スマホ、タブレットに子どもが夢中! その功罪を真面目に考えてみる(1)
僕の妹の旦那はニュージーランド人で焼酎と納豆が大好きな日本フリークだ。妹夫婦のところには3姉妹がいて、長女はもう中学生。前回会った時はまだまだ子どもだったことを思い出すと時の経過の早さ、そしてそれにも増して子どもの成長の早さに驚かされる。
妹一家は、ニュージーランド・ウェリントンに居を構え、僕たちも2年ほど前に久々に訪れる予定だったのがコロナ禍で叶わず、もう5年近く彼らに会えていない。
そんな彼らが今年10月から3カ月間、一念発起し日本へと滞在することに決めた(この原稿を書いているまさに今現在、彼らは親戚が持つ軽井沢の別荘に滞在し、子どもたちを現地の学校に通わせている)。
そんな流れの中、妹から急なオファーがあった。「Kazuya君(妹は僕を昔からそう呼ぶ)たちも日本来なよ」
妻のMEGは我が意を得たりと、ウキウキしながら「1カ月くらい帰ろうよ!」と瞳を輝かせる。僕は逡巡し「少し考えさせて欲しい」と答えた。
懸念1:ポスト・コロナ、年末に向けてビジネスの安定を加速させていくタイミングで、社長である自分がシドニーを離れて大丈夫か。
懸念2:航空券代がすさまじく高くなっている。
妻の反応、僕の判断
「カイティ(カイトのこと)もアーリー(アリサのこと)も日本帰りたいって言ってるよ! ねー、カイティ」とMEG。話の内容を全く分かっていないカイトを横目に、「だが」と僕は考える。
上述2つはどちらも経済的事由だ。普段は会えない日本のクライアントとのアポを充実させればむしろ日本滞在をビジネス的にもポジティブ転換できるかもしれない。妹ファミリー、僕とMEG双方の両親など、全ファミリーが日本で一同に会す機会など、もしかしたら2度とないかもしれない。カイト、アリサは妹ファミリーに会ったことが一度もない。妹のところの3姉妹も初めての従兄弟と会う機会を楽しみにしている。その時間の貴重さを考えると答えは自明ではないか。僕は腹を括った。
「MEG、オッケー。日本に帰ろう」
「いつからいつにする?」
「航空券代を決定条件として、最も安い時で決めて良いよ。期間も含めて任せる」
結果、僕らの日本滞在は11月最終週から12月30日までの約5週間となった。思った以上に長い滞在となるが、決めた日程から1日でもずれると価格が跳ね上がる。日本で年越ししたい気持ちはもちろんあったが、年をまたぐととんでもなく価格が跳ね上がる。断念。僕らは大晦日の朝にシドニーに戻ることに。それでもフライト代はコロナ・パンデミック前の感覚からすると2.5倍ほどとなった。
というわけで僕は今現在、このコラムを都内のアポを終えた後に見つけたカフェ・チェーン「プロント」で店のWi-Fiを使いながら書いている。「プロント」は夜時間、お酒を飲ませる店に鞍替えする。僕が店を見つけたのはもう夕食時だったが、今日中にやらねばならない仕事が山積しており、結果、現在「おくらのダシ漬け」と「うずらの卵」を肴にハイボールを傾けながらキーボードに向かうというなかなか稀有な体験をしている。シドニーでもたまにパブでビールを飲みながらラップトップを広げることがあるが、このようなことがナチュラルにできる店は日本にはなかなかない。「プロント」、日本出張時、夜の移動時にもう少しだけ仕事をしなければならない場面での使い勝手、かなり良い。同社の営業マンではないがイチオシしたい。
伝家の宝刀「i Pad」
今回の帰国を前に思い出すのが国境のボーダーが空いた2021年末~22年にかけての帰国時。シドニーへ戻る機内がまさに「カオス」だった。当時1歳半だったカイトが帰りの飛行機で一睡もせず、それどころかシドニー到着直前までひたすら泣き叫び続けたのだ。客室乗務員のスペースを借りカーテンを閉め防音を試みながら泣き止まないカイトを妻と交代で抱っこし続けたひと晩。泣き続けたカイトも本当に辛かったろうが僕たちも、そして周りの乗客も皆巻き込んで大変な時間を過ごすこととなった。
「大変だったと思いますが、これに懲りずまたぜひ当便をご利用くださいね」と言ってくださった客室乗務員。迷惑そうな顔ひとつせず「一晩中本当にお疲れ様でした」と言ってくださったお隣の乗客。それらの言葉は救いであったが、いずれにしても衆人環視の中、アンコントローラブルなその状況は僕らにとってトラウマに近いものとして今も記憶に深く刻まれている。
で、今回はどうするか? となった時にやはりここは長らく封印していた伝家の宝刀「iPad」様に登場頂くしかなかろうという結論に至った。まず、誌面版日豪プレス11月号の僕の編集後記を以下に転載。9月にシドニーで行われた女子バスケW杯観戦時の顛末だ。
普段は使わせることはない伝家の宝刀「I Pad」を渡した所、日本戦前のオーストラリア代表の試合から、日本対カナダ戦が終わるまで数時間画面に没頭。すごいなiPad(とYouTube)。だが大変なのはその後。iPadを取ろうとすると大泣き、そして道端に寝そべり動かない。何とか連れ帰っても「あいぱっど、あいぱっど」と連呼(いつその単語覚えた)。伝家の宝刀は諸刃の剣でもあった。
まさにiPad(スマホも同様)は諸刃の剣で、一度使ってしまうと目の前の時間はうまく攻略できるのだが手放す際に大騒ぎになってしまうという別の波を呼び寄せることをその時に学んだ。
以下、今度は妻の手記。
息子がアイパッポー(本人はそう発音している)に夢中になっている姿をみて、これっていつもケータイいじっている大人も同じかと思った。アイパッポーを子どもに与えるととても静かになり大人しくなる。私はひと時の自由を手にできる。外食ができる。買い物ができるようになる。でもその代わりに子どもがアイパッポーの中毒になり、目が悪くなる。いつもその狭間で心は揺れ動いている。勝手に遊んでくれるので、シドニーの自宅ではほとんどアイパッポーを与えていないが、旅行中、おもちゃにも限りがあるので、アイパッポーも仕方ないか、とも思う。
今回のシドニー→羽田便の機内ではこのiPadがしっかりと機能し、更にそのまま寝るという絶大な役割を果たしてくれた。だが、以後、カイトはiPad、更にはスマホをせがむようになった。今では器用にスマホでYouTube(キッズ版)を立ち上げ好きな番組を見る事もできるようになり、気が向いた時にカメラ・アプリを立ち上げ家族を撮影。2歳半にして上手にスマホを使いこなし始めている。
スマホやタブレットを手放せず、少々中毒になっている姿。これを良いとは思えない気もするのだが一方でそこから知識を得て成長に寄与もしている。さあ、果たしてこの状況、良いのか悪いのか。日本到着後のエピソードも交え、次回にこの話題は持ち越したいと思う。新年1発目ということで今回は少しおふざけモードを抑え真面目に議題提起してみた。改めて本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
馬場一哉(BBK)
雑誌編集、ウェブ編集などの経歴を経て2011年来豪。14年1月から「Nichigo Press」編集長に。21年9月、同メディア・新運営会社「Nichigo Press Media Group」代表取締役社長に就任。バスケ、スキー、サーフィン、筋子を愛し、常にネタ探しに奔走する根っからの編集記者(だったが、現在は会社経営に追われている)。趣味ダイエット、特技リバウンド。料理、読書、晩酌好きのじじい気質。二児の父
■関連コラム
BBK 編集長コラム 記事一覧