オーストラリアの裁判~裁判書類の送達について – 身近な法律問題

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法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第49回:オーストラリアの裁判~裁判書類の送達について

オーストラリアでは、裁判の当事者になった相手に、「申請書」「訴状」「答弁書」などの裁判書類を送り、その内容について異議がある場合には、反対の申し立てや、その理由を記載して裁判所に提出する答弁の機会が設けられています。

日本では、裁判所が「特別送達」と書いてある封筒やはがきを郵送してくれますが、オーストラリアの裁判手続きでは、原告や申請者が自身で相手に裁判書類の送達を手配する必要があり、審理が行われる前までに送達が行われた旨を宣誓供述書で相手に確認して裁判所に提出しなければなりません。

その際に通常の郵送では相手が受け取ったかどうか定かではなく、本当に送ったかどうかも自己申告になります。また、相手が受け取っていたとしても、忙しくて「まさか、そんな重要な裁判書類が入っているとは思わなかった」と開封していない場合もあるでしょう。

従って、オーストラリアの裁判における申請書類の送達は、専門の業者を介して行うのが一般的であり、原則として裁判書類の送達は公平な第三者による手渡しとなります(相手に弁護士が代理人としてついている場合は手渡しする必要はありません)。

しかし、相手が裁判手続きの送達に備えて所在が分からないようにしたり、書類を受け取らないなど、さまざまな妨害を行うことも一般的によくあります。

また、送達相手本人が目の前に確認できているにもかかわらず、書類の手渡しを拒むような場合もありますが、その場合は所定のルールに沿って、その時のやりとりを送達人が裁判所に証拠提出することで手渡しが行われたことになります。

裁判書類の送達において重要なポイントは、“いつ、誰が、誰に、何を、どこで、どのように”渡したかどうかです。オーストラリアの裁判で書類送達は専門の業者を介して行われるのが一般的なのは、彼らは毎日何件もの送達をしていて、このような状況にも慣れているからだと言えるでしょう。

裁判手続きにおいて、相手の所在が分からない場合には、相手の身元調査をしなければならなくなったり、それでも相手の所在が判明しない場合には、裁判所に「Substituted Service(代替送達)」を認めてもらう手続きが必要になるなど、余計な費用や労力が掛かります。従って、裁判手続きを行う可能性が少しでも出てきたら、相手の詳細を少しでも多く把握しておくことをお勧めします。


弁護士:神林佳吾
(神林佳吾法律事務所代表)

1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後15年にわたり離婚・遺言・相続・会社法・訴訟を中心に対応

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