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時計の6時が底値?住宅サイクルを念頭において時流を読む重要性/オーストラリア不動産の現状

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長期にわたり豪州不動産販売のアドバイスやサポートを手掛けるGIM Capital Professional Pty Ltdが豪州不動産市場の動向や情報を分かりやすく解説。


 豪州不動産の評価は徐々に高まっていますが、実際に購入したい場合には、どのような点に気を付けたら良いのでしょうか。今回は「時流」について考えてみたいと思います。

現在の時流を過去と照らし合わせて考察する

 コロナ禍前と後で大きく様変わりした一般社会。もちろん不動産業界も例外ではありません。ざっくりとその特徴を挙げると「土地」価格が値上がりし、需要のあるエリアでの戸建住宅が急激に上がり、その影響は地方にも及びました。特に海岸エリアで人気のある都市は、その他の地域よりも著しい値上がりを見せた場所もありました。そのころ、若年層の海外からの流入が一時減ったことで都心部の賃貸市場が一時的に冷え込みました。

 一昨年の国境開放から急激な国内流入者が増え、経済復興と共に「賃貸市場」が切迫。空室率は昨年9月より1%前後と賃貸物件を探すのも大変で、賃貸物件を見学するための週に一度行われる内覧会に長い列ができてしまうなど、住宅不足は顕著となりました。2023年の賃貸の値上げが全豪で週77ドルという統計もあるほどです。

 なぜ、ここまで賃貸不足に悩まされる人びとが存在するかというと、コロナ禍後の法定金利上昇で「買い渋り」状態が始まったことにあります。豪州政府は、コロナ禍の際に経済支援のため法定金利を極端に下げました。その後の経済復興と共に利上げを始めたわけですが、一般人は当時の低い金利を覚えており、報道影響もあり高金利なので「買い渋り」の傾向が増し賃貸の需要を更に緊迫させました。そのため、一部では値下げを意識する物件群もあったほどです。 

 今後に関しては、国際的な部材の値上がり、土地の値上がり、人件費の値上がりという「3つの値上がり」から工事費用の上騰がどうしても避けられないことにより、上昇するという説があります。

 また、その他の予測として、そろそろ金利上昇が収まるもしくは「買い渋り」が加速して、物件価格は下がるという正反対の予測を掲げる報道さえあります。それでは、豪州不動産市場は混迷しているのでしょうか? 時代を俯瞰して考察してみましょう。

住宅サイクルを念頭において今の時流を読む

 「住宅サイクル」とは、オーストラリアの不動産市場のみで使われている言葉ではなく、むしろどの市場にも当てはまるコンセプトになっています。時計を思い浮かべてください。12時を示す際は最も時計の針が上を向いている、つまり市場がホットで値上がりが激しい状況を指します。この時期、人びとは「今買わなくては」と購入を急ぎます。それが2時、3時と右下に向かうにつれて、流行りは少しずつ収まり価格も下降傾向となります。その後4〜6時に向かい時計の針は下方に向かいます。6時は最も低い底値となります。どんどん価格が4〜6時まで下がっていくのです。そして7〜9時に再び回復し、10時からは急上昇でブーム期に突入します。

 このように一定の周期で不動産価格の循環は、経済や人口増加、その他の要素に影響されながら移行していきます。賢い購入者の方々であれば、6時の底値時期に購入し、12時の最も市場が活況時期に売却するという一番良い方法を取るのですが、むしろ群衆はその逆を行ってしまう傾向にあります。

 上記で説明したことは、時勢を読むために大切な要点となります。豪州不動産の場合、日本のようにガクッと市場が冷え価格が落ちるのは、その他の社会様相からむしろ6時の時点で「横ばい」を続けることが多いと、過去を振り返って客観視できると思います。

不動産業界における物件価と賃貸家賃上昇の時差とは

 更に、物件価格が上がった後に一般的に家賃の値上がりが始まります。実際に土地の価値が高まり、価格が上昇するとその分シティー・カウンシル費も上昇するため、その分家賃に跳ね返ってきます。つまり、そこには「時差」があり、物件上昇の後に家賃が上がるという傾向があります。「物件価格が上がったから賃貸住宅に暮らし続けて良かった」と思っていたら、その後に家賃が大幅に値上がり、悲鳴を上げるといった状況に陥るのは仕方がないと言えます。

 現在は、いったんコロナ禍で減った都市の住人が急激に増えている時期と言えますが、まだ集合住宅が本格的な値上がりを記録していない都市もあります。本来、時期・立地・住宅形態(戸建・集合住宅の別)などを選択することが最も考慮するべき点になると言えるのですが、時代を俯瞰し最も良い物件を選ぶためには、冷静にならないとなかなか実現しにくいのではないかと思われます。

現状特有の都市間の時差

 他の「時差」として、各都市のコロナ禍後の経済の立ち直りの時差を挙げることができます。国際空港からの国内流入やロックダウンがなかったエリアで価格が急騰するなど都市間の差がまだ顕著です。

 例えば、日本人も多いゴールドコーストでは富裕層、そしてビザに有利になることから外国人が流入し、物件価格は高騰気味なのに対して、大学が多く人口増加や都市拡大が激しいにも関わらず賃貸市場は過熱、物件価格は横ばい気味のメルボルン。戸建住宅の上昇に対してまだ集合住宅の急激な値上がりには至っていないシドニーなど、市場を俯瞰すると同一ではないことが見て取れます。

 自宅・投資目的であってもこのような特徴を理解して専門家に相談し、賢明な判断をされることをお勧めします。

鶴美枝

鶴美枝

グローバル・インテリジェンス・マネージメント代表。創業2010年以来、豪州各地の優良不動産を厳選し、豪州及び日本在住のホーム・オーナー若しくは投資家の方々の購入をサポートし資産増幅、理想の住まいの確保に日々尽力中。日本と豪州にて法学部大学院卒業。豪州不動産フルライセンス保持

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