第17回 カンガルー? ワラビー? いえパディメロンです/タスマニア巡り
日中の気温がグッと下がるこの時期は、昼間でも動物たちを見ることができる野生動物観察に適した時期と言えるでしょう。今回はタスマニアのカンガルーの仲間を紹介します。
カンガルーと言えば群れで草原を飛び跳ね、筋骨隆々の雄が蹴り合うというイメージですが、そうではないカンガルーも数多くいます。「カンガルー」は「Macropodidae科」に属する動物の総称で、実に65種もいます。小さいものでは1.5キロ、最大のレッド・カンガルーは約100キロ、2メートルほどにもなります。
タスマニアにいるのはその内3 種。一番大きいイースタン・グレー・カンガルーは体重40~50キロ、頭胴長150センチを超え、群れで過ごすイメージ通りのカンガルー。本土東部で最もよく見掛ける一種ですが、州内では個体数が少なく生息地域が限られているので北部平野部以外ではほぼ見掛けません。
中サイズがべネッツ・ワラビー。レッド・ネック・ワラビーとも呼ばれ、本土の海岸線にも多く生息しています。タスマニアは亜種とされ、本土に比べわずかに大きく90センチ、15~23キロほど。海岸線から標高1000メートルを越える山岳部まで全域に分布しており、最も見る機会の多い種類でしょう。ブルーニー島にはアルビノが混ざる群れがあり多くの人が訪れます。
最後がタスマニア固有のワラビー、タスマニアン・パディメロン。彼らはワラビーよりも更に小さく50センチ、5キロ程度。濃い灰色の体毛、ズングリとした体型、体を支えられない細い尾が特徴で他の2種とは簡単に見分けられます。州全域に生息しますが、根城とする森からあまり離れようとせず、海岸部や平野部ではほとんど見掛けません。反対に根城になる木々が多ければ住宅地周辺でも見掛けることも。とは言え、やはり多いのはマウント・フィールドやクレイドル・マウンテンなどの鬱蒼(うっそう)とした森。冬の時期でも豊富にしげるコケやキノコを食べるパディメロンを、ぜひ観察しに行ってみましょう。
このコラムの著者
稲田 正人
タスマニアのツアー・ガイド/コーディネーター。タスマニア大学で動物学・環境学を学んだ後、のんびりゆったりした生活感に魅せられ、そのままタスマニアに在住。現在は現地旅行会社AJPR(Web: www.ajpr.com.au)に勤務する傍ら、多過ぎる趣味に追われる日々を満喫中。