日本語の会話であっても、在豪期間の長い日本人同士の場合、つい油断して英語に影響された言葉がぽろっと出てきてしまうことが多い。特にとっさの一言にはその傾向があるようだ。
調べてみると、例えば「明日〇〇するの?」といった質問に対してあいまいな返事をしようとして、「メイビー(maybe)」と答えてしまうケースや、「大丈夫だよ」という意味合いで「ノー・プロブレム(no problem)」と答えてしまうケースなどが見られた。このような場合、とっさに言ってしまうだけではなく、意識的に英語で(ただし、日本語のカタカナ英語の発音で)返事をしていることも多いようである。短い一言で返事をする場合は、日本人同士の会話であっても英語を混ぜて会話することに対するハードルが少し下がるのかもしれない。そして「多分」や「大丈夫です」などと日本語ではっきり答えるよりも、少し砕けた言い方や柔らかい言い方をしたい時にもカタカナ英語が適宜使われているようだ。
また、「あそこのレストランおいしかった?」などの質問に「ソーソー(so-so=まぁまぁ)って感じ」と答えるケースもあった。同時に、言葉だけではなく、手のひらを地面と平行にひらひらと動かすしぐさ(英語圏の人びとが“so-so”を使う時のジェスチャー)をする人もいるようだ。ここまでくると、もう英語と英語圏の文化を日本語の文章の中に完全に混ぜ込むことに違和感が少なくなっている状態である。オーストラリアの滞在期間が短い若者だけではなく、移住してからの期間が長い在豪日本人にもその傾向が見られた。
また、在豪期間の長い日本人には、「エニウェイ(anyway)」「べーシカリー(basically)」「アクチュアリー(actually)」といった、会話の転換に使われる言葉を英語にして挟む人なども見られた。
プロフィル
ランス陽子
フォトグラファー/ライター、博士(美術)。現在、グリフィス大学の大学院でオーストラリアの日本人コミュニティーにおける日本語変種を研究中。ゴールドコーストでの調査を手始めに、今後はオーストラリア各地での調査を予定している。在豪日本人が使用している面白い言葉についての情報を募集中。情報やメッセージはFBコメント欄かFBメッセージまで。「オーストラリア弁を探せ!プロジェクト」
(Web:www.facebook.com/JapaneseVariationInAUS)