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春、トパーズと金を掘りにQLD•NSW州境へ/トミヲが掘る、宝石大陸オーストラリア 第32回

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スタンソープでは時期が合えば、食べられる宝石、トリュフ探しも体験できる


 今回はトパーズと金を探しに旅に出た時の話。春になって徐々に暖かくなってきたと思っていたら、一気に真夏のような猛暑が来たり、とんでもない強風が吹き荒れたりと、全く予想がつかない天候だった2023年9月の旅の記録だ。

 まず目指すは、QLD州スタンソープ(Stanthorpe)。ワインで有名なこの一帯は鉱物の産地としても知られる。特に西部のスワイパーズ・ガリー(Swipers Gully)は良質のトパーズとクォーツが採れるが、残念ながら18年の山火事以来、立入禁止になっている。石情報を仕入れようとロード・サイドの観光案内所で話を聞くと、スワイパーズ・ガリーへは車でのアクセスは無理だが徒歩なら行けるとの貴重な情報をゲット。これは良いことを聞いた。

小粒のペリドットがギュッと詰まった塊がゴロゴロと落ちている

 しかも、話を聞いた人も石好きで「線路沿いにも面白い石があるよ」との情報をくれたので、今回はアクセスしやすい彼のお勧めの線路沿いを探索してみることにした。グーグルマップで線路にアクセスしやすい場所を見つけ、南のグレン・アプリン(Glen Aplin)の線路周辺を探索。この町の列車は週に1度通るか通らないかという頻度なので、一番怖いのは蛇。暖かくなる時期は蛇が活発に動き回るので、大きめの音をたてながら歩くことで周りに警告を発して石を探す。

 線路には玄武岩が敷き詰められ、所々に黒い花崗岩もある。これは以前、更に南の州境で見つけた物と同じ石でとても硬く美しく磨き上げることができる。敷き詰められた玄武岩の中には、ペリドットという緑色の8月の誕生石が付着しているものもあった。小さなペリドットの塊を拾い擦ってみると、ボロボロと崩れてしまうのだが、予想外の石に出合えると興奮を隠せなくなってしまうのが石マニアの悲しい(?)性だ。

小川の底から砂をすくい出す。天気に恵まれ最高のトパーズ探し日和だ

 次は、小1時間ほど南下したNSW州テンターフィールド(Tenterfield)から、更に南西のトリントン(Torrington)までトパーズ探しに。ここは、以前、ブリスベン宝石細工クラブの遠征で来た場所で、収穫なしだった前回のリベンジとなる。

 山道を走って目的地近くに車を停めてから薮を徒歩で進み、ポイントの小川に到着。さっそく、川底の砂利をふるいにかけて水洗いしながら探すウエット・シービングでトパーズをねらう。誰もいない大自然の中で1人、黙々と石を探す姿は他の人には異様に映るかもしれないかもしれないが、大の大人を興奮させる石探しの魅力は体験した者にしか分からないものだ。

 30分、1時間と少しずつ場所を変えながら探す。見つかるには見つかるが小物ばかりで、なかなかアドレナリン分泌を促進するような大物は顔を出さない。

ふるいで水洗いした砂利をひっくり返すと、氷のような青白いトパーズがびっしり

 徐々に上流に向かって行くと小川が急に細くなり、その真ん中に50kgはあるだろう大きな石が鎮座していた。その石を渾身の力で動かした下に幾つもの子どもの頭くらいのサイズの石が埋まっているのも動かしてから、底に溜まった砂利をすくい上げてふるいにかける。水の中で回しながら上下左右に動かし、洗いながら重いトパーズが中央部に集まるようにふるいを動かす。洗い終わったふるいをひっくり返すと、中央部分の底には、最低でも50粒はあるだろうか、多くの小粒のトパーズが溜まっている。

 少し濡れたトパーズは太陽光を浴び、まるで氷の結晶ようにギラギラと眩い輝きを放っていた。小さくても1回のふるいでこれだけ見つかるのは初めての経験。つい興奮して雄叫びをこだまさせるトレジャー・ハンター。次のふるいからも大量のトパーズを見つけ、もう1回吠える。

「やった! ここは当たりのポイント。カットできるサイズの大物と出合うまで、ただ掘るのみ」と自分に言い聞かせながら掘り進めていると心の声がトパーズに届いたか、青みがかった小指の爪ほどのトパーズがコロリと転げ出た。

何とか研磨できそうなトパーズをゲット!

「よし、このサイズならカットしてもいいサイズが残るぞ」。摘み上げて太陽に透かすと中心に気泡の線が見える。完璧な透明の石ではないが、このポイントで見つけたトパーズでは一番の大物。その後は不発も全体的にはすてきな経験ができたので満面の笑みで次のポイントへ。

 次に向かったのは、テンターフィールドの東にある金の採掘で有名なドレーク(Drake)。週末だったので案内所も兼ねている郵便局はお休み。仕方がないので向かいのパブで情報収集。パブのカウンターでは常連客との話に忙しい店員がいた。彼に話を聞こうとすると、常連客が「どこにあるか分かったら苦労しないよ」とひと言。まぁ、至極当然の答えだ。店員も客の言葉にうなずきながらも、「結構みんな見つけているよ」とフォローを忘れない。

総量272カラットの小粒トパーズ。小さくてもそれなりに見栄えが良い

 彼らにアクセスしやすい川の場所を教えてもらい、車を南に飛ばすこと10分少々。ポイントの小川が見えてきたので、さっそく、パニング(Punning)の準備をする。パニングとは、側面が段々になった黒いプラスチック製の皿状の物に砂を入れ、水洗いをしながら金を探す方法だ。この時、皿の中の水を円を描くように動かすことにより、軽い他の砂は洗い流され、質量の重い金が側面の段々に引っ掛かり、底に溜まっていくという仕組みだ。

ドレイクの金探しのポイント。掘り出した砂が洗いやすいように、干上がった小川で水溜まりを探す
金を見つけやすいように黒のパンに水を張って、回すように動かすことで比重の重い金は中心に溜める。円運動で外側に弾き出された砂を捨てて、残った少量の重い砂の中から金を探す

 川底の石を動かし、パニングの皿の上にふるいを乗せ、そこにすくい上げた川底の砂を入れる。ふるいを川の水で洗うと、下の皿の上に残った細かい砂を洗って金を探す。洗い終わってから、目を凝らして皿の底に溜まった物をチェック。何かキラキラ光るような気もしないでもないが、細か過ぎて金なのかどうか分からない。分からない時は持ち帰って、後でもう1度チェックした方が良いと思っているので、容器に底に溜まった砂を入れる。その後も目を皿にして探しては見たが、ひと目で「これぞ、金」という代物には出合えなかったので、細かい砂を容器に集め入れて、金探し終了。

宝石探しの必須アイテム。砂利のサイズを分けるためのシーブ(左)。金や比重の重い石を探すためのパン(右)。基本、宝石探しはシーブ、金探しはシーブとパンを使う

 ちなみに、家に帰ってから持ち帰った砂をもう1度観察してみたが、やはりナッシング。そんなに簡単ではない。でも、ひょっとしたら金があるかもしれないなという、なんだかモヤモヤした感じをようやく取り除けて、残念ではあるが、少しほっとするような不思議な気分だ。

 今回の石探しは、週末を利用して気軽に訪れた。大自然の中で無心に石を探す週末……。これ以上のぜいたくはあるだろうか。特に、今回のあの量のトパーズ。いつかは見られるだろうと思っていたものの、いざリアルになるとあんなに興奮するとは自分でも予想外だった。何にどこでどう出合えるか、全く検討もつかない角度から我々の興奮を刺激してくれる石探し。これだから止められない。

このコラムの著者

文・写真 田口富雄

在豪25年。豪州各地を掘り歩く、石、旅をこよなく愛するトレジャー・ハンター。そのアクティブな活動の様子は、宝探し、宝石加工好きは必見の以下のSNSで発信中(https://www.youtube.com/@gdaytomio, https://instagram.com/leisure_hunter_tomio, https://www.tiktok.com/@gdaytomio)。ゴールドコースト宝石細工クラブ前理事長。23年全豪石磨き大会3位(エメラルド&プリンセス・カット部門)





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