政府の規制当局が警戒呼びかける
中古車売買のクラシファイド広告で金銭を騙し取るオンライン詐欺の被害が、オーストラリアで広がっている。規制当局「オーストラリア競争消費者委員会」(ACCC)によると、昨年1年間の報告件数は全国で1,920件あった。このうち398人が合計290万豪ドル(約2億7,000万円)を騙し取られたという。
実車見てないのに1万7,000豪ドル請求
被害の一例はこうだ。公共放送ABC(電子版)によると、ブリスベン在住のマークさん(40歳)は昨年10月、オーストラリアの大手自動車売買サイト「カーセールス」(carsales.com.au)で、2018年式の小型車「ヒュンダイi30」が売りに出されているのを見つけた。走行距離は3万キロと低く、価格も1万7,000豪ドルと割安だったため、「売り手」の女性に「車を見てみたい」とメッセージを送信した。
女性は、販売手続きを依頼しているという「ブローカー」(仲介業者)をマークさんに紹介。新型コロナ感染を防ぐため、ブローカーが車をマークさんの自宅に車を運ぶサービスを手配すると伝えた。購入を決める前に、48時間以内の試乗や点検が可能だという話だった。
その後、マークさんはブローカーに連絡を取ったところ、ブローカーのウェブサイトにアカウントを作成し、個人情報の入力を求められた。アカウントが認証されると、車の販売代金1万7,000豪ドルの請求書がEメールで送られてきた。車の販売手続きが完了するまで、代金を預かるという話だった。
そこで、「実車を見てもいないのに変だ」と不審に思ったマークさんは支払いを拒否。ブローカーの会社をネット検索してみると、ウェブサイトに掲載されていた会社の住所はデタラメで、電話は鳴らなかった。自分が署名した契約条件を再確認したところ、代金の先払いと購入を拒否した場合、ペナルティーの支払いに同意したことになっていた。
マークさんが売り主の女性にクレームを入れると、逆に、損害賠償請求の訴訟を起こすと脅された。その時になってようやく、最初から広告と売り主、ブローカーのウェブサイトは偽物で、個人情報と売買代金を盗むために詐欺師が仕組んだ巧妙なワナだったことに気付いた。
マークさんはACCCとカーセールスに被害を報告。すると、ブローカーのウェブサイトはアクセスできなくなり、車の広告も削除された。幸い、1万7,000豪ドルを騙し取られることはなかったが、登録時に個人情報が盗まれたのが気がかりだという。
買い手を装った詐欺にも騙されないで!
ACCCによると、マークさんの例のように売り手を装ったケースが中古車詐欺事例の約7割を占めるが、偽の「買い手」が売り手から金銭を騙し取るケースもあるという。
買い手の詐欺の例としては、次のようなものがある。広告を見た「買い手」が売り手に連絡してきて、買い手はたいてい遠く離れた他州に住んでおり、車の輸送サービスを手配すると伝える。
買い手は、車の輸送費用と保険代を売り手に建て替えるよう求め、後で車の販売代金に上乗せして一括で支払うと約束する。しかし、買い手が輸送費用を払ったとたんに連絡が取れなくなる。最初から車を買うつもりはなく、「輸送費用」を騙し取る詐欺なのだ。
ACCCの広報担当者は「中古車の詐欺広告は、フェイスブックのマーケットプレース、カーセールス、カーガイド、ガムツリーといったサイトに頻繁に掲載されている」と話している。詐欺の手口は洗練され、巧妙にできているので、本物と偽物を見極めるのは難しい。
ACCCは詐欺に騙されないように次の注意点を挙げている。
○「できすぎた話」には飛びつかない
○広告の掲載文をコピペしてネット検索をかけてみる(同様の例がないか調べる)
○信頼できそうな広告でも、本物だと信じ込まない
○代金を余計に払ったり、返金を求めたりする取引には注意する
○小切手が精算されたり、入金が完了したりするまでは、商品を買い手に送ってはいけない