タスマニアにある19の国立公園の中でもひと際異彩を放つのがモールクリーク・カルスト国立公園。州内では珍しい、カルスト地形でできた鍾乳洞群がメインの国立公園です。公園内には総数400以上とも言われる鍾乳洞が点在しており、一般に立ち入ることができる場所は2カ所だけ。今回はそのうちの1カ所、マラクーパ鍾乳洞(Marakoopa Cave)を紹介します。
マラクーパ鍾乳洞はロンセストンから西に約1時間半の北部中央に位置しています。同鍾乳洞ともう1カ所のキング・ソロモンズ鍾乳洞を訪れるには、安全と保護の観点から、国立公園が催行する約1時間のツアーに参加する必要があります。ツアーの人数も20人ほどの上限があるので、特にホリデー・シーズンは予約が必須です。
ビジター・センターで手続き後、いよいよ鍾乳洞へ。出入口は同じですが、鍾乳洞内部にはキャセドラルとアンダー・リバーの2ルートがあり、ツアーの時間によってルートか決まっています。キャセドラルは階段が多く、アンダー・リバーはほぼ平坦といったところ。とは言え、どちらに参加しても数万年から数百万年の時を掛けて作られた神秘的な鍾乳洞はまさに圧巻のひと言です。自然の造形美、照明が当たると輝く方解石たちは、鍾乳洞が現在進行形で成長を続けている証し。ストローのように細く長く成長した鍾乳石の先にゆっくりと水滴がたまり落ちていくさまは時を忘れ眺めてしまいます。また、ガイドの話も鍾乳洞の作られ方からマラクーパの歴史に及び興味深く、あっという間に時間が過ぎます。
鍾乳洞のもう1つの見どころは、入口から10メートルほど先にあるドーム状の空間の天井に広がる土ボタルです。全ての照明を落として見上げれば、満天の星空のように天井が発光。自然の神秘と呼べる景観はタスマニアでもここでしか見ることができません。マラクーパ鍾乳洞は年間を通じ気温10度前後と、暑い夏には打ってつけの観光地。ぜひ足を延ばしてみてください。
このコラムの著者
稲田 正人
タスマニアのツアー・ガイド/コーディネーター。タスマニア大学で動物学・環境学を学んだ後、のんびりゆったりした生活感に魅せられ、そのままタスマニアに在住。現在は現地旅行会社AJPR(Web: www.ajpr.com.au)に勤務する傍ら、多過ぎる趣味に追われる日々を満喫中