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「もうこれ以上は頑張れない」と思ったら─無自覚な賢者/福島先生の人生日々勉強

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 もうこれ以上は頑張れない、と思うことがありますよね。自分の中に厄介なものを抱えていて、何とかして捨てたい、できれば初めからなかったことにしたいと思うほどの重圧。性格を変えようとしたり、過去を忘れようとしたり、周囲から認められようと必死に努力をしますが、うまくいかず、迎える限界。

 しかし、それはきっと朗報です。限界まで苦しんだなら、その苦しみを経験した人間だからこそできることを発見するチャンスが巡ってきたに違いないからです。苦しみを糧にして新しい生き方へと変革するタイミングが来たというお知らせです。

 過去に同じような経験をした人に会ったけれどその人は結局うまくいかなかったなど、自ら行く手を塞いでしまわないようにしましょう。苦しみとは、それぞれ固有のものであって、たとえ同じ経験をしたように見えても、誰1人として同じ条件で苦しんだ人はいません。そもそも生まれ育ってきた環境から違います。つまり、自分の経験してきた苦しみは、他の誰も手にすることのできない、この世でたった1人、自分だけが持つ貴重な価値ある経験なのです。

 もし今、限界を感じ、人生を大きく転換したいと本気で思っているなら、自分自身の心の奥底にある本心が、これまでの苦しい体験を生かすターニング・ポイントを逃すまいと、それは今なのだと、強く訴えかけているのかもしれません。誰かを救い、癒やすために自分の苦しみを生かすこと、そして、それによって自分自身も癒やされるのだということを改めて自覚する時が来たのです。

 自分にしか経験できなかった苦しみの中を生き抜いてきたオリジナルの人生は、必ずどこかで誰かの役に立ちます。ひょっとするともう既に、自分が気付いていないだけで誰かの支えになっているかもしれません。誰もが特殊な才能や望む環境に恵まれているわけではないですが、何も突飛な役割を見つけようとする必要はありません。目指しているのは、自分だからこそ果たせる役割です。心配しなくても見つかります。本当は知っているからです。

 人はおおよそ、矛盾した自分に苦しめられます。誉められたいのに努力が続かず結果が出ない、干渉されたくないのに目立ちたがりである、せっかちなのに頑固で仕事が進まない、完璧主義なのに面倒くさがりで結局仕上がらないなど、こうした矛盾に思い当たる人は皆、相当苦しんできたはずです。苦しみが熟した先には当人しか知らない多くの智慧が渦巻いています。無自覚な賢者なのです。

このコラムの著者

教育専門家 福島 摂子

教育専門家 福島 摂子

教育相談及び、海外帰国子女指導を主に手掛ける。1992年に来豪。社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命とした私塾『福島塾』を開き、シドニーを中心に指導を行う。2005年より拠点を日本へ移し、広く国内外の教育指導を行い、オーストラリア在住者への情報提供やカウンセリング指導も継続中

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