム: @travelovepic)
上田さんの写真に写る人びとには共通する特徴がある。とてもその場で出会ったばかりとは思えない打ち解けた表情だ。どうやって撮ったのかと尋ねると「話すのが好きだから、話している間に撮ったら自然な表情が撮れるんです」と教えてくれた。正に彼女の人柄が写真に表れているのだと分かって納得できた。
「会う人に恵まれているんです」と話すように彼女には幸運な出会いに恵まれる不思議な力がある。大手外資系アパレル・ブランドに約10年勤め、店長、バイヤーと順調にキャリア・アップしていたものの、海外で活躍したいという気持ちが強まり、退職し世界一周の旅へ。2年掛けて40カ国以上の国を旅して回った。その旅先の1つだったブラジルでは、彼女の人生を大きく変える出会いがあった。
治安が悪いことを警戒して空港から動けず、途方に暮れていた上田さんを助けてくれたのが、ちょうど開催していたサッカーW杯を日本から撮影に来ていたプロのフォトグラファーだった。それまで一眼レフ・カメラで撮影をしたこともなかった彼女だが、フォトグラファーと意気投合し、撮影の仕方を教えてもらったことをきっかけに写真に目覚め、その後の旅の目的は撮影が中心になった。
そして再び幸運な出会いに恵まれる。旅先で出会った広告代理店の関係者に写真が認められ、旅行用パンフレットへの掲載が決まったのだ。帰国後、上田さんはプロのフォトグラファーとして活動を始め、撮影した写真やポストカードを販売したり、自ら企画を売り込み、大手コーヒー・ショップで個展を開催、更に企業ホームページ用の写真の撮影依頼を受けたりと精力的に活動してきた。写真の仕事が安定し始めてきたころから、ふつふつと沸いたのが海外で挑戦したいという気持ちだった。
「旅行だと1つの国に滞在できるのは長くても3カ月です。世界一周旅行中から、もっと1つの国に留まって暮らしてみたいという気持ちが強くなっていました。そして海外に暮らすのなら、やっぱり写真で世界に挑戦したいなって」
世界一周旅行で知り合った人の多くがオーストラリアでのワーキング・ホリデー(WH)経験者だったこともあり、世界一周旅行では行っていなかったオーストラリアへの滞在を決めた。
挑戦する1年
ビザを取得した時点で30歳を超えており、セカンド・ビザが取れないことが分かっていた上田さんは、来豪する前からWH期間は挑戦する1年」と決めていたという。
「ワーホリは海外で何でもできる期間。自分を試すことのできる期間だと捉えて、1年間でどこまで成長して何の結果を残すか、そのことを来る前から強く意識していました」
自分の作品を売ること、個展を開くことを目標に定めていたものの、何か計画があったわけではなかった。そこで当時働いていたゲストハウスで訪れる人に名刺を配り続けた。すると、ここでも幸運な出会いに恵まれる。ちょうど宿泊した農家のオーナーがマーケットに出店していることがわかり、販売を手伝いながら売り場の横で写真やポストカードなど自分の作品を販売できることになったのだ。来豪からわずか2週間後のことだった。
「すぐに目標が達成できたのでびっくりしました。この国は自分のしたいことを言い続けていれば、何らかの形にできる国だと思いました」
その後、毎週マーケットで写真の販売を続けてきた上田さん。その甲斐あって順調にファンを増やし、多い時には月に20件もの撮影の依頼を受けるほどに。
WH期間も残り3カ月となった今は、目標であるオーストラリアでの個展開催に向けて協力者を探しながら、フォト・ツアーやウエディング・フォトにも挑戦するつもりだという。最後に同じWHで来た人たちに向けてアドバイスをもらった。
「最初は不安ばかりだと思いますが、何の計画もなくても『これをやりたい』と言っていたら、私のように叶えられた人間もいます。悪いことばかり考えず、とにかく楽しんで動いてみたらいいと思います」
ただの出会いを幸運な出会いに変えるのは、結局は運ではなく、その人自身なのだと上田さんは教えてくれた。
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